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トランプ政権で軽んじられる経済専門家の声:研究員の眼

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~大統領経済諮問委員会が准閣僚ポストに格下げ~

トランプ氏が第45代大統領に就任して1カ月が経過した。トランプ氏は、政治経験はないものの、豊富なビジネスマンとしての経験を有していることから、大統領就任後は政治的なリーダーシップを発揮することが出来ると選挙期間中、トランプ氏支持者を中心に予想されていた。

しかしながら、この1カ月の政権運営をみると、円滑なマネージメントが出来ているとは言い難い。

とくに、政策実現に不可欠な政権スタッフの登用が遅れている。

非営利団体のパートナーシップ・フォー・パブリック・サービスによれば、2月28日時点で上院の承認が必要な550のスタッフのうち、閣僚も含めた承認済みポストは15に留まっており、依然として520近いポストで指名すらされていない状況となっている。

実際、2月10日の日米首脳会談で合意された日米経済対話について、麻生副総理は15日の衆院財務金融委員会で、ペンス副大統領の訪日に併せて春に開催される予定の第一回日米経済対話では、米側のスタッフ不足が原因で詰めた話が出ないとの見通しを示している。

このように、政権スタッフの不足によってトランプ大統領が目指す経済政策について、どの程度具体的な政策立案が行われているか非常に不透明な状況と言える。

一方、トランプ大統領が経済政策立案において経済専門家の声を軽視しているのではないかという見方がでてきた。

2月9日のウォール・ストリート・ジャーナル誌は、8日にホワイトハウスが発表した24名の閣僚リストに、歴代政権では概ね含まれていた大統領経済諮問委員会(CEA)委員長が含まれていなかったことを問題視した。

CEAは、1946年にハリー・トルーマン大統領が創設したアメリカ合衆国大統領行政府の一部門であり、大統領に対して経済指標等についてブリーフィングを行うほか、大統領が目指す政策について経済学的な見地からアドバイスを行うエコノミスト集団である。

また、CEAは経済情勢や政権の経済政策に関する記述・分析がまとめられ、毎年2月頃議会に提出される大統領経済報告書の執筆も行っている。

組織としては30名程度の小所帯だが、大統領直轄でオフィスもホワイトハウスに隣接して建つアイゼンハワー行政府ビルに入っており、他省庁に比べて大統領との距離が近い。

エコノミスト集団であるCEAの委員長ポストは、アラン・グリーンスパン氏、ベン・バーナンキ氏、ジャネット・イエレン氏などの連銀総裁や、ジョセフ・ステイグリッツ・コロンビア大学教授や、グレッグ・マンキュー・ハーバード大学教授が歴任するなど、当代一流のエコノミストが就任してきた。

金融危機の中、08年に大統領に選出されたオバマ政権では、選挙後3週間で経済学者のクリスティーナ・ローマー・カリフォルニア大学バークレー校教授が指名され、米国家経済会議(NEC)議長に指名されたラリー・サマーズ氏らとともに金融危機対策で主導的な役割を果たした。

CEA委員長を閣僚に含めるかどうかは、大統領権限で可能なことから、当該ポストを格下げすること自体はそれほど異例の対応とは言えない。

しかしながら、トランプ大統領が掲げる保護主義的な通商政策などに対しては、トランプ氏の閣僚で唯一の経済専門家であり新設された米国家通商会議(NTC)議長に指名されたピーター・ナバロ・カリフォルニア大学アーバイン校教授は、支持しているものの、存命の歴代CEA委員長が全員異議を唱えているほか、選挙前の11月には米経済学者370名が公開書簡で反対姿勢を表明するなど一般的な経済専門家の反対は根強い。

このため、トランプ氏は経済専門家の声を軽んじている訳ではなく、同氏の経済政策に賛同してもらえる専門家を見つけられないことから、准閣僚ポストに格下げした可能性もある。

いずれにせよ、トランプ大統領が掲げる経済政策は経済専門家の間で物議を醸す政策も多く、経済政策の立案段階で専門家がアドバイスをすることは重要だろう。

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(2017年3月1日「研究員の眼」より転載)
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経済研究部 主任研究員
窪谷 浩