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拉致問題は「歴史的な視点で解決を」 再調査合意から1年、蓮池透さんに聞く

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膠着状態が続く北朝鮮の拉致問題について、「死亡」や「未入国」とした被害者の再調査に北朝鮮が合意(ストックホルム合意)してから1年が過ぎた。菅義偉官房長官は、北朝鮮の調査委員会が発足した7月を報告期限と考えていることを示したが、1970年代後半に発生した拉致問題は、2002年の日朝首脳会談での金正日総書記の謝罪を経て、すでに40年近くが過ぎようとしている。

拉致被害者の蓮池薫さんの兄、蓮池透さんは、1997年の発足当時から拉致被害者家族連絡会(家族会)の事務局長を務めてきたが、途中から北朝鮮との対話を提唱したため、経済制裁を主張する家族会の一部メンバーと対立して2005年に事務局長を辞任。2010年には家族会を除名された。

拉致問題に「歴史的な視点での解決」が必要だと訴える蓮池さんに、再調査合意からの1年と、拉致被害者帰国からの13年を振り返り、解決に足りないこと、必要なことを聞いた。

■「拉致問題」のゴールは何か

kim jong il koizumi 2002

――再調査の合意から1年。拉致問題はまだ、進展がありません。

思い出して見ると、ストックホルムの協議直後、外務省は何も言わなかった。多くのマスコミが「不調に終わった」と書きましたが、2~3日過ぎたら安倍首相が囲み取材で「合意した」と発表しました。あれで多くの拉致被害者家族や国民は「今度こそ何とかなる」と期待を持った。首相官邸側があおったわけですよね。そして結局また何もない。

2008年の福田政権でも再調査は合意していますよね。あのとき思ったのは、同じことをするのになぜ6年もかかったのか、ということです。

思うに、「ストックホルム合意」は合意じゃないんですよね。日本側は拉致が最優先と言っているけど、北朝鮮側は拉致問題は非常に優先順位が低い。拉致被害者から、特定失踪者、遺骨の問題、日本人妻、残留邦人など、非常に包括的な内容になっている。どこまで行ったらゴールなのかがわからない合意で、絶対うまくいくわけないと思っていました。案の定です。

当初、第1回の報告は「夏の終わりから秋の初め」と言っていましたよね。それが何も出てこず、いつの間にか菅義偉官房長官が「1年後」が期限ということにしてしまった。平気で「1年」と言ってしまう感覚が理解できないんです。12年たっているんだから、もう1年ぐらいどうってことないだろうという感覚なら、それは許せないですよ。

この1年、外務省や警察庁が、初めて拉致問題対策本部を交えて訪朝団を派遣して「最優先課題だ」と北朝鮮側に伝えただけ。そのあと総選挙、年が明けたらISの人質事件、そして安保法制。「あらゆる手段を尽くす」と安倍首相は言っているけど、本当に手段を尽くしてるのか。北朝鮮側が調査委員会を立ち上げたら、日本独自の制裁を一部解除した。徐々に解除したら何か出してくるだろうという、甘い見通しでやっていた。弟もあきれていました。「何の戦略もないな」と。

まず「最優先課題」というなら、あんな包括的な内容で合意せず、まず拉致問題についてゴールとは何かきちんと決めた上で、拉致問題をまずやるべきだった。ほかのことはやらなくていいというわけではない。北朝鮮側にとって拉致は優先度が低いから、このままでは他の問題を小出しにして、拉致問題は後回しにされて、どこまで行っても終わらないということになります。

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北朝鮮が拉致被害者と、拉致の疑いがある行方不明者の「包括的全面調査」実施を日朝協議で約束したと明らかにする安倍晋三首相(中央)=29日午後、東京・首相官邸 撮影日:2014年05月29日


――安倍首相は「一人残らず取り返す」と言い続けています。

家族は、感情的には、みんなそう思っています。問題は世論が「北朝鮮が今度『死んでる』などと言ったら許さない」という風潮になっていることです。北朝鮮側にとってみれば、生存者がいることを発表すれば「ほら見たことか、もっといるだろう、出せ」と言われる。特定失踪者も880人いる。北朝鮮も国の存亡に関わる問題だから、簡単には出してこない。それなりの決断をさせるためには、日本側も真剣に考えないといけないのに、それがない。

まず拉致問題の「解決」とは何か。政府認定の拉致被害者が17人いて、5人帰って来て12人。この人たちが全員帰ってくれば解決なのか、12人の安否が確認されれば解決なのか。しっかり定義した上で、家族や国民に説明して、かつその内容を北朝鮮側と合意しなければ、うまくいかない。それは総理大臣の決断しかない。

――総連(在日本朝鮮人総連合会)議長の次男が逮捕され、北朝鮮が非難するなど、日朝関係は行き詰まっているようにも見えます。

でも、クラッシュまで行っていないでしょう? 北朝鮮側は相当、安倍政権に期待していると思うんです。「安倍さんだったら、家族や世論を黙らせることができる」と踏んでいる。非常にネガティブな情報が出てきたときも、安倍さんなら納得させられるという考えが根底にあるんじゃないか。だったら逆にそれを利用して、日本側が「どんな答えでも、ちゃんと根拠や証拠があり、きちんと説明があれば、受け入れる」という懐の深さを彼らに見せないと、なかなか真実が出てこない。そこをよく自覚してほしいんですよね。

――被害者家族らと一緒に「これ以上、死亡者が出たら許さないぞ」という強硬な風潮を先導してきたのも、安倍首相です。

そうですよ。被害者は感情的になって当たり前。でも、政治家が一緒に感情的になってはだめ。仮に家族の意向や世論に反することであっても、毅然とやることが必要だと思う。もっと理性的にやらないと、動かないんじゃないかという気がするんですよね。安保法制では世の中の言うことに耳を貸さないんだから、拉致問題でもそういうやり方をなぜ踏襲しないのか。

別に「あきらめろ」と言っているわけではない。こう言うと非常に誤解を受けやすくて、「おまえのところは家族が全員帰って来たからそう言うんだろう」と言われる。本当にそうなら私、何も言いませんよ。「うちはよかったな」と黙ってしまえば終わり。でも、他の人たちの問題が気になるし、そのためには北朝鮮から情報を得ないといけない。どうしたらいいか、自分なりにいろいろ考えた上での結論だということはわかってほしい。このまま「全員返せ」「全員返せ」と叫ぶだけじゃ動きませんよ。

――最近は蓮池薫さんも講演などで、かなり口調が厳しくなっている、いらだっているように見受けられます。

そりゃ、いらだちますよ。帰って来た人間は「自分たちだけが帰って来た」という思いがある。常に、まだ帰って来ていない人のことが頭にあるから、それが解消されない限り、本当の意味の自由はないと思います。肉体的には解放されても、精神的にはまだ解放されていないんですよ。喜んでいれば「他の人が北朝鮮に残っているのに」と言われ、ふさぎ込んでいれば「うれしくないのか」と言われる。理不尽な状況に置かれているわけですよね。彼らの精神的に複雑な状況を打破するためにも、早くほかの人たちの問題を解決しないといけない。

■なぜ、こんなにかかってしまったのか

kim jong il koizumi 2002
2002年9月17日、北朝鮮の金正日総書記と握手する小泉純一郎首相(当時)。金総書記は初めて北朝鮮による拉致を認め謝罪、両首脳は「日朝平壌宣言」に署名した。

13年という月日は、私が弟と会えなかった24年の、半分以上です。このまま24年たってしまうのかもしれないと恐れています。裁判でいずれ判決が出るという問題じゃない。いつになるんだという疑心暗鬼しかないんですよ。時間がかかりすぎている。

――改めて、なぜ、こんなに時間がかかってしまっているのでしょうか。どこで間違ったのか、と考えることはありますか。

きっかけは2002年の日朝平壌宣言ですよね。小泉首相の訪朝で「5人生存、8人死亡」という北朝鮮側の発表をうのみにした。「どうして死んだんだ、証拠を出せ」と、あの場で突っ込むべきだった。本当に死んだなら、犯人の処罰や損害賠償まで話を持って行かないと家族は納得しない。紙一枚で「死んだ。だから葬式を出せ」と、現代では通用しない方法をあえて取ろうとした。それがつまづきの原因であり、元凶だった。北朝鮮が大変な人権侵害をしたのは、まぎれもない事実だけど、日本政府も被害者の人権を軽視していたのではないか。そもそも拉致被害者を24年以上放置しておいて、国交正常化のためには「死んでもいいや」という程度の認識だったのではないかと思います。

生存と言われた5人にしても「すぐに連れて帰る」ぐらいのことは言ってほしかった。なぜ「一時帰国」だったのか。5人の人権を完全に軽視していますよね。紙一重のところで免れたけど、あのとき、弟たちが北朝鮮に戻ってしまっていたら、我々は今ごろ、弟一家が住む平壌に通っていたかもしれない。

――外務省はそれで何とかなると思ったんでしょうか。

メディアもある意味、裏を取らずに「死亡」と報道して、既成事実化に加担したでしょう。文句を言わずに平壌宣言にサインしたから、向こうは「言質取ったぞ」ということになりますよね。だから今でも日本政府が言っている「平壌宣言にのっとって国交正常化を目指す。拉致被害者の全員帰国を実現する」というのは矛盾しているんです。平壌宣言にのっとったとたんに、8人死亡が既成事実として成立してしまう。一方で北朝鮮側は解決済みだという。

その結果、死んでいる、生きているという水掛け論のようになり、向こうから出てきた証拠なるものがいい加減だったので「おかしい」という話になった。それだけでなく「おかしいから生きているんだ。返せ」ということになってしまった。それは主に家族会、「救う会」の主張ですが、論理に飛躍があると思うんです。「おかしいから追及してもっと正確なものを出させる」という方法もあったと思うんだけど、日本は「北朝鮮はうそつきだ」、北朝鮮も「日本も約束を守らない」と一方的な主張をぶつけ合うだけで、何も進まなかったというのが実情じゃないですか?

kim jong il koizumi 2002
外務省の前に座り込む北朝鮮拉致被害者の家族ら(東京・霞が関の同省前で) 撮影日:2000年03月06日


――その後、2006年に第1次安倍政権が経済制裁に踏み切ります。

「けしからん」と経済制裁を始めたけど、それ以上のことができていない。経済制裁というのは、きわめて武力行使に近い方策だから、やるからには相当に慎重に、かつ戦略的にやらなければいけないと私は思っていたのに、いとも簡単にやってしまった。一度振り上げたこぶしはなかなか下ろせず、私がずっと言っていた、対話や交渉という道がなかなか開けなかった。総連に対する圧力や、朝鮮学校への無償化除外など、私に言わせれば八つ当たりで、北朝鮮の気分を害するだけです。

以前、私は「コメだけ出して何も進まない」と北朝鮮への人道支援を批判していたけど、今考えてみると、コメ支援を通じて拉致問題の交渉のテーブルに着かせるという考え方は、説明不足ながら、非常に一本筋が通っていたという気はします。今はまったく逆の方向へ、制裁一本で来てしまった。

結局、日本側は本気でやろうという気がなかったと思うんですね。2009年の民主党政権も、北朝鮮政策についても過去の政権と180度軸足をずらすことだってできたのに、拉致問題については旧態依然だった。「パイプがない」なんて言っていたけど、作ればいいわけだし。

とかく拉致問題は政治利用されがちなんですよ。安倍さんだって拉致問題で北朝鮮の脅威をあおって、第1次政権で首相になったようなものだし、世間は家族への同情と北朝鮮への憎悪でものすごく盛り上がったわけです。そこに私も加担したと言われれば反論できないけれど。

――拉致被害者を救出する以外の思惑が入り込んでしまったことが、「拉致被害者を救出する」というスローガンに誰もが諸手を挙げて賛同できない一つの理由ではないかと。

「被害者を帰せ」と拳をあげているのが、いつの間にか「北朝鮮を倒せ」と同一視されている。「救う会」などは完全に、拉致問題を利用して北朝鮮を打倒しようという論理です。北朝鮮が倒れれば、拉致問題はどうなってもいい。逆に言うと、北朝鮮があるうちは、拉致問題がなくなっては困るんです。ずっと日本は戦後、加害国と言われ続けてきた中で、拉致問題は日本が被害国です。右派の政治家は、これを終わらせたくない、いつまでも被害国という言い訳みたいなカードを温存していたいのかもしれない。そもそも、安倍さんの思想、政治信条を考えた場合、安保法制で集団的自衛権を推し進める安倍さんにとっては、北朝鮮の脅威をあおった方がいいわけですよ。

マスコミも、家族会を聖域化して、アンタッチャブルにしてしまった。私が家族会の事務局長をしていたとき、ある記者が「報道には多様性が必要だ」と私を批判した。私が怒って「多様性なんかいらない。助けるという意味では一つだ」と言ったら「蓮池さんは北朝鮮の人みたいですね」と言い返された。今は立場が逆転して、私が「もっと多様性のある報道をしてください」と言っても、できない。「死亡の可能性」とも「仮に死んでいたらちゃんと対処しろ」とも書けない。生きていることを前提にしないと記事も書けない。右翼にはたたかれるし、田原総一朗さんのように損害賠償まで払わなければいけなくなる。だからだんだんネタがなくなる。萎縮してますよね。どこか安倍政権対マスコミの構図に似ている。

――2004年に横田めぐみさんの遺骨が別人と鑑定された事件は、拉致問題が大きな怪物になる一つの転機だったと思います。

世論の怒りも増幅しましたね。日本側は鑑定できないことを承知で持ち帰った。外務省にすれば、めぐみさんのもの「かもしれない」ということで世論が沈静化するというもくろみがあったと思う。ところが、科警研では鑑定不能だったものが、帝京大で「別人」という結果が出た。鬼の首を取ったように官房長官が発表し、その後、科学誌「ネイチャー」が疑問点を指摘しても黙りこくった。

「高温で焼いた。鑑定できないよ」と言われて、「そんなのはだめだ」と言って蹴飛ばすぐらいのことがあれば、結果は違っていたかもしれないが、そういう気概がないですからね。外務省はとにかく国交正常化したいという気持ちが先だって、家族会や救う会から突き上げをくらい、北朝鮮との板挟みになっている。警察は何もできないし、拉致問題対策本部には情報が共有されない。同じ政府内でこんなことをやっているようではだめだ。

■13年という時間の経過が生み出すもの

kim jong il koizumi 2002

北朝鮮から24年ぶりに帰国し、政府チャーター機のタラップを降りる奥土祐木子さん(左)と蓮池薫さん(午後2時33分、東京・大田区の羽田空港) 撮影日:2002年10月15日


政府は13年という時間の変化をよく考えないといけないと思うんです。被害者も13年分、高齢になった。万万が一、その間に亡くなった可能性だって否定できない。みんな、向こうで家族を構成して、孫がいる年になった。被害者だけを日本に連れて帰ってくることが、簡単にできるのか。厳しいこともあると思うんですよ。

――2002年に蓮池さんご一家が経験されたことですね。

弟の場合は日本人同士で結婚して、子供たちも日本人だから日本に帰ってきて当然という論理が成り立ったわけですが、ぎりぎりでした。地村さんの長女もそうだけど、上の子が社会に出る寸前だった。社会のシステムに組み込まれて結婚や婚約でもしていたら、連れて帰ることはなかなか難しかった。あれから十数年。生きている拉致被害者には、向こうの人と婚姻関係もできている可能性があります。

――たとえば横田めぐみさんは、北朝鮮の男性と結婚して、孫もいます。

たとえば孫がいて、孫も北朝鮮の人間と結婚していれば、全員そろって日本に帰国なんて不可能ですよ。当面は本人だけ日本に来て、会いたいときに北朝鮮に行ける、という国家の関係でもない。国交のない北朝鮮に子供たちをおいて、自分たちだけ日本で暮らせるかと言われれば、難しいと思うんです。

あまりに情緒的な「被害者を肉親の胸に抱きしめさせてあげる」といった言葉を否定する人はいない。もう少し理性的に考えて、整理してほしいんですよね。めぐみさんで50歳、他の人はそれ以上です。弟たちはかろうじて40代で帰って来たけど、支援法という中途半端な支援で「早く自立しなさい」と言う冷たい対応をされた。世間はすごい好待遇を受けていると思っているけど、「余生は面倒見る」ぐらいのことを日本政府が言わないと、帰って来ないでしょう。

――日本人妻の脱北者に何人かお会いしましたが、年老いて身よりもなく、北朝鮮に帰ってしまった人もいました。

仮に新たな拉致被害者が帰ってきても、今の日本の受け入れ体制ではそうなりかねないですよ。拉致被害者に関して言えば、今の話題になっている言葉で言えば、完全に違憲状態ですよ。基本的人権という観点で、違憲状態が40年以上続いている。

■拉致問題の「歴史的解決を」

kim jong il koizumi 2002
北朝鮮からの帰国10年を前に記者会見する拉致被害者の蓮池薫さん(左)、祐木子さん夫妻=13日午後、新潟県柏崎市役所 撮影日:2012年10月13日

「家族・親子が一緒に暮らす」というのは、通常の生活形態である。しかし、世の中には家族・親子がそれぞれ生き別れになって生死も分からず暮らす不幸な人々がたくさんいる。身近な例を挙げれば、在日韓国・朝鮮人の人、この人たちは個々の事情により自ら日本に渡って来た人もいると思うが、過去の戦争による犠牲者も少なからずいる。また朝鮮半島においては、朝鮮戦争時、生き別れになり今日までお互いの生死すら分からないまま暮らしている離散家族と呼ばれる不幸な人々がたくさんいる。これらの人々にとって「家族の絆(きずな)」というものは並々ならぬ想いがある。

そもそも北朝鮮による拉致事件はなぜ起きたかを考えると、そのひとつに戦後国交が正常化されていない日本との対立関係が背景にあるものと考えられる。そういった意味で拉致は戦争の延長、犠牲とも受け止められる。このように国家間或(ある)いは国内の内戦の犠牲になり生き別れになった人々にとっての唯一の願いは、家族の再会であると思う。しかし私自身、拉致問題は戦後に起きた国家犯罪であり北朝鮮が拉致事実を認めた以上、早期解決と謝罪があって当然だと思う。まして家族の帰国問題は、人道上の観点から考えても、無条件、即時実現されるべきである。

(2003年10月15日付朝日新聞朝刊【大阪本社版】地村保志さん手記全文より)

この問題は過去の問題と切っても切り離せないと思うんです。2003年に地村保志さんが手記で、日朝間の不幸な関係が拉致問題の背景にあると書いた。私はその通りだと思う。根底には反日感情が流れていて「日本が何十万人拉致したから、我々が何十人拉致したってどうということはない」という気持ちは持っているでしょう。相殺してしまうという意見は詭弁だけど、日本側は過去の問題についてもきちんと対処することが必要で、平壌宣言でも過去の清算ということは書いてある。北朝鮮が合法的に金を引き出せるのは日本だけという考えがあるのは間違いないと思うんです。それは日本にとって大きなカードだと思うんですよね。本来は拉致問題と過去の清算は別の話だけど、過去の清算をてこに、誠意ある回答を引き出していくしかないんじゃないのかな。

ただ、今の世界情勢を見ていると、いかに過去の清算とはいえ、日本に対して世界、特にアメリカからの圧力がかかるんじゃないか。1965年の日韓基本条約で有償、無償計5億ドルだった。今は5億ドルじゃ済まないでしょう。

――実際、ここまで大きな問題にならなくても済んだのではないか。同情と憎悪が増幅して、制御不可能なモンスターになってしまったのではないかと思います。

最初は「行方不明者」という、ベタ記事にもならない、小さな社会問題だったわけです。それがあるとき、拉致だとわかって、外交問題、国際問題、政治問題まで発展してしまった。そうなってしまった以上、大きな視野で歴史というものを見なければいけないし、その中に拉致問題を位置づけ、全体をどう動かすのか、話を持っていかないといけない。日朝間の歴史も深く根ざしているわけなので、むしろそこから入っていかないと、彼らの心は溶かせないと思う。

アメリカは自国民のジャーナリストが拘束されたとなれば、恩赦、つまり自国民の罪、違法入国を認めたということにして、元大統領が迎えに行く。日本も少しは見習ったらどうかと思う。結局、常に見下してるんです。少なくとも同等な目線でものを言い合わないと、日本はそういう国かと思われますよ。

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北朝鮮・平壌から地方へ(2014年9月)
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