トランプ大統領、入国禁止に関する新たな大統領令に署名 何が変わったのか?

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アメリカのドナルド・トランプ大統領は3月6日、イスラム圏7カ国の国民の入国禁止令に代わる新たな大統領令に署名した。対象国はイラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの7カ国のうちイラクが除外され6カ国となり、入国査証(ビザ)や永住権を持つ人は入国できるようになった。

トランプ大統領は1月27日、7カ国の人々の入国を90日間禁じ、難民の受け入れを120日間一時的に停止する入国禁止措置の大統領令に署名した

これに対し、ワシントン州にある連邦地方裁判所のジェームズ・ロバート判事が2月3日、「社会や経済に取り返しのつかない損害が生じる」として大統領令の一時差し止めを命じた。

トランプ政権側の司法省はサンフランシスコ連邦高裁に不服を申し立て、2月7日の電話による口頭弁論で「大統領が安全保障面で下した判断を覆した」として地裁命令を取り消すよう求めていた。一方ワシントン州側は、地裁の決定を取り消したら「国に大きな混乱を再びもたらす」と反論していた。

連邦高裁は2月9日、大統領令を差し止めた地裁命令を支持すると判断し、7カ国からの入国は継続していた。

トランプ氏は会見で、「ひどい裁判所がひどい判断を下した。迅速に対処して悪者を入国できないようにする」と、入国管理に関する新たな大統領令を速やかに出す意向を表明していた。

トランプ氏は3月6日、ほとんど宣伝せずに新たな大統領令に署名した。カメラすら居合わせなかった。これは政権側が大幅な譲歩をしたことを意味している。この大統領令にかかわらず、ビザを持たない6カ国の旅行者たちはすでにアメリカへの旅行を禁じられている。

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新たな大統領令を発表するジョン・ケリー国土安全保障省長官(左)、レックス・ティラーソン国務長官(中)、ジェフセッションズ司法長官

新しい大統領令は、トランプ政権にとって大きな政治的敗北を意味する。最初の行政命令に署名したのち提訴された数多くの訴訟を回避することに決めて、新しい大統領令に署名しただけだ。トランプ政権の幹部たちは、今度はかなり言葉を和らげ、「厳格な審査」と、「イスラム過激派のテロ行為」の根絶について、今回の大統領令では明確に触れていない。

「アメリカ合衆国には、私たちの国に入国する者を管理し、国民に害を与える者を入国させない権利がある」と、ジェフ・セッションズ司法長官は3月6日に語った。セッションズ氏は、難民としてアメリカに入国した300人以上のテロ関連の潜在的な犯罪を捜査中だと述べた。

とはいえ、1月27日に発表された大統領令の核心部分はいまだに残っている。6つの対象国―イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンからのビザを持たない旅行者の入国は90日間禁止される。また、第三国定住プログラムは、シリア難民に限らず120日間の停止が続いている。そして、この会計年度にアメリカに入国を許可される難民の数は、11万人から5万人に減少する。

新大統領令の修正内容は以下の通り。

・入国禁止の対象国リストからイラクを除外
・査証(ビザ)非保有者のみに適用。有効または数次用査証(有効期間内であれば何度でも出入国が可能なビザ)を持つ者は、新大統領令の対象から除外。
・混乱を回避するため、3月16日まで実施しない
・「宗教的迫害を受けている宗教的少数派」(主にキリスト教徒)の例外規定を削除

前回の大統領令からのままの内容は以下の通り。

・難民の受け入れを120日間停止
・一部の国からの市民は90日間入国一時禁止
・2017年会計年度の難民受け入れの上限は、11万人から5万人に激減

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変更の内訳は以下の通り。

イラクの全面禁止を削除

改定された大統領令では、イラク国民は今後入国を全面的に禁止されることはない。政府高官は6日、イラクは当初の大統領令の署名以来、アメリカのビザ申請者への審査強化や、「アメリカとの情報共有で協力の拡大」に合意していると述べた。

しかし、難民受け入れプログラムは120日間停止となるため、イラクからの難民が即座にアメリカに受け入れられることはない。イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの対象6カ国からの渡航禁止は維持される。

米軍で働くイラク人は、特別移民ビザというカテゴリで入国可能になる。このビザでアメリカに入国していた多くのイラク人やアフガニスタン人たちは、当初の大統領令が署名されたときには全国の空港で拘束されるという事態に直面した。

永住権またはビザ所有者は対象から除外される。

修正された大統領令には、対象6カ国でも永住権またはビザ所有者の入国を禁止しないと明記されている。正規のビザを所有する対象6カ国からの渡航者は合法的に入国可能だが、アメリカ政府は90日間一切新規ビザを発行しない予定だ。

「我々は今後アメリカに入国する人々について語っているのであって、合法的な永住権保持者や、すでにアメリカに入国している人々は対象とはならない」と、政府関係者はそう述べた。

トランプ政権自体が、当初の大統領令署名から数週間を経ても、永住権の問題についてしっかりとした説明ができていない。ラインス・プリーバス大統領首席補佐官は当初、永住権保持者は大統領令によって影響を受けないと述べていたが、のちに発言を撤回し、彼らにも影響があることを認めた。

シリアの難民の無期限の入国禁止は解除。

当初の大統領令ではすべてのシリア難民のアメリカへの入国が禁止されていたが、これは削除された。

「シリアからの難民はすべての難民と同様に扱われます」と、ケリーアン・コンウェイ大統領顧問は6日、FOXニュースに語った。

しかし難民の定住を120日間禁止するという条項は残っており、そこにはシリア人も含まれている。さらシリアは対象の6カ国に含まれているため、難民ではないシリア人も90日間は入国できないことになる。

合理化された大統領令

新しい大統領令は、段階的に実施するために3月16日までは効力を持たない。これはまた、現在すでに移動の途中である人々は大統領令から除外されることを意味する。

「空港で混乱を目にすることはない。今夜、空港で足止めされている人々はいないはずだ」と、政府高官は語った。

1月後半、人々が空港に不法に拘留されているという報道を耳にし、アメリカ全土の移民弁護士たちが活動に立ち上がった。入国禁止の対象となった人々は混乱し、当局者は多くの人々を尋問のために足止めし、あるいは飛行機への搭乗を拒否した

イスラム教徒への公然とした差別を起こさない

難民申請のうち、「宗教を基盤とする迫害に基づき、個人の信仰が、個人の国籍の国における宗教的少数派である場合は」入国を優先されるという、当初の大統領令に明記されていた部分は削除された。

これは、イスラム教徒が過半数を占める国でのキリスト教徒の窮状をトランプ氏が強調していたことから、キリスト教徒に対して設けられた例外と解釈された。彼はまた、まず「イスラム過激派のテロリスト」をアメリカ国外に締め出す必要性から、この大統領令の署名を正当化した。

次に何が起こるのか?

当初の大統領令に対する反発は、あらゆる角度からトランプ政権に打撃を与えた。大統領例の発効後わずか数時間で世界中で抗議活動が拡がった。司法省は大統領令の擁護を拒否した。そして、翌日のうちに50件を超える訴訟が提起された。

法曹関係者や組織は、新しい大統領令にも訴訟を起こす準備をしている。

「入国禁止が続く限り、私たちは訴訟を続けます」と、アメリカ自由人権協会の移民権利プロジェクト副主任リー・グラント氏は6日、政治ニュースサイト「ポリティコ」に語った。「大統領令から文言を2、3取り消したくらいで、入国禁止令につながった差別意識は、消えたりはしません」

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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