私はイクメンにはなりたくない

フリーランスで働く私が、育児家事をより多く担うのは当たり前のことだ。

私は1歳の長男の育児に妻よりも数倍携わっている。夜泣き対応、寝かせ付け、お風呂、保育園の送迎、保育園からの呼び出し対応、病気の際の病院への送迎、病気で保育園に行けない日の育児、などなど。

家事も掃除と洗濯は大体私がやり、朝ご飯は各自で適当に用意し、妻は夕食作りと離乳食作りを主に担当している。先週は午前3時に夜泣きで起こされ、何しても寝ないから、夜のドライブに連れて行き、午前4時にやっと寝てくれた。

世間から見たら「イクメン」になるのかもしれないが、「イクメン」と言われる度、何故か褒められている感じがしなかった。当初、私が何に対しても否定的な人間だから、周りからの称賛を素直に受け止めることができないだけだと思っていたが、この記事を読んで、何となく理由が分かった気がした。

記事では、子どもの夜泣きに付き合った男性が、「こんなことする男性そんなにいないよね。感謝してほしい」と妻に言い、感謝されるどころか、言い合いになった話が紹介されていた。

「他の男性と比べたら」とか「他の女性と比べたら」という議論を我が家に持ち込んだら、私たちの家族は崩壊する。そして、「イクメン」という言葉が、他の男性との比較で使われているように思えてしまうため、私は、それを素直に受け取ることができなかったのだということがわかった。

私の妻は1歳児を抱える他の女性と比べたら明らかに育児に携わっていない。長男が寝る午後8時ごろから、妻が起きる午前7時半まで、好きなだけ寝ることができる1歳児の母親は日本にあまりいないだろう。正直、心の中では「一度くらい保育園から突然呼び出されて、子どもを病院へ連れていくのがどんなものなのか妻にも経験してもらいたい」と思うことはなくもない。

でも、私は妻に「他の女性と比べたら君はラッキーだね」なんて絶対言わない。以前のブログで書いたが、妻は、私が前の妻を長男出産後に亡くし、長男と二人きりで生活できるような精神状態でない私を助けに来てくれた。妻が2‐3時間、長男の世話をしてくれるおかげで、私は昼寝ができたり、運動ができるようになった。私はそれだけで妻に深く感謝している。

そして、今、妻は妊娠しており、大きなお腹を抱えながら看護学校に通っている。それだけでもかなりしんどいはずで、妊娠中、腹痛や出血で何度か病院にお世話になり、絶対に無理はさせられない。それでも、妻はテストがあるときは夜遅くまで勉強し、実習があるときは朝7時に出て、午後6時に帰り、それから宿題をこなす。

この様な状況で、フリーランスで働く私が、育児家事をより多く担うのは当たり前のことだ。

男性が女性より育児家事をやっていない今の日本の現状はよくない。でも、性別ごとの育児家事分担率ばかりにとらわれすぎて、より大事なものを見失ってはいけないとも思う。私は、女性が家事育児をすべてやっているが、円満な関係を築いている夫婦と、家事育児の分担は対等だが毎日喧嘩をする夫婦だったら、前者の方がより健全な生活をしていると思う。

「イクメン」になることは、あくまで、良い家族関係を築くという目的を達成する手段の一つにすぎないはずなのに、今の日本は「イクメン」になること自体が目的化してしまっているように感じられる。私は「イクメン」と呼ばれたいがために家事育児をやっているわけではないし、そもそも、夫婦関係が円満なら、自分の家事育児貢献度を相手に自慢する必要なんてないのではないか。

と、こんなことを書いてたら、長男の夜泣きが始まった涙。