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「おかしい、ただの病死ではない」 保育施設の死亡事故、なぜ非公表? 母親のフェイスブック投稿で発覚

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保育園で亡くなった心菜ちゃん

保育施設での死亡事故が後を絶たない。内閣府によると、2015年に保育施設から報告された死亡事故は14件。ところが、どの施設でどんな事故があったのか、非公表のままの事案も少なくない。公表されない理由、当事者の苦しみを取材した。(朝日新聞東京社会部記者・仲村和代)

【画像】「あんなに雑な保育を受けているなんて...」死亡事故で亡くなった心菜ちゃんの笑顔

フェイスブック投稿で明るみに


東京都大田区の認可外保育施設「蒲田子供の家」で3月、生後6カ月の女の子が亡くなる事故が起きた。事故が公になるきっかけは7月、保育情報をシェアするフェイスブックのコミュニティに母親が投稿したことだ。

「無認可保育園で6ケ月の娘を亡くしました。投稿しようか迷いましたがもうこんな悲しいことが起きないように投稿しようと決めました」

こんな書き出しで、亡くなった時の状況や、入園時の説明と実際の保育内容が食い違っていたことなどがつづられていた。

「プロだと思って信頼していたのに」

この時点で、事故については全く公になっていなかった。東京都に問い合わせ、事故の概要がわかった。

都によると、事故当時、0~3歳までの5人が預けられており、1人の職員が別室で休憩し、保育資格のない別の職員が実質1人で5人をみていた。職員がミルクを作るために十数分間離れ、戻ったところで女児の異変に気づいて救急搬送したが、病院で死亡が確認された。事故後に立ち入り調査をし、改善勧告をしたという。

その後、両親から話を聞くことができた。長女の心菜ちゃんが亡くなって4カ月。自分を責め、苦しみ続けたという。

「入園する時は、園長は保育士だと説明されました。プロだと思って信頼していたのに」

どこも満員、ようやく見つけた施設


施設に預けたのは、昨年12月、生後3カ月の時。当時は横浜市に住んでいた。母親は「将来のために自分も働いてお金をためたい」と預け先を探し始めたが、地元は待機児童が多く、働いていない場合に認可保育園への入園は難しい。自宅周辺の認可外保育施設も、どこも満員だった。

ようやく見つけたのが、大田区の認可外保育施設。マンション2階の1室を利用し、24時間年中無休、0歳から受け入れていた。30年以上の運営実績があり、園長もベテランに見えたという。

保育料は約6万円。昼のパートではまかなうのが難しく、夜の仕事を始めた。帰りのタクシー代がかさんだため、園の近くに引っ越した。園長からも子育ての助言を受けるなど、信頼関係を築けていると感じていたという。

自分に原因が...苦しむ日々


事故が起きた3月16日も、心菜ちゃんは普段と変わらず元気だった。午後7時ごろから預け、翌日午前0時半ごろ、仕事を終えて迎えに行くと、施設の外に大勢の警察官がいた。「ここの子が病院に運ばれました。このバッグの子です」。見せられたのは、見覚えのあるバッグ。慌てて病院に駆けつけた。

心菜ちゃんは病院で死亡が確認された。

母親はどこに相談していいかもわからず、自分に原因があったのではと苦しむ日々が続いた。園長の説明は二転三転。園長が保育士免許を持っていなかったことや、心菜ちゃんをダウンコートにセーター3枚という厚着のまま寝かせていたことを認めたという。

状況がわかるにつれ、「おかしい。ただの病死ではない」と思うようになり、フェイスブックに投稿した。

「あんなに雑な保育を受けているなんて」


母親は取材に対し、「あんなに雑な保育を受けているなんて、思わなかった。こんな状態を許してきた都もおかしい」と語った。

施設側は取材に対し、「死因がわからないので、今はお話できない」と繰り返した。保育士が不在だったことについては、「募集はしていたが、保育士不足で集まらなかった」という。

都によると、施設は78年に開設。ここ数年の監査では、1人勤務や有資格者がいない時間帯があると指摘されていた。その情報は都のホームページで公開されているが、一般の人が行きつくのは簡単ではないだろう。しかも、A3の紙1枚あたり約30施設、80ほどの項目がびっしり並んだところに×印がついているだけで、読み解くのはハードルが高い。

公表の基準なく「自治体の判断」


では、事故が起きた場合は、どんな仕組みで情報公開されるのだろうか。

認可保育所では、死亡事故や重傷事故が起きた場合、自治体に報告するよう義務づけられている。一方、認可外施設の場合は、報告に法的拘束力はない。内閣府によると、2015年、保育施設で亡くなったと報告されたのは14人。うち、9人は認可外保育施設で起きている。

しかし、朝日新聞のデータベースで検索してみると、どの施設で何があったか、公になっていないケースの方が多い。

厚労省の担当者によると、公表について「基準はなく、自治体の判断による」という。発生時に警察や自治体が発表することもあるが、当事者からの情報提供で初めて公になることは少なくない。

「今は公表できない」一点張り


今年度から、重大事故が起きた場合、自治体が第三者による検証をすることが求められるようになったが、「あくまで再発防止につなげることが目的なので、施設名を公表するかどうかは自治体次第」(厚労省)という。

行政が取材に応じないこともある。4月に茨城県の乳児院で起きた死亡事故については、情報が寄せられたため県に問い合わせたところ、事故後に改善勧告をしているにも関わらず、事故の概要については「今は公表できない」の一点張りだった。

この時は、法人側が取材に応じ、当時の状況や再発防止の取り組みについて説明したが、運営者によっては、他の入園者の保護者にすら伏せられていることもある。

公表されない理由とは?


行政側は公表しない理由について、原因が施設の過失とは限らないことや、公表した場合、経営に影響が出ることをあげる。だが、仮に小学校の中で死亡事故が起きたら、まず事案が公表され、その後に原因究明が始まるだろう。なぜ、保育施設は例外なのか。厚労省の担当者は「小学校は義務教育だが、保育施設は預ける側が選択できるから」という。

過去には、同じ系列の園で死亡事故が繰り返されたり、事故後に名前を変えて経営を続けたりしていたケースもあった。また、施設内の虐待で死亡したのにも関わらず、医師が「乳幼児突然死症候群(SIDS)」と診断していたケースもある。

預ける側からすれば、事故の情報が知らされない可能性があることは、大きな不安だ。私自身も経験があるが、特に初めての子育てでは、保育園に見学に行っても、何を基準に判断すればいいのか、戸惑うことばかり。「質」まで見抜くのは難しいと感じた。

事故の取材をしていると、うつぶせ寝の危険性が認識されていない、長時間目を離しているなど、「防げたはずの事故」ばかりだ。職員の経験が浅く、研修やマニュアルが不十分だったり、安全管理に十分な人が配置されていなかったりするケースも目立つ。

情報が公開されることで、ほかの施設や保護者への啓発になり、再発防止への取り組みを進めることにもつながるのではないか。公表のあり方について、議論が進むことを願う。

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