拉致被害者は帰ってくるのか? 北朝鮮の再調査、9月前半にも第1回報告

北朝鮮による日本人拉致被害者らの再調査結果が、9月前半にも示されるとの観測が強まっている。今回の再調査で、新たな拉致被害者の生存者が判明するのか。
外務省

北朝鮮による日本人拉致被害者らの再調査結果が、9月前半にも示されるとの観測が強まっている。今回の再調査で、新たな拉致被害者の生存者が判明するのか。

■「すでにリストを提示」から「ゼロ回答」まで

今回の再調査は、5月の日朝局長級協議の合意に基づく。事実上、往来制限や人道目的の船舶の入港など日本側が独自制裁を一部解除したのと引き換えに、北朝鮮側は拉致被害者や行方不明者に加え、第2次大戦直後の引き揚げ途中に死亡した日本人の遺骨、残留日本人や日本人配偶者の問題を調査する「特別調査委員会」を立ち上げた。

2002年の日朝首脳会談で、北朝鮮の金正日総書記は初めて日本人拉致を認め謝罪。5人は家族も含め最終的に日本に帰国したが、日本側が指摘する残り12人について北朝鮮側は「死亡」または「入境の事実がない」としている。日本側はさらに、「北朝鮮に拉致された疑いを排除出来ない」とする約860人の「特定失踪者」も調査を求めていた。

今回の再調査で、拉致被害者は、帰ってくるのか。様々な見方がある。

日本経済新聞は7月3日付朝刊で、「北朝鮮国内に生存しているとみられる日本人のリストを北朝鮮側が提示していた」「2桁の人数」と報じた。10日付朝刊では「政府が認定している複数の拉致被害者が含まれている」「約30人」とさらに踏み込んだ。日本政府は同日「事実と全く異なる」として訂正を求めた。一方で菅義偉官房長官は14日のテレビ番組で、日本人拉致被害者について「北朝鮮はすべて管理していると思う」と述べるなど、すでに把握を終えているとの見込みを示してもいる。

2004年に拉致被害者の家族が日本に帰国する前に、その家族らと面会するなど、北朝鮮と独自の関係を持つことで知られるNGOレインボーブリッヂの小坂浩彰代表は、「天地がひっくり返っても、拉致被害者や特定失踪者が帰ることはない」と断言している。

日本が強く北朝鮮に迫れない事情がある。なぜなら平壌宣言で「拉致解決」は合意済みだからだ。それを日本側が強硬に「拉致被害者生存」を主張して対話を拒否した上に経済制裁まで科してしまった。北朝鮮側にしてみれば「いない」ものを「いる」ことにもできず、制裁を受けようが何をされようが為す術がない。日本政府も(中略)いつまでも強硬姿勢を続けていても膠着状態(十二年間も続いている。)が続くだけだとわかっている上に、国民に説明もつかなくなってきた。(中略)「再調査」によってはじめて「死亡が確認されました」と発表する以外にない。そこで北朝鮮に「制裁の一部解除」と引き換えに「再調査」をお願いしたということだ。「再調査」と言っても結果はわかっているので、「犯人」に調査を任せても構わないし、むしろ、日本の官憲は手を出したがらないから返って都合が良い。

(「レコンキスタ」2014年7月1日付より)

また、「自らの意思で北朝鮮に渡った人などを、いわば『小出し』にしてくる可能性」も指摘されている。その背景となるのが、今回の再調査が拉致被害者だけでなく「すべての日本人行方不明者」を対象にしているからだ。

その順位づけも、日本とは温度差がある。日本での報道がほぼ、拉致被害者のみが焦点となっているのに対し、北朝鮮の国営朝鮮中央通信が7月4日付で配信した記事では、「特別調査委員会」の分科会の順序は①日本人遺骨②残留日本人および日本人配偶者③拉致被害者④行方不明者、となっている。北朝鮮が拉致被害者よりも、第2次大戦直後の引き揚げ中に死亡した日本人の遺骨などの問題にウエートを置いている様子がうかがえる。

■「いよいよ胸突き八丁の協議が始まる」

古屋圭司・拉致問題担当相は9月1日、外国特派員協会で会見し、最初の報告が「夏の終わりから秋の始めに出てくるという共通認識を持っている」として「いよいよ胸突き八丁の協議が始まる」と述べた。北朝鮮による最初の報告は、拉致問題などの交渉の入り口にすぎないとの認識を示したと言える。

古屋氏は「どんなものになってくるのかは予断を許さない。どんな中身が出てくるのか、あらゆることを想定してシミュレーションしている。それ以上はお答えできない」と話した。

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