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2013年07月03日 16時12分 JST | 更新 2013年07月04日 23時38分 JST

「縦割り行政をどう克服しますか?」―森雅子少子化対策担当大臣に聞く、少子化危機を突破する政策【後編】【争点:少子化】

Eri Goto

 

 日本の政府が少子化対策に取り組み始めて、もう20年に及ぼうとしているが、合計特殊出生率は思うような回復をみない。そこで、安倍内閣は6月14日、4年ぶりとなる「骨太の方針」(正式名称:経済財政運営と改革の基本方針)を閣議決定、女性の活躍促進や少子化危機突破に向けた方針を盛り込んだ。ハフィントン・ポストでは、これらの対策をまとめてきた森雅子少子化対策担当大臣に、ユーザーの方から募った質問もまじえ取材。前編では少子化対策の全貌について、中編では関心度の高い「3年育休」や「待機児童解消」などについて聞いてきた。後編では、関係省庁の縦割り行政をどう克服するのか。また、森大臣自身、働く女性として育児と子育てをどのように両立してきたかをたずねる。

■関係省庁の横串で取り組んだ幼児教育無償化

――これまで少子化対策についての詳細をうかがってきましたが、関係省庁は複数にわたる場合もあります。縦割り行政の枠を超えて、政策を実現へ導くことは可能なのでしょうか?

森大臣:例えばですけれど、3歳から5歳までの第2子が半額、第3子は無料と、幼児教育無償化が大幅に適用拡大され、来年度から実施されます。これについては以前から旗が振られていましたが、関係省庁が内閣府、厚労省、文科省と3つもあってなかなか進まなかった。それぞれの役所はやはり専門的ですから、それぞれの考え方があります。しかし、女性の活躍や少子化対策にとって、とても意義があると安倍総理がおっしゃって、私が旗を振ったことにより、厚労省と文科省が前向きに動きました。

 関係省庁の大臣3人が集まれるのは早朝しかなかったのですが、毎週朝7時に私の大臣室で朝食を食べながら話し合いました。幼児教育の無償化をどういう形でやるか、財源をどうやって確保するか。厚労省と文科省が考えるプランはまったく違う。私のプランも違う。それでも、この会議を重ねて、少子化対策担当大臣の多子世帯支援の考えでいこうとまとまりました。本当に小さな一歩なのですが、踏み出せたのは、縦割りの省庁に横串を通せたということです。少子化危機を突破するためには、この幼児教育無償化のように、ひとつひとつ取り組む必要があると思っています。

■世の中を呪いながら育児と仕事を両立

――今回、ユーザーの方からこんな質問がありました。

【22歳女性からの質問】

 今年、大学を卒業し働き始めました。いずれは結婚して子供を持ちたいと考えています。これからは特に、旦那さんに頼ることなく、自分でもお金を稼いで行かなければ、生活ができないと思っています。そして実際に自分が働き始めて、少子化と日本人の働き方は密接に関係していると感じています。

20代は働くことに懸命なために、帰宅するのも遅く、その生活をなかなか変えられません。そんな中で、子供を産み、育てていくのには、不安しかありません。そう考えると、20代で子供がほしいと思えず、余裕を持ててからと考え始め、そう時が経つにつれて、子供を持つことが難しい年齢になっていくのではないかと思っています。

子供を増やすには、しいてはヨーロッパのように週何時間以内と労働時間を制約するといった方法や、一部の日本企業で取り入られてますが、子育てなどの状況に応じで、夕方になる前に帰宅できる仕組みも有益なのではないかなと考えています。森大臣は、少子化対策としての、労働環境改善の必要性はあると考えておられますか?

――この質問は、実際にこれから子供を産み、育てる世代の方からの切実な声だと思います。大臣ご自身は、弁護士として働きながら結婚、2人目のお子さんを出産した後、一時は専業主婦となられています。弁護士復帰後に、金融庁に入られて政治家となった現在まで、働きながら子育てをされてきました。仕事と育児、実際にどのようにバランスを取ってきたのでしょうか?

森大臣:今も昔も、本当に苦労しながら子育てをしていて、楽だと思ったことは1回もないです(笑)。なんでこんなに子供を育てながら、仕事をすることが大変なんだろうと、いつも世の中を呪っていました。でも、よく考えるとその呪いが今、少子化対策担当大臣である自分に来てるなと思っています(笑)。私は子供の頃、父が保証人だったために多額の借金を背負い、学費もなくて、高校や大学は奨学金とアルバイトで苦学をしました。大学を出て司法試験に受かってやっとなれた弁護士でしたが、第2子ができた時には仕事を辞めざるをえませんでした。

 当時、区立保育園か託児所の二者択一しかありませんでした。区立保育園も延長保育はなく、午後5時前には迎えにきてくださいといわれました。4時半に法律事務所から帰るわけにいかないので辞めました。丁度、夫のアメリカ留学が決まったので、家族で渡米して専業主婦として2年間過ごしました。

 帰国後にやっと弁護士に復帰して、それから今度は金融庁に入ったのですが、私の子供も待機児童だったんですよ(笑)。認可保育園を増やしてほしいというお母さんたちにお会いしましたが、そのお気持ちは本当によくわかります。私の子供も、やっと入れた保育園は自宅から遠くて、自転車に2人の子供を乗せて、朝7時半に下の子を保育園へ連れて行き、保育園から金融庁を通り過ぎて、今度は反対側にある小学校に上の子供を送ります。また来た道を戻って金融庁に着いた時には汗びっしょりで、もう1日の仕事を終わったという感じでした。ですから今、自分の経験をひとつひとつふまえて、その改善のために取り組んでいます。

■女性はがんばらなくていい

――それがもう10年以上前のことですが、現在もあまり働く母親の環境は変わっていない気がします。22歳女性の方からの質問にあったように、特にこれからの子供を産み育てる世代のワークライフバランスはどのようにしたらよいと思われますか?

森大臣:とにかく女性の活躍と少子化対策は、女性はこれ以上、何もがんばらなくていいと思います。男性が変わる、そのための働き方や制度が大事です。たとえば、消費者庁では育児休業を取ると人事評価で評価され、昇進につながるように、人事制度を私が変えました。男性が気にするのはキャリアダウンですから、男性も育児休業を取りやすいようにしました。「育ボス」といって、部下に育児休業を取らせた上司も評価されるようにしました。

 私は、生まれたばかりの長女を連れて、アメリカのニューヨーク大学に留学したのですが、大学の中庭に保育園があって預けることができました。お昼になったら授乳をしに行ったり、子供がお昼寝したら教室に連れてきたりしていい。育児休業中に大学院に通うことができるので、キャリアアップできるのです。

 当時ニューヨークやワシントンDCでは母親の9割が働いていましたが、私の子どもの学校では保護者会や遠足、授業参加は平日でした。でも、お父さんもお母さんも仕事を休んで参加していました。社長も政治家も弁護士も、どのような職業の人でもみんな来ます。「どうして働きながらそんなことが可能なのか」と聞いたら、「子供の学校の行事に来なかったら、自分のキャリアに傷がつく。あいつは子育ても満足にできないと言われてしまう」という返事でした。この国でも、そういった意識になるよう、意識変革をしたいと思っています。

(おわり)

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