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"再エネ大国"ドイツと、『原子力大国』フランスの比較(その3) 〜 日本が参考にすべきは、「フランス+ドイツ」

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(その1)(その2)からの続き・・・>

結論から言うと、ドイツのエネルギー事業者は、"脱原子力"に向けて相当の困難を強いられ、巨額の資金と経済活動の勢いを失った。

2013年のFrankfurter Allgemeine Zeitung紙のインタビューで、環境・自然保護・原子力安全担当大臣のPeter Altmaier氏は、2039年にはドイツの再生可能エネルギーへの移行費用は10兆ユーロになるであろうと述べている。

ドイツで原子力発電所を運営していたE.ON や RWEは、今では石炭火力発電に移行せざるを得なくなっている。当然、これら事業者の経営は不振になっている。

これらの企業は脱原子力という政策決定により非常に大きなダメージを受けているといえる。新たな投資をしなければならない上に、原子力発電所を廃炉にする費用も捻出しなければならないからだ。E.ONでは、2015年に70億ユーロもの損失を計上。RWEも2013年に28億ユーロの損失を計上し、60年ぶりに赤字となった。

その上、E.ON や RWEは、政府による多額の補助金を受けた再エネ発電事業者と戦っていかなければならない。

RWE、Vattenfall 、E.ONはドイツ政府に対し、総計数百億ユーロに上る損害賠償を求め、ドイツ連邦憲法裁判所に提訴した。

フランスでは、エネルギー供給会社は生産性の高い設備を有しており、このエネルギーシフトによるダメージは少ない。とりわけ、EDFとEngie(旧GDFスエズ)という二つの主要なプレーヤーは世界でも指折りの発電事業者であり、2015年時点ではEDFは世界最大の発電事業者となっており(発電能力134.2 GW)、Engieは世界最大の政府から独立した発電事業者となっている(117.1 GW)。しかし、興味深いことにEDFとEngieは異なる戦略を取っている。

Engieは、カントリーリスクを避けるために多様化戦略を取っている。2016年には、5つの大陸の70を超える国で経済活動を展開している。

この多様化戦略の一環として、Engieはブラジル、インド、南アフリカといった途上国に対し集中的に大規模な投資を行い、ヨーロッパ市場の抱える困難や過競争を克服しようとしている。

EDFは1990年代後半から2000年代前半にかけての海外への集中的な投資という段階を経て、今は3つの大陸で活動しており、とりわけアメリカ、ヨーロッパ、アジアでその存在感を高めるに至っている。海外投資はEDFの戦略の中心部分ではもはやなく、アルゼンチンで数十億ユーロ損失を出した失敗などを経て、今日は、イノベーションと再エネへの移行を進めている。

ドイツには、再エネ産業を牽引するリーダー企業が数多く存在する。風力発電であればNordex、Fuhrländer、Enercon、REpower Systemsであり、太陽光発電であればSolarWorld、Conergy、Q-Cellsである。最大手はもちろん、シーメンスである。

ドイツは強力な再エネ産業を有しており、それは国際競争で優位であることに疑いの余地はない。ドイツは再エネの開発・利用で最先端を走っている。そして、ドイツは2014年に再エネ発電量で世界第5位となっている。

フランスのエネルギー構成で原子力が依然として圧倒的地位を占めているが、これは再エネを軽視しているからではない。2010年からEDFは再エネの発展に64億ユーロを投資しており、2030年までに現在の数値のおよそ2倍の27%を再エネ発電とすることを標榜している。EDFは再エネ産業を牽引するEDF Energies Nouvellesという子会社を有しており、これは9 GWの発電能力を持っている。Engieも同様に再エネに投資しており、現在、再エネ発電量は総発電量の17% (115.3 GW)で、これを2025年までに倍増させる計画。
 
Engie やEDFといった巨大なプレーヤーによる投資に加えて、他のフランス企業も再エネの利用に取り組んでいる。バイオマス、風力、太陽光、水力による発電事業を手掛けるAkuo Energyは2007年に事業を開始し、これまでに18億ユーロ以上の投資を行い、アメリカ、インドネシア、ポーランドを含む8つの国で再エネ発電事業に従事している。
 
このようにフランスは再エネへも活発な投資を行っている。フランスは、世界でも有数の巨大な電力会社を有しており、今後、再エネ分野を引っ張っていく可能性も十分ある。

ドイツの脱原子力という決断は、人々に大きく訴えかけるものであろう。しかし、上述の通り、ドイツは様々な困難に直面。ドイツでは、脱原子力により電気料金が上昇した側面も小さくない。化石燃料の利用に戻った結果、CO2排出量が増加している。

一方、フランスは、安い電気料金を維持しながら再エネへの移行を同時に推進するという理想的なエネルギー転換を示していると言える。

このことは、日本が再エネ発電を増加させつつ、原子力発電も正常化させることの正当性を示している。

最後に、日本はドイツという再エネ先行国だけを見習い過ぎてきたが、これは猛省点なのだ。ドイツとフランスの電源構成(発電電力量ベース;2014年)を見ると、以下の通り。

 ○ 独 :再エネ26%、水力10%、原子力16%、化石燃料等49%
 ○ 仏 :再エネ 4%、水力13%、原子力77%、化石燃料等 6%
 ◎独+仏:再エネ17%、水力11%、原子力42%、化石燃料等30%

日本は、ドイツかフランスのどちらか一方だけを見習うのではなく、「ドイツ(再エネ先行国)+フランス(原子力先行国)」を見習う必要がある。