マクドナルドがキャンペーン動画削除「罰ゲームは男性同士のキス」に疑問の声

【UPDATE 12/18 18:17】日本マクドナルドはハフィントンポストの取材に対して、キャンペーン動画を削除すると発表した。

日本マクドナルドは、公式Twitterやウェブサイト上で展開している「チキンマックナゲット」のPRキャンペーンの一環として、「罰ゲーム」として嫌がる男性の頬に男性がキスをする内容の動画を公開している。この内容について、同性愛などLGBTの人々にとって不適切な表現ではないか、といった疑問の声がTwitter上などで挙がっている。

ハフィントンポストが12月8日にマクドナルドPR部に問い合わせをした後、同日午後5時現在、同社公式Twitterで動画について紹介していた12月5日の投稿は見られない状態になっている。ハフィントンポストでは同社の見解を尋ねており、回答があり次第アップデートする。

【UPDATE 12/8 18:17】

日本マクドナルドは取材に対して、キャンペーン動画を削除すると発表した。

PR部の担当者は「お客様にご不快な思いをさせ、深くお詫び申し上げます」とした。理由については「お客様サービス室」に対して、数件の苦情があり「悪ふざけの動画で不快」という意見があったことに対して検討した結果だという。キャンペーン動画などは一旦取り下げ、再編集するという。

■どんな動画なのか

動画は「正体不明のソースハンター」である怪盗ナゲッツ(お笑い芸人のダンディ坂野さんによく似た風貌)が「ナゲッツパーティ」でゲームを楽しむシーンから始まる。

ゲームに負けたナゲッツは突如「罰ゲーム」を受けることになり、両脇を漫才コンビ、メイプル超合金の安藤なつさんに羽交い締めにされる。そして、安藤さんの相方のカズレーザーさんがナゲッツの頬にキスをし、その写真が撮影されるという内容になっている。

なお、カズレーザーさんは自身がバイセクシュアルであることをバラエティ番組などで話している。

動画の最後にはハッシュタグ「#ナゲッツゲーム」が表示される。キャンペーンでは、視聴した人々にもこの「ナゲッツゲーム」で遊んでもらい、ゲームをしている動画をTwitter上に投稿することで景品がもらえるイベントが実施されている。SNSでの拡散効果を狙ったものとみられる。

マクドナルド公式サイト

動画を見た、LGBTの当事者はどのように感じたのだろうか?

■「知らないところで誰かを傷つけるかもしれない」と察知してもらいたかった

弁護士の南和行さんは、ハフィントンポストの質問に以下のように話した。

CMで安易な「おかまネタ」「おねえネタ」をオチにすることは、社会にすでにずいぶん浸透しているゲイ差別やトランスジェンダー差別の再生産になるのではないかと思います。そういったことが「笑ってもいい」「バカにしてもいい」「それが人にさげすまれるのは当然だ」という意識に根ざしているからです。

残念ながら社会がそういう意識であれば、多くの人が自分のことを正直に話せない。カミングアウトできない。だから、こうしたCMは、カミングアウトできないゲイの人ほど、見ていて傷つくことだろうと思いました。

僕自身はこのCMについて「すごく悪質」とか「差別」だとかは思いませんでした。もしかするとそれは僕自身は、家族や仕事の事情で、カミングアウトして生きることができているからかもしれません。それでも僕は「あぁ、やっぱりゲイであることは罰ゲームに揶揄されることなんだな」と良い気分にはなりませんでした。

僕は、同級生に「ゲイだ」と明かされた一橋大ロースクールの学生(当時25歳)が、転落死した事件で同級生と大学を訴えた裁判で、原告代理人をしています。その学生は、「今はカミングアウトできない」とパソコンの中に書き遺していました。なぜなら、ロースクールの自習室の雑談などの中で、「ホモネタ」や「おかまネタ」で笑い合ってる同級生が現実にいたからです。

諸外国のCMのように、LGBTはとにかくポジティブ!素晴らしい!なんていうCMは今の日本には似合わないし受けいれられないとは思います。しかし、情報発信の最先端である広告業界であれば、「この演出は、知らないところで誰かを傷つけるかもしれない」ということを敏感に察知してもらいたかったと思います。

■子供が真似すれば悪影響

一方、LGBTなどの性的マイノリティがいきいきと働ける職場づくりをめざすNPO法人「虹色ダイバーシティ」の代表、村木真紀さんは以下のように話した。

アメリカのマクドナルド社は、LGBTが働きやすい職場を評価する米非営利団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」が毎年発表している企業平等指数において、100点満点という最高評価を受けています

それなのに、日本のマクドナルドでは同性愛への嫌悪や偏見があると受け取られかねない動画をキャンペーンに使っている。これは問題があるし、残念に思います。

特に、この動画キャンペーンは「皆でやってみよう」と真似することを促すものです。もしも学校でこのようなゲームが行われ、真似して笑うクラスメートがいたら、同性愛の当事者にとってはそこは「いじめ」と同じようないたたまれない空間でしょう。

LGBTなどに関する教育が行き届いていない日本では、子供が真似することによって悪い影響を与えてしまうと思います。こうした行為を「笑っていい」というメッセージはLGBTなどの当事者の命に関わる問題だと思います。

現在の社会の空気の中で、他にどんな組み合わせならキスが「罰ゲーム」として成立するのか?もし男女の組み合わせだとしたら、恐らく「容姿がとてもきれいな人」ではないでしょう。この動画は、「望ましい男女のカップル」以外のキスは笑ってもいいというメッセージを強化してしまう恐れがあると残念に思いました。

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