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「生理がつらいのに働くのは非効率」 Pairsを作った女性が生理休暇をすすめる理由

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女性のカラダは、人それぞれだ。生理痛が重い人もいれば、痛みがほとんどない人もいるだろう。

私は生理痛が重くない。生理休暇が必要だと考えたことはなかった。

だが、最近「体調不良で休みます」と上司に伝えたある同僚は、後からこっそり教えてくれた。「実は生理で、起きられなかった」。そういえば、鹿児島で高校生だった時、いつも一緒に下校していた友人が、生理痛がひどくて「ごめん、ちょっと休ませて」と道路にうずくまったこともある。

生理休暇は、法律で保証されている制度だ。しかし、取る人は少ない。産休や育休は、口にしやすいのに、同じ法律で保証されている休みが、とりにくいというのはどこか不思議な気もする。

そんな中、「生理痛でつらくて働けないような時に働くのは非効率的。休んで充電した方が、結果的に生産性があがる」という理由で生理休暇を積極的に採り入れている経営者がいる、と聞いて会社を訪ねてみた。

■「生理のときはパフォーマンスが下がる」

恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」を運営する株式会社エウレカ(東京・南青山)。

共同創業者で取締役COO(最高執行責任者)の西川順さんは、2008年に赤坂優さんと2人でエウレカを立ち上げた。生理休暇制度は、社員数人で大量の仕事を回していた創業時からあった。

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西川順さん

社員数はアルバイトも含めて130人で、そのうち女性の正社員は約30人。これまで3割以上の女性が生理休暇を取得した経験がある。エウレカで取れるのは1ヶ月に1日で、有給扱いだ。上司に申請すれば、すぐ取れる。

西川さん自身も30代から生理痛がひどくなり、仕事に支障がでるようになった。「何も考えられないし、眠いし、パフォーマンスが下がります。1日休んで体調を整えた方が効率的です」。

生理痛がほとんどない私は気付かなかった視点だった。私だって、腹痛や高熱で体調が悪いときは、仕事に集中できない。

「生理中はイライラしてしまって、言わなくていいことを口にしてしまう。エウレカ創業時は忙しく、共同創業者と喧嘩をしている暇はありませんでした。生理休暇を導入することで、生理が原因で起こるトラブルの芽を自分から摘むようにしました」

また、起業前に働いていた会社で西川さんには女性の部下が8人いたが、生理痛やPMS(月経前症候群)で、仕事のパフォーマンスに影響がある人もいた。

「PMSがひどい部下に生理中に仕事を振ったら、いつもより『ワー』ってなってしまったんです。翌日に『私はPMSがひどくて、彼氏にも当たり散らしてしまうんです。自分でもコントロールできなくてつらくて』と話してくれました」。

部下の生理周期を把握して、生理前や生理中の仕事の量を調整したところ、仕事がスムーズにまわるようになったそうだ。

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社員と話しやすい環境ををつくるようにしている

■生理休暇を採り入れている企業はわずか25%

厚生労働省の「平成27年度雇用均等基本調査」では、女性労働者がいる事業所のうち、2007年度に5.4%だった生理休暇の請求者がいた事業所の割合は、2015年度には2.2%に減った。生理休暇を有給で付与している事業所も、42.8%から25.5%に下がっている。 1991年の調査では請求者がいた事業所の割合は18.8%、有給で付与する事業所が55.6%だった。20年前に比べると大きく下がっている。

減った理由として2006年6月9日付の朝日新聞では、生理用品の改良や、薬の普及などを理由の一つとしてあげている。ナプキンや低容量ピルなどで、生理を「コントロール」しながら働く女性が増えたのかもしれない。

一方、それとは別に、日本人の「働きかた」が理由にある可能性もある。

全国労働組合総連合が2015年の調査で、約1万人に聞いたところ、生理休暇を取れない理由として最も多かったのは「人員不足、多忙でとりにくい」。2番目の「苦痛ではないので必要ない」に続き「はずかしい、生理であることを知られたくない」が3番目に挙げられた。

「みんなが忙しいのに、生理という理由だけで休んで良いのだろうか」。私の周りにもそんな声がある。「失われた20年」と言われるほど、不況続きのこの時代で、企業側が従業員への福利厚生を抑える一方で、働き手側は少ない人数を長時間労働で何とかこなしている例が後をたたない。男女平等が進んで、男性と同じような仕事を任されるようになった女性が、「遠慮」している可能性もある。

だが、エウレカの西川さんが言うように「生理中に働く方が、生産性は落ちる」のだとしたら、無理して働く方がかえって悪循環に陥る可能性がある。

制度の運用を任されている同社の人事企画担当の進真穂(しん・まほ)さんに聞いてみた。

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進真穂さん

会社内には、生理痛を含めて体調が悪いときに、横になって休めるスペースを設けている。

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横になって休めるスペース

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横になって休めるスペースは2カ所ある

また、最近では社員からの要望で、女性用トイレの中に、誰もが使えるナプキンを数種類設置しているそうだ。

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トイレに設置されている、誰でも使える生理用品

家からナプキンを持って行くのを忘れた。鞄からごそごそナプキンを取り出してトイレに行きたくない——。社員のちょっとした「ストレス」を取り除く仕組みだ。制度を作って終わらせるのではなく、生理休暇の「浸透」を図っている様子がうかがえる。

「体の性差を理解し、制度を整えることが企業側のメリットになる」ということは、最近の調査からも徐々にわかってきている。

婦人科系疾患の予防や啓発活動を行う一般社団法人「シンクパール」が、健康情報サイト「ルナルナ」と共同で実施した調査では、婦人科検診の制度があることで「会社への信頼度があがる」と答えた人が半数を占めた。

■男性社員も「生理」を話す

ただ、生理痛やPMSは男性の上司や同僚には話しにくいのではないか。前述した全国労働組合総連合の調査でも、生理休暇を取りにくい理由として「はずかしい、生理であることを知られたくない」が3番目に挙げられた。

しかし西川さんは経営陣の一人として、男性の社員や男性のビジネスパートナーにも、全く遠慮せずに、「私、生理痛ひどいから」「のたうちまわるくらいつらい」「だから今日は打合せできない、ごめん」と敢えて口に出して言うそうだ。

「男性側から『生理痛、大丈夫?』と聞けばセクハラになりかねず、話しにくいのは分かります。女性から働きかけなければ、女性に働きやすい環境をつくることはできないと思います」

エウレカの男性マネージャーでPairsの事業責任者を務める金田悠希さんに、生理について話しにくくないか聞いたところ、こんな返事が返ってきた。

「部下には、聞きづらいですが、知らないままでいるのはよくないので、その人が生理の話をすることに問題がないのであれば、話したい。人によって痛みも違うと思うし、反応も違うと思う。正解がないことなんだろうなと思います」

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金田悠希さん

■ 生理休暇だけが、答えじゃない

同じ生理痛に対して、薬でコントロールしたいという人もいれば、薬を飲まずに休んで治したい、という人もいるだろう。また、薬が効かないという人だっている。

もちろん医師を訪ねることは大切だが、たとえ医学の力で「痛み」が解消されても、そのことを話しにくかったり職場の理解が得られなかったりしたら、「病院に行く」ことに大変なストレスがかかる。

生理に優しい働き方を考えるということは、多様さを受け入れる働き方を考えるということでもある、ということだ。

エウレカは、2015年5月、アメリカのニューヨークに拠点があるナスダック上場の「InterActiveCorp(IAC)」に事業を売却し、動画共有サイトの「Vimeo」やオンラインデーティングサービスの「Match.com」など世界的なインターネットサービスのグループ企業の一員になった。

台湾とシンガポールに現地法人を置き、日常的に多国籍の人とやり取りをする中で、多様なニーズに応えられる働き方を模索している。

例えば、生理休暇だけではなくペットを病院に連れていくための半休なども整備している。価値観によって、「ペットは親しい家族と同じだ」と考える社員への配慮だという。

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西川さんはこう言う。「生理痛に限った話じゃないんです。自分と違う他者への想像力と、相手を理解しようとする努力の話だと思っています」

「今後日本の職場でも、国籍や宗教を理解する、LGBTの人たちを理解するということが大事になる。色々な人と働くとなった時に自分と違う他者にどこまで想像力をもてるか、という話の中で、生理痛ひどい女性がいるよね、じゃあどうしようというのが根本にあります」

多様性を取り入れることが、成功の鍵であるということは徐々に明らかになってきている。NTTデータ経営研究所の2013年の調査によれば、ダイバーシティが浸透している職場は、自身の職場の業績が良好と回答する人が全体と比べて約30ポイント高く(62.9%)、職場で女性が活躍していると回答した人も25ポイント高かった(59.5%)。

カラダの悩みはそれぞれだ。身体があまり強くない、心がガクンと落ち込む時もある。あるいは重い病気とつきあいながら、働く人も今後増えるだろう。

性別に関係なく、どうやって多様な価値観を持つ人の必要に目を向け、支えあいながら働く仕組みを考えられるかどうか。生理休暇の導入は、そのことを考える第一歩なのかもしれない。

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