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広林依子 Headshot

ステージ4がんの乳がん患者、憧れのNYに行く

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デザイナーの広林依子と申します。私は現在29歳の、ごく普通の女性で、独身です。友達とカフェでワイワイ話したり、おしゃれを楽しんだり、ときには海外旅行に出かけたりしている普通の生活を送っています。他の人と違うのは、3年前の26歳のときに乳がんを宣告され、そのときすでに骨に転移しており、それからステージ4のがん患者人生を送っていることです。

このブログでは、デザイナーの私が考えた、【ステージ4のがん患者のライフデザイン】の1例を紹介していきます。今回はがん患者が海外旅行をして見たこと、感じたことを書いてみたいと思います。

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憧れのニューヨークに行く


デザインにおいても現代アートの世界でも、NYは常に先進的な作品が発表されている非常に活気のある街です。ずっと行きたかったのですが、がんになる前は仕事で忙しく、がんになった後は治療で機会がなく......。でも、ついに体調が回復し、憧れのNYへ友人と旅をすることが出来ました。

実は、ステージ4のがん患者さんでも、海外旅行を楽しんでいる方は沢山いらっしゃいます。医療用麻薬を常用している方は、海外旅行の事前に地方厚生局長の許可を受けることで、該当の医療用麻薬を携帯して海外旅行をすることができます。(参考URL:
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/2012iryo_tekisei_guide_073.pdf

アートやデザインが好きな人にとっては、見どころがいっぱいの街


ジョン・F・ケネディ空港に着くと、早速見どころポイントが目に入りました。

それは空港内に有る「TWAターミナル」という建築科エーロ・サーリネンが設計した建物。TWAターミナルを見ると「NY来た!」という実感がふつふつと湧いてきて、胸が踊りました。さあ、旅の始まりです。

NYの街並みはいちいちカッコ良くて絵になりますし、グッゲンハイム美術館やニューヨーク近代美術館(MoMA)や日本人建築家SANAAが設計したニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アートなど有名アートスポットが沢山ありますが、私は観光名所でなく地に足の着いた最新の現代アートが見てみたいと思い、マンハッタンのチェルシーにあるアートギャラリーを訪ねました。

そこは、真っ白でシンプルでとても大きな空間。

そして、作品が一つだけ、ドーンと飾られていました。

私は、その作品と展示方法に非常に衝撃を受けました。

こんなにカッコいいなんて!

NYのアートやデザインは、シンプル&ダイナミックが特徴だと感じていたのですが、このアートギャラリーで出会った作品は、日本では体感できないスケールの大きさで、非常に爽快で、これは実際に生で見るからこそわかる感覚だと思いました。

NYの街を歩きながら、ギャラリーを沢山めぐり様々なカッコいい作品に出会いました。NYでは多くのギャラリーが無料で、フラッと手軽に入ることができます。心が踊り「生きてNYに来れてよかったなあ」と思いました。

2017-03-24-1490329197-6385803-3wa.jpgワールドトレードセンター駅

私は建築も好きなので、NYの建築めぐりもとても面白かったです。2016年に新しく出来たワールドトレードセンター駅は、スペイン出身の建築家サンティアゴ・カラトラバの設計。私が訪れた2015年は建設中で中には入れませんでしたが、まるで鳥の骨格のような伸びやかでダイナミックなデザインで、日本では見られない強烈なダイナミックさに驚きを隠せませんでした。

他にも、フランク・ゲーリー(神戸市にある『フィッシュダンス』の設計者)やヘルツォーク・ド・ドムーロン(東京・青山にある『プラダ』や『MIU MIU』の設計者)が設計したマンハッタンの超高級マンションなども見て歩き、3億円以上の物件の贅沢さを垣間見ることもできました。

カッコいいNYの女性たちから学んだこと


NYでは、主に歩いて散策し地下鉄を使って移動していました。多国籍なこの街を歩いていると様々な人種の人たちを沢山見かけます。私は、そのなかでも特に"街を歩く女性たち"に注目していました。

皆、とてもパワフルで、独自のファッションで、自分らしいメイクをしていました。日本のように、流行を意識した同じようなメイクではなく、我が道を行く感じ。その様はとてもカッコよくて、「私も自分の道を行きたい、そんな女性を目指したい」と強く感じました。

いろんなスタイルで我が道を行く人がNYには沢山いて、とても楽しそうに自分なりの生活を送っている様を近くで見て、大きな刺激となりました。

健康な日本人も、一歩海外に出ればマイノリティ


NYは、あらゆる人種がいて、様々なマイノリティが存在する街です。だけど、みんな一人ひとりが、凛としていて、すごくカッコよかった。

がんは、2人に1人がなる病気ですが、がん患者は日本の社会の中では(特に若い世代は)マイノリティです。しかし、例え健康な日本人であったとしても、一歩海外に出れば、黄色人種という枠にはめられ、差別などの対象になる可能性もあります。NYでは実際に若いアジア人女性のホームレスにも出会いました。誰もがマイノリティになる可能性があるのです。

マイノリティであるがん患者という存在だけに贈られる【キャンサーギフト】


日本人は、時にマイノリティを見ないふりして排除してしまう一面もありますが、逆に考えると「マイノリティとは、選ばれた人だけが経験できる存在であり、それ自体が価値を持っているのかもしれない」と、NYの人たちを見て感じるようになりました。

がんになったことは、恥ずべき経験ではありません。がんという病気は、誰にでも起こり得るものです。そして、がんを経験した人にしか贈られない【キャンサーギフト】というものがあります。なってしまったこそ得られる贈り物があるのです。

私にとってのキャンサーギフトは沢山ありますが、あえて言うなら、このブログを書くことが出来たことでしょう。このブログは、自分自身の人生を通じてライフデザインを考えるきっかけになりました。

がん患者が旅をすること。それはライフデザインを見直す、良い機会になるかもしれません。入院中の方や治療中の方も、Instagramで#NYや#ニューヨーク などのタグを見てみれば、すぐに今のNYを旅することができます。

そして#breastcancer(乳がん)なども見てみてください。世界中の乳がん患者さんの様子を写真で見ることができます。患者さんは決して一人で戦っているわけではありません。世界中の乳がん女性が、がんと向き合っています。そんな世界中の強くて凛とした女性たちの姿をリアルに見て、治療の励みになれば良いと思います。