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「光化門を見てみなさい、韓国国民は一流の国民だ。 なのに国会が二流、三流でいいのか」 韓国国会議長:丁世均インタビュー

2017年01月05日 15時45分 JST

丁世均(チョン・セギュン)議員は、昨年6月の選挙で、弱体化していた保守派のセヌリ党に民主党が勝利したとき、国会議長になった。丁氏は、バランスの取れた人格を持ち、感情には簡単に動かされないが、政界内で調和の取れた関係を作ることに長けた韓国政治界の重鎮であり、機関の構築に情熱を持っている。朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴訟以降、韓国政治をリードしていく中心人物として浮上した。

筆者は、韓国の現在の政治的危機と、そこにある挑戦と可能性について、丁氏と話す機会を得た。韓国国民の衆目を集めている男として、彼はおそらく、韓国の政界を正確に評価するのに最もふさわしい人物だろう。

エマニュエル・パストリッチ:政府の日韓軍事情報保護協定締結もTHAADと同様、政府が決定に急ぎすぎたことが国民の怒りを買っていますが、この問題に関してはどうお考えですか。

丁世均:この問題の重要性や波及効果は、THAADとは比べものにならないでしょう。しかし、過去に日本は正しくないことをしたにもかかわらず、今も過去に対して正直に認めず、謝罪をしてないので、小さな疑惑でも感情的にとても大きく見えるのが事実です。そのため、これが問題になるのです。

また、この問題もTHAADと同様に、きちんとした論議や正当な手続きを経ずに、ことを急ぎすぎてしまったために問題が生じてしまった。この協定締結には情緒的な問題と手続き的な問題があるのです。それに後遺症と言いましょうか、今のところは表に表れていない問題が後に発生するかもしれません。ですから、おそらくしばらくすればこの問題は治まると思われますが、私はこのような国政運営が繰り返されるのは望ましくないと思っています。

エマニュエル・パストリッチ:政府はTHAADの配置も急いでいますが、これに対して議長の立場をお聞かせください。

丁世均:私は以前にもこの問題について指摘をしたことがあります。それは韓国にTHAADの配置がどうしても必要だとしたら、まず議会での議論を経て、それからTHAADの配置の候補地として挙げられてる地域の住民とも十分な協議をしなければならない。また、利害関係のある近隣諸国とも慎重に議論をしてから、問題が生じないようにしてからことを進めるべきだということです。

また、これを国内で推進する場合は、民主的な手続きを守らなければならない、と主張したことで、ひどく反対されたことがあるのですが、私はそれを進めるか、止めるかということより、過程がもっと重要だと思っています。

民主的な過程を通した決定ならば、たとえそれがいかなる結論に達したとしても、我々はそれを認めなければならないと考えます。したがって、第一に、その政策を推進する過程が民主的でなければなりません。そして、THAADの問題は国会の同意を得なければならないと私は思っています。

ところが、政府は国会の同意も得ずにこれを勝手に決定してしまった。これは間違っています。

大韓民国憲法で、外国との条約や重要な試案については、国会で批准(同意)を得ることになっているのですが、その重要な試案のうちの一つが財政の負担なのです。

国民が払った税金が投入される事業は国会の同意を得ることになっています。なぜなら、国民が負担しなければならないのですからね。ですから、経済的な負担がある部分に関しては必ず国会の同意を得ることになるのですが、このTHAADの問題について現政府は、「必要な用地をキャッシュ(お金)で購入するのではなく、政府が保有している他の土地と交換するのだ」と言っているのです。

キャッシュ(お金)はかからないとしても、実質的には政府のプロパティー(資産)が他の人にトランスファー(移転)されるのだから、これは国民の税金が使われるのと同じです。したがって、国会の批准を得なければならないというのが私の考えです。そして、国会で議論をして、国会の同意を得られれば配置をし、同意を得られなかったら配置を中止するのが正しいと、私は思っています。

エマニュエル・パストリッチ:中国の韓国産製品、及び、文化コンテンツの規制、次期アメリカ政権のアメリカ優先主義など、外交分野でもさまざまな問題が山積みだと思います。このような状況の中で国会は何か対案を模索中でしょうか。

丁世均:私は韓国が原則を守る努力をするしかないと思っています。アメリカは韓国の唯一の同盟国でありながらも、中国とは経済的な利害関係が最も大きい国であります。ですから、両国は共にとても重要な国であることには違いがありません。

したがって、いかなる事案に関してもどうするのが正しいか、また、どうするのが合理的か、そして、その原則をしっかりと立てて、力によって振り回されず、正しいものがあれば、その問題を真摯に、かつ誠意をもってきちんと説明して理解を求める努力をし、そして、正しいほうに進んでいくしかないと思います。そうしないと両者とも満足させることはできませんからね。

最大限に誠意は見せるが、国家的な利益や国際規範、また常識的に正しい方向に進んでいくしかないと、私は思います。

エマニュエル・パストリッチ:最近、国定歴史教科書の現場検討本の公開をきっかけに、国定歴史教科書の廃止を訴える世論が沸いています。歴史的な脈略から国定教科書問題を考える場合、この問題はどのように解決されなければならないとお考えですか。

丁世均:私は本来、国定教科書という発想自体が間違っていると強く主張してきました。なので、これは政派的な考えや理念的な次元の問題としてではなく、未来世代への教育、そして、歴史を認識する妥当な視点、こういった次元から捉えるべきではないかというふうに思っています。

したがって、今の韓国の水準から見て、歴史教科書を国定化する必要は全くなく、国定教科書の時代は既に過ぎたということで、国定ではなく検認定教科書にすべきだと思います。それに、国民の大多数が国定教科書に反対し、検認定教科書に賛成しているので、現政府は国定教科書を早くあきらめるべきだと、私は思います。

エマニュエル・パストリッチ:最近、毎週末、ソウルで開かれる大規模なろうそくデモが世界中の多くの市民から注目を集めています。この大規模なろうそくデモへの市民参加は、アジアだけでなく世界でも稀な活力のある韓国の民主主義精神を反映するケースだと言えます。これに関してはどう思われますか。

丁世均:これほど大規模な集会が開かれて、これといった事故も起こらず、まったく平和的で、また文化的な要素までもが加味された形で行われていることには、私も驚いています。おそらく、世界の人々はもっと驚いていることでしょう。崔順実事件のせいで恥ずかしい思いをしたのですが、これでカバーできたと思っています。

私は、アジアの他の国の人や世界の人々が韓国を訪れたときに「見よ、これが韓国の民主主義だ!」、また「見たか、これが韓国市民の水準だ!」と、自負しながら話したいくらい本当に画期的なことだと思っています。また、他の議員たちにはこういうふうに話をしています。「光化門を見てみなさい、韓国国民は一流の国民だ。なのに国会が二流、三流でいいのか。国民の水準に国会がついていかなければならないではないか。」と。これは私の本心です。

そのパワーを韓国の未来の希望に、そして、特に若者の失業や両極化など、我々が抱えている様々な問題を解決するのに上手く活用できれば、と思っています。また、そうすることで韓国国民が皆、共に暮らして行ける国になれると期待しています。

エマニュエル・パストリッチ:韓国は大統領選挙という、重要な歴史的ターニングポイントで新たな指導者を選出することになるのですが、今後、韓国の指導者にはどんなことが要求されるでしょうか。

丁世均:次の大統領は、新たな時代、例えば、4次産業革命など、我々の目の前に差し迫る新たな時代を理解している人でなければならないと思っています。

それから、韓国を一段とレベルアップさせるビジョンや戦略を持っていなければならないと思います。世の中は今、以前とは違う超スピードで変化しています。今までは上手くやって来ましたが、これからは今までの方法だけではやっていけません。ですから、新たな変化を能動的に感知して、それに対応できる、また、新たな戦略を打ち出せる有能な人物が指導者にならなければならないと思います。

それに、今の韓国社会は少子高齢化問題や若者問題が深刻なのですが、若者の失業や住居など、若者問題についてアイデアを持ち、解決の方法を提示して実践できる、このような人物でなければならないと、私は思います。

エマニュエル・パストリッチ:議長は、とても合理的で、健全な政治的見識のお持ち主だと知られていますが、今年起こったブレキジット(イギリスのEU離脱)やトランプ当選などから考えてみますと、今後、韓国の保守や進歩も過去のような姿勢では、刻々と変化する政治的要求を受容することができないと思われます。今後、保守や進歩陣営は、どのような点を補完していかなければならないと思いますか。

丁世均:簡単ではない課題ですね。韓国は「スモール・オープン・エコノミー」と言われており、パートナーと上手く協力してきたのですが、結局、自らが競争力だと言いましょうか、東洋では「自強」と言いますね。自強でなければ、情勢が激変し、多くの困難が混在する状況の中で、自分の地位を守るのはそう簡単なことではないでしょう。

そのため、科学技術をはじめとして、全ての面において、我々は強力さを失うことなく、今まで懸命に積み上げてきた技術をより一層強化させることこそが、混沌する国際情勢の中で韓国が生き残れる道だと思っています。したがって、韓国人の勤勉性や情熱、また、想像力をより一層高める努力が必要であり、そのためには、優秀な指導者が必要だと思います。

そして、今年の大統領選挙で本当に優秀な指導者を国民が選択することで、国際社会から尊重され、韓国と共生しようとするパートナーが多く集まるようになる努力が必要だと思っています。

エマニュエル・パストリッチ:今後、アメリカの次期政権をトランプ大統領が引っ張っていくことになり、韓国の対外貿易政策路線に関しても多くの人が大きな関心を寄せています。貿易に関して韓国は今後、アメリカの新政権とどのような立場で協議を進めていくべきでしょうか。

丁世均:政治の論理をもって、しばらくのあいだは、一定の状況を維持することができるでしょうが、長い目で見てみると、結局は経済の論理によって左右されるものですから、先ほども申し上げましたように、韓国が競争力を維持する限りは、ある特定の指導者が何と言おうとも、韓国はこれからも国際貿易において自分の役割を維持していけると思います。

こうした問題を政治や外交で解決しようとせずに、経済に集中して、自らの競争力を維持することこそが危機を克服できる道だと思っています。例えば、「Made in Korea」の製品がクオリティもよく、プライスも手ごろならば、アメリカの消費者もトランプ大統領の思惑に反して、それを購入することでしょう。直接購入する方法もありますし、アメリカの企業もそれを買って消費者の要求に答えようとするでしょうし、必ずしも大統領の言いなりになるとは限らないでしょう。

エマニュエル・パストリッチ:最近、朝鮮半島を取り囲む東北アジアの情勢は、とても緊迫な動きを見せています。南北の対峙問題を含めて、北朝鮮の核問題によって触発された国際社会の制裁や南北間の緊張状態の高潮、及び、韓国国内の政治的変動において北朝鮮の変数などはどのように見ていますか。

丁世均:北朝鮮の人民も、韓国の力動性にとても注視していることでしょう。

私は、以前からずっと言い続けてきましたが、北朝鮮の核問題は必ず解決せねばならないと思っています。韓国だけでなく、北朝鮮のためにも核開発はよいことではありません。ですから、北朝鮮の核をなくすよう懸命に努力しなければなりません。ただ国際社会の制裁だけでは解決にはならず、対話が必要だと考えます。

したがって、制裁と対話を平行することで、北朝鮮の問題を解決する方法を見つけなければなりません。制裁はあくまでも対話を引っ張り出すための手段であって、制裁自体が目的になっては行けません。北朝鮮の人民や政権に辛酸を与えるのは核問題のせいであって、彼らが苦しむ姿を見て楽しみたいからではないのです。そのため、私は制裁と対話を並行せねばならないと考えるのです。

エマニュエル・パストリッチ:議長がお考えになる「与野党協議体」とはどのようなものでしょうか。

丁世均:通常、国会には