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韓国のドラァグクイーン「ハリケーン・キムチ」は、ソウルで何を訴えたか

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私はゲイであり、時にはハリケーンキムチという名前のドラァグクイーンであり、ソウルに生まれ、ソウルに住んでいます。

私は男性を恋愛の対象とする男性、つまりゲイです。ゲイ文化の中にドラァグクイーンという概念が存在しますが、韓国ではまだ多少聞き慣れない概念です。簡単な説明をすると、映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』に出てくる、女装した男性主人公の姿を思い浮かべればいいでしょう。ゲイの男性は主にショーのために女装をしますが、派手に化粧をしたり、自分だけのスタイルを表現したり、ただの女装と差別化して、自分だけのキャラクターを作り出すことがドラァグクイーン文化だと思って頂ければ結構です。ドラァグクイーンと一言で言っても、非常に女性らしく美しいドラァグクイーンもいれば、ひげをそのまま生やした男性的なドラァグクイーン、レディー・ガガに劣らず奇抜な衣装を好むドラァグクイーンもおり、その種類とスタイルに限界などありません。

ゲイの男性は、自分のドラァグクイーン・キャラクターにドラァグネームをつけますが、私の場合は「ハリケーン・キムチ」です。

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ハリケーン・キムチに変身するためのメイクアップ中に自撮り


韓国で性的少数者(LGBT)としてカミングアウトして、堂々と幸せに生きていくことは、ほぼ不可能です。しかし、私は芸術家の父と進歩的なマインドを持つ母の間に育ち、性同一性はもちろん、多くの点でありのままの自分の姿を認められ、家族の支持と愛を受けて幸せな人生を生きています。もちろん、韓国社会で育ち、LGBTである自らの姿を受け入れて愛することを学び、家族にその事実を打ち明けるまでの過程は容易ではありませんでしたが、結果的にはうまくいっています。

しかし、私は自分自身がどれほど運のいいケースであるか分かっています。私の周囲にはLGBTの人権運動をする方が多いので、実際にLGBTが置かれた様々な状況について見聞きすることも多いのです。私の経験からして、現在の韓国社会のLGBTは、幸せで堂々とした生活はおろか、カミングアウトすらできずに一生、本当の自分の姿を隠して生きていく人が大多数であり、さらに、そんな人生が苦しいと、自ら命を絶つ人もたくさん見ました。また、家族にLGBTであることを明らかにした後(あるいはバレた後)、家から追い出され、保護施設や友人の家を転々としながら、日々ホームレスのように生きていく若者たちも、とても多いのです。

私は自問自答しました。この人たちのために私ができることは何だろうか? もちろん、金銭的な支援をするために寄付もしていますが、より大きな視点で、社会に変化を起こすことが最終的な解決策ではないか? そう自分自身に質問を投げかけて数日後、私は靴を脱いでソウルの中心部に出かけました。いや、正確に言うと、ハイヒールを履いて出かけました。

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ハイヒールを履いて、ソウルの中心部に立った初日。ソウル市役所広場前で


ハイヒールを履いて、メイクをして、かつらをかぶって、私のドラァグキャラクター「ハリケーン・キムチ」の姿で、ソウルの都心を練り歩くことにしました。これを路上公演(以下、パフォーマンス)と呼ぶ方や、「一人デモ」と解釈する方もおられましたが、呼び方は何であれ、私がやろうとしたのは大きく2つのことでした。

まず、LGBTが韓国社会にも存在することを、そして、どのような場所にも存在することを、そして堂々と存在する権利があることを示したかったのです。

第二に、本人の性的指向を隠して生き、生きづらさを感じ、また孤独にさいなまれているLGBTの方々に、決して孤独ではないと、LGBTの権利を拡大するために懸命に努力している人もたくさんいると知らせたかったのです。

私は「ハリケーン・キムチ」として、一日ばかり路上に出てあきらめたり、「この程度やれば十分だろう」と満足したくなかったのです。3時間もかかるメイクですが、都心を歩き回ると足が痛くなるハイヒールですが、堂々と美しく1週間、粘り強くやってみようと決意しました。

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韓国人や観光客が多く訪れるショッピングの中心地、明洞(ミョンドン)で


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歌手PSYの歌で世界的に有名になった江南(カンナム)で


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「反同性愛コンサート」が開かれていたソウルの総神大学で、LGBTの人権活動家とLGBTサポーターたちが、構内に入るのを妨害されている様子


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構内に入るのは阻止されたが、総神大学前でまだ友情と決意をともにするLGBTの人権活動家たちと、LGBTを支えてくれるサポーターたち

総神大学前に到着したハリケーン・キムチ、活動家パク・エディ


パフォーマンスの場所は、ソウルで多くの人が訪れる場所、または重要な意味がある場所を中心に選びました。日曜日を除く6日間のうち、4日は一人で都心を練り歩きました。日中の方が明るいので、多くの人に見てもらえるだけでなく、昼休みの時間にパフォーマンスをすれば、会社で働く人が昼食で外出したときに私を見てもらえるからです。このため、学校や職場に通う私の知人のほとんどは、一緒に歩くことができませんでした。

しかし、3月31日には、午後の比較的遅い時間帯にパフォーマンスがあったので、多くの知人や人権活動家に会うことができました。この日はキリスト教系の総神大学で「反同性愛コンサート」が開かれた日でした。コンサートのポスターでは、同性愛をまるで罪悪かのように、そしてエイズの病原であるかのように表現しており、ネット上でかなり議論になっていました。だから総神大学のこのコンサートに不満を持つ多くの人々が集まったのです。人権活動家の友人、パク・エディさん、LGBTを受け入れて平等な愛をくださる教会の牧師さん、通りがかりにこのイベントを知り、ありがたくもLGBTの立場を支持してくれた「アライ」(LGBTに連帯する人)ら、多くの方々がいました。長い小競り合いと警察の介入の末、「反同性愛コンサート」に反対する人たちは、学校内ではなく正門前で意見表明することにしました。

韓国は世界的に見ても犯罪率が低く、路上でLGBTへのヘイトクライムが頻繁に起こる国でもないので、恐れることなくソウルのあちこちをドラァグクイーンの姿で歩き回ってはいましたが、同じ考えを持った多くの人々がそばにいたこの日は、より心強く安全な気がしました。このように感じたのは、ハリケーン・キムチだけでなく、多くのドラァグクイーンとLGBTが集まり、公演や音楽、ダンスを楽しんだ4月2日のパーティーでも同じでした。

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東大門デザインプラザ(DDP)でポーズを取るハリケーンキムチ

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ミートマーケットパーティーの主催者で、昨年のクィアー文化祭で共演したドラァグクイーン「クシア・ディアモン」(Kuciia Diamant)とハリケーン・キムチ


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景福宮で韓国の民族衣装スタイルの服を着てパフォーマンスを繰り広げるハリケーン・キムチ


数日にわたるパフォーマンスが終わる頃には、体がとても疲れていました。そして行く先々で警備と警察、そして反同性愛勢力が介入したせいで、精神的にも非常に疲れていました。しかし、私が下した結論は、「とても疲れたけど、すごくやりがいがあり、教訓に満ちた時間だった」ということでした。

メディアでいつも言われる「多くのアジアの国はまだとても保守的だ。特にLGBTの問題について、韓国は非常に遅れている」。さらに韓国に住む韓国人や外国人までがこう言います。「ヨーロッパの多くの国とアメリカでは合法化された同性婚が、韓国では数十年かかるだろう」、あるいは「韓国で同性婚など想像もできない」。

しかし、私が直接、自分の足で駆け回って見た韓国は違いました。多くの若者たちは、とてもオープンなマインドを持っており、LGBTも気兼ねなく受け入れる準備ができているとは知っていましたが、中高年層は実際にどう考えているのか、今はある程度分かります。写真を撮ってほしいという依頼を快く聞いてくださり、笑顔を浮かべて私との会話を続けてくださったおばさん、私を指差して下品な言葉を吐く宗教関係者に舌を出し、私に「頑張れ。格好いい」と言ってくださったおじさん、私に親指を立てて行かれたおじいさん、皆さん私が持っていた偏見を打ち破って、私に新しい視点を開いてくださいました。若者たちはもちろんのこと、年配の方にも、こんな開かれた考えを持った方々、LGBTを支持する準備ができた方がたくさんいるという事実を、家に閉じこもっていたら、ゲイクラブに行くだけだったら知らなかったでしょう。

この経験が、他の人にも、韓国社会にも、さらには世界に少しでも、どんな方法でも肯定的な変化をもたらせば幸いです。ハリケーン・キムチの服を着た私に会って、帰宅して家族に、友人に、ハリケーン・キムチに会ったという話をしてくれたので、より多くの人々がLGBTに接する機会が生じ、多くの方々が撮った私の写真を通じて、より多くの人々がLGBTを間接的に見る機会が生まれることを願っています。

多くの韓国人のLGBTが「韓国はあまりにLGBT問題について保守的だ。カナダ、アメリカみたいな外国で暮らしたい」と言います。私はその人たちに「その国のLGBTが、今のような権利と自由を享受するために、どれほど多くの戦いを経て血を流したのか知っているか」と尋ねます。もちろん、私が誰かに「韓国を離れるな、残って戦え、血を流せ」と強制することはできません。強制したくもありません。しかし、私がパフォーマンスをすることで、そして私がパフォーマンスを通じて経験したことを共有することで、韓国も変化していること、そして今この瞬間にも、より多くの肯定的な変化を起こすために努力している人が多いことをお話ししたいのです。

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明洞でハリケーン・キムチと写真を撮るために集まった人々


パフォーマンス期間中、私はリアルタイムでハリケーン・キムチのFacebookページに自撮り写真と短い動画をアップしましたが、爆発的なビューとコメント数に驚きました。写真やビデオを見た方がFacebookで、メールで、SMSで、あるいは直接会って感謝と応援のメッセージを、とてもたくさん送ってくれました。1週間やると予告していたので、途中できついからとやめたくても、本当に多くの方々が見守ってくれていたので、ああ...とても途中でやめることができませんでした。本当に1週間持ちこたえたのは、応援してくれた方々のせい、いや、応援のおかげです!

ある意味、愛を広めようとパフォーマンスを開始したのに、むしろ私が多くの方々から、より多くの愛を頂くことになりました。私の1週間の旅の一部になってくださったすべての方々に感謝を申し上げたいと思います。最後に、ハリケーン・キムチが写真の中でいつも持っていたポスターに興味を持った方がおられるようなので、そのポスターを公開して、終わります。またお会いしましょう!

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2015年、クィアー文化祭パレードの使用許可の問題で、キリスト教の反同性愛運動家と警察を相手に衝突が続いていた。その状況をライターが描いた風刺的なポスター


この記事はハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳、要約しました。