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知的障害者の高齢・重度化に備える姿勢ケア 国立のぞみの園(群馬)

2016年04月04日 15時07分 JST | 更新 2017年04月04日 18時12分 JST

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義肢装具士と一緒に身体状況・機能を評価する金子さん(左)

利用者の高齢化・重度化が進む群馬県高崎市の国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(遠藤浩理事長)は、個々に合った車いすを製作・調整するなどして安楽な姿勢ケア(シーティング)に努めている。コミュニケーションの取りづらさなど知的障害者ならではの難しさがあるというシーティング。声なき声にどう応えるかが大きな課題になっている。

1971年に重度知的障害者などを終生保護する国立コロニーとして開所した、のぞみの園。2003年の独立行政法人への組織変更を契機に、知的障害や発達障害のある人の自立支援とそのための調査・研究を行い、成果を普及したり、支援者の養成・研修などをしたりする施設として生まれ変わった。530人いた利用者の地域移行も積極的に進めた。

姿勢ケアの始まりは05年に就職した理学療法士(PT)の金子暁さんが、仙骨座りや褥瘡、拘縮などの2次障害が多い車いす使用者を見て「何とかしたい」と思ったこと。当時、60人が車いすを使っていたが、その大半が標準型とリクライニング型だった。

その後、日本シーティング・コンサルタント(SC)協会の講演会などで姿勢ケアの重要性を学んだ金子さんは、10年に同協会のSC資格を取得。身体障害者の補装具制度を活用して、個々に合った車いすを製作し、クッションを調整するなど本格的に取り組んだ。

すると褥瘡が治ったり、食事が1人でできるようになったり、作業活動が安定する人が続出。2次障害も予防でき、職員の負担も軽減された。そんな姿勢ケアの重要性は全職員に認識され、毎週1回交代でタイヤの空気圧やブレーキの効き具合などを点検・整備するまでになった。

■多職種が連携して

1月1日現在の利用者は253人(平均年齢62・2歳、平均障害支援区分5・8)。その大半が地域移行の難しい医療的支援が日常的に必要な人、高齢化などで身体的機能が著しく低下して常時介助が必要な人、自閉症・発達障害・行動障害が顕著で特別な支援が必要な人だ。車いす使用者は100人いる。

車いす使用の判断は、3人のPTを中心に行う。のぞみの園は、加齢に伴い著しく機能が低下する知的障害者の特徴を考慮し機能訓練に力を入れており、ケガ防止用プロテクターを装着したり、靴を調製したりするなどして歩くことを可能な限りサポートしている。訓練内容はPTと生活支援員など多職種が参加するケースカンファレンスで決めており、歩行が限界になったときに車いすを使用する。

製作はPTと市内の義肢製作会社の義肢装具士が個々の身長・座幅・膝下の長さ、肘・膝などの可動域、座位能力などを計測・評価し、オーダーメードで行う。最も大切にしているのは、安楽な姿勢を保持することだ。

ベースとなるのは「かがまずに足でブレーキをかけられ腰部の負担が少ない」と生活支援員から好評価の㈱松永製作所のティルト・リクライニング型車いす「マイチルトシリーズ」で、座幅などを合わせ、座面を板に変えたり、横倒れ防止装置や転倒防止ベルトを付けたりする。クッションは㈱タカノのウレタン製や、㈱アクセス・インターナショナルのジェル系、エアータイプなど座位保持能力に合わせて選ぶ。

欠かせないのが、生活状況の変化などを担当の生活支援員に確認することだ。「高齢・重度化した知的障害者は身体障害者や高齢者のように自ら痛みを訴えることも、車いすに座って何をしたいかも言えない。日々、状態に変動があり、可動域などの正確な計測も難しい。だからこそ多職種が連携し、声なき声をくみ取らないといけない」と金子さんは話す。

また「知的障害者は不意に気を取られたり、歩いていた記憶があるため車いすから立ち上がろうとして転倒したりすることが多い。それを防ぐためにも保護者などの了解を得て車いすに転倒防止ベルトを付けている人が多い。やはり安全が第一。高齢者などとは違う難しさがある」という。

コミュニケーションなどさまざまな困難さがあるために丁寧で慎重なシーティングが求められる高齢・重度化した知的障害者の姿勢ケア。毎日の積み重ねの中で培われたそのノウハウは、広く普及されるべきことだろう。

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