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世界を脅かすトランプ政権が作っている災難

2017年03月06日 17時51分 JST

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最近、トランプ政権は、中国には緊張緩和の措置をとり、またイランには制裁解除及び関係正常化についての合意を移行することを明らかにしたことによって、多くの人々が安堵をしている。しかし、破局は免れたものの、安心するにはまだ早い。

というのも、トランプは、また違った軍事葛藤を引き起こすかも知れないからである。それに、トランプの統治方式は、アメリカのシステムを破壊するだけでなく、世界に大きな脅威をもたらすであろう。トランプの危険性は、ただ彼の好戦的な対外政策から起因するだけでなく、アメリカ国内の基盤施設や環境に対する管理不足によって発生する災難から起因する側面もあるのだ。

私たちは、まず、トランプの勝利をもたらしたアメリカの政治やガバナンスの没落を理解する必要がある。それは、ある日突然、ある気違いが現れてアメリカを掌握してしまったのではなく、アメリカにおいて政策が決定され、また執行されるという構造が完全に崩壊したことで、厚かましくも公職に就くことを望む人物が出現したケースなのである。

徹底的に民営化されたアメリカ

アメリカの政策決定権は、民間のコンサルティング会社と投資銀行に移ってしまった。1960年代の政権は、ハーバード大学のロースクール出身者が公職の半数以上を占めていたが、現在、その割合は5%にすぎない。政府は次第に企業に支配されており、公務員は政治の横暴に抵抗できるほどの自己確信を持ち合わせていない。

2016年の大統領選挙でのトランプの勝利は、次のように喩えることができるだろう。大理石で作られた聖堂があって、ある人が素手で壁を叩きながら階段に上ったり下がったりし始めた。他の人たちは皆その人のことを狂人だと思い、まさかその人物が権力を握るとは夢にも思わなかった。ところが、突然その人が素手で壁を打ち破ると、聖堂は揺れ始め、まもなく崩壊してしまったのである。堅固だった聖堂が突然崩れると、人々は、その人物に魔法のような力があると信じ始めた。

実は、トランプの政治的な成功は、過去20年間、アメリカで進められた民営化の結果物なのである。

トランプの目的は、政府の公式制度を崩壊することである。トランプと企業ハンター出身の彼の参謀陣は、私益のためにアメリカの資産を盗み、腐敗した死体だけを残そうとしている。トランプは内閣に政府解体を望むハゲワシやハイエナらを任命した。例えば、首席戦略官に任命されたバノンは、ロシア革命家のレーニンのように政府を崩壊したい言っているのである。これはなさに氷山の一角である。

デボス教育長官は、公教育を破壊しようとしている。プルイット環境保護局局長は、化石燃料企業との深い関係が取り沙汰されており、ペリーエネルギー長官やティラーソン国務長官は、気候変化には否定的な立場を示している。

このようなアメリカ政府の徹底した没落は、アメリカ市民だけでなく、全世界が直面している問題でもある。

ずさんなアメリカ、全世界を脅かす

アメリカが直面している最大の脅威は、アフガニスタンの山岳地帯に隠れているテロリストなどではない。本当の脅威はアメリカの内部にあるのである。アメリカ国内には何千個にも及ぶ核兵器、毒劇物、核処理施設、巨大な石油パイプラインや精油所、海洋ボーリング等、潜在的な脅威施設が数多く存在する。これらを安全に管理するためには、熟練した専門家が必要である。

ところが、トランプ政権は有能な専門家や公務員を解雇し、予算を削減することにより、このような脅威物質で全世界が危険にさらされるのを放置している。

現在のアメリカは、60年もの間に収集した危険物資を効果的に監視するシステムや安全基準が不足している。アメリカには港、橋、パイプライン、発電所、鉄道等を管理する専門家が足りない。アメリカの金融、教育等の制度的な基礎が急速に解体されることは、アメリカだけでなく、世界の安全を脅かす大きな脅威になっているのである。

事態はより一層深刻化している。教育や維持、補修に関する予算の削減は、専門家を教育したり、専門家に適切な賃金を支給することをより困難にしている。

ブルッキングス研究所のブルース・カッツ(Bruce Katz)によれば、基盤施設、教育、革新に関する予算は、2013年のGDP比3,1%から2024年には2,2%に大幅に減少されることが見込まれている。ちなみに、この分野の予算は40年の間は平均3,8%を維持していた。アメリカは今後50年間、莫大な基盤施設の改善が必要であるにもかかわらず、このように年々予算を削減しているのである。トランプは正反対の方向に進んでいるのである。

最近、アメリカの核兵器企業で職員の不正試験事件が発覚した。何千個の核兵器を管理する職員が核ミサイル関連の機械購買に関する試験で、カンニングするといった事件が発生したのである。この事件は何十万人の命を奪う一連の事故、不注意、コミュニケーション不足の最新版にすぎない。

『指揮と統制 (Command and Control)』の著者であるエリック・シュローサー (Eric Schlosser)が述べているように、「我々が広島のような不幸を避けられたのは、専ら運がよかっただけだったかもしれない」。この瞬間にもトランプは核兵器を増やそうと言っているのである。

昨年、アメリカ土木技術者協会(ASCE)が発行した「アメリカの基盤施設」報告書によれば、交通、食用水、エネルギー、橋、ダム等、アメリカの基盤施設の水準は、平均でD+だった。過去15年間の投資不在が大きな災難をもたらすであろう。政府の官僚制を批判する政治的宣伝のせいで、有能な公務員を採用できなかった政府は、今後このような災難を免れないであろう。

ずさんに管理される科学物質

コリン元国務長官の秘書室長だったウィルカーソンによれば、米軍の科学物質庁(U.S.Army Chemical Materials Agency)は、20年前に化学備蓄物を破壊すると約束したのだが、現在の破壊率は50%にとどまっている。(ロシアは約70%程度を破壊した)

危険な兵器を維持、管理することは、多くの人力が投入され、該当地域の承認も必要となる。しかし、これらは秘密主義や無関心のため、そう簡単ではない。即ち、軍隊は秘密維持に努めるであろうし、一般大衆は大した関心を持たない。多くの科学兵器は比較的安全に保管されてはいるが、そうでない科学物質もある。これらは目に付かず、大きな関心を持たれないため、ずさんに管理されている。

軍事廃棄物はこの問題の一部分にすぎない。アメリカは科学廃棄物、寿命が尽きた原子力発電所、核物質、廃油、送油管、そして、鉱山等に覆われている。これらを安全に管理するためには人力と施設に莫大な投資が必要なのである。

放置された核廃棄物

アメリカは民間の核エネルギー利用や核兵器プログラムに関連した、世界で最も大きな処理施設を保有している。これは福島原発の12個分に匹敵する。アメリカは年間6万5000トン以上の核廃棄物を排出しているが、この中の相当数は安全でない場所に保管されている。

IPSの核専門家であるアルバレツは、「それらの相当数が放射能物質であるが、アメリカの核廃棄物処理場は、一般的な産業廃棄物処理施設のように作られている。その中の一部は、大型ショッピングモールや自動車販売店などを建設する時に使用される建築材料で作られている。」と述べている。万一、その中の一ヶ所でも事故が発生すれば、その被害規模はチェルノブイリの60倍以上に及ぶであろう。

エネルギー部は大気汚染のことなどまったく気にもせず、埋立地に放射能物質を投棄している。1940-50年代にもミズーリ州ブリジトンのウエストレイク埋立地に放射能物質が廃棄されたことがある。もし火災や洪水が発生すれば、市民の安全はとてつもない危険にさらされてしまうのである。

また、最近ではワシントンのハンフォード核廃棄物団体(Hanford Nuclear Waste Complex)の調査によれば、28個の核廃棄物貯蔵タンクに深刻な欠陥があるのが発見された。その中の一つは2012年から漏出が発生していることが報告されている。ここは1950年代、プルトニウム実験をしていた頃から存在していたのだが、ここには5百万ガロンの放射能物質が貯蔵されている。

途絶えない環境破壊

石炭産業は山の天辺を少しずつ削りつつ、そこを生命体が生きられない不毛の地に変えてしまう。そして、川や湖に毒劇物を垂れ流す。規制なんかほとんど存在しない。

1990年代から石炭企業は新技術を導入して、ウェストバージニア州、ケンタッキー州、バージニア州、テネシー州などで、デラウェア州より広い土地を採掘した。今までの採掘によって二千キロ以上の河川が消えてしまった。

最近では採掘に使われる化学物質によってウェストバージニア州のエルク川が汚染され、30万人以上の食用水が調達できなくなったこともあった。汚染事故の責任は破産した企業にあるが、連邦政府の公務員が全く検査をしなかった責任も大きい。企業も地方公務員も汚染事故に対する非常対策の計画を立てていなかったことと判明した。

それからまた何週間後には、ノースキャロライナ州イーデンの送油管の漏出事故があって、3万9000トンの砒素を含む石炭材が近くのダン川に流入した。

トランプ政権の影響で州の検査及び規制に関する予算が削減されたことが事態をより悪化させた。危険物質による事故に対する準備や訓練に関する予算支援が減少したことで、人力訓練が全く行われていないのである。

石炭、石油産業に従事している労働者は、安全不感症に陥り、毎年多くの死傷者を出している。労働安全衛生庁によれば、テキサス州で安全規則を監督する人員はわずか95人にすぎない。その上、訓練経験のある人材はほとんどいない。

石炭採掘を支持する人は石油試錐、特に最新技術である水力を利用したシェールガス開発に賛成するにちがいない。水圧破砕は地下岩盤層から天然ガスや原油を採掘するものだが、このためには地中に水や砂等、さまざまな化学物質を注入しなければならない。この過程で食用水を汚染する毒性の科学物質が表面下に浸透する。化学物質の毒性はとても強力で、浄水が全く不可能なほどである。

シェールガス開発はその地域を完全に焦土化してしまう。ボーリングドリルが回転しながら毒性物質を撒き散らし、食用水を汚染してしまうのである。

何十年もの間、地中に浸透したベンゼン、ギ酸等が人体や環境にどんな影響をもたらすかについては、まだ明らかにされていない。これに対する規制、補修管理、災難対策等がなければ、現在のボーリングブーム(boom)はアメリカの安全を脅かす爆弾(bomb)になりかねない。

災難は地中だけに存在するのではない。ますます激化するエネルギー源の発掘は、海洋ボーリング等の極端な方法を生み出し、エネルギー企業には莫大な利益をもたらしている。2010年、メキシコ湾での原油流出により死者が11人発生し、2万6000キロにも及ぶ海岸が汚染された。その被害額は約400億ドルにも及ぶ。この事故以降にも、アメリカ政府はシェル(shell)にアラスカ海深海でのボーリング事業を承認した。トランプ政権があらゆる規制をなくしようとする課程にはこのような事故がますます生じるだろう。

頻繁に起こる大洪水、気候変化を信じないトランプ

維持、補修、検査、規制に関する予算の削減は、将来の大災害や何百億ドルにも及ぶ被害をもたらすであろう。アメリカの劣悪な基盤施設の他に気候変化もネックになるであろう。

気候変化のニューヨークパネルによれば、海水面上昇により100年に一度発生する大洪水が、2050年頃には35~55年に一度、2080年には15~30年に一度、発生するであろうと予測されている。

国家ハリケーンセンターによれば、2005年のハリケーン・カトリーナによる被害額は1080億ドル、2012年のハリケーン・サンディによる被害額は500億ドルにも及んだ。基盤施設に対する維持、管理が十分になされてない状態で気候変化は大きな災難をもたらす。次に起こる災害の被害額は9.11テロの損失額を大幅に上回るかもしれないのに、アメリカは基盤施設に対する投資を増やすどころか、むしろ削減しているのである。

残念ながら直接的な被害者である有権者は、高額なロビイストを雇用することができない。また、マスコミはこの問題を取り上げようともしない。それに予算の削減について、関係者や専門家たちは、ワシントンで自らを防御することができない。

今日のワシントンの政治文化はメディアに支配されているのだが、議員たちも再選には何も役に立たないため、この問題に関しては無関心である。

しかし、ただ二、三回の災難でアメリカはお手上げ状態になるだろう。アメリカというスーパーパワーは、内部の小さな亀裂によって破滅するだろうし、それによる環境破壊の余波は、全世界に甚大な影響を及ぼすであろう。