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「誰かこれで大丈夫だよと言ってほしい」初めての出産で経験した産後うつ

2017年05月30日 00時03分 JST | 更新 2017年05月30日 00時03分 JST

医療問題ジャーナリストの熊田梨恵と申します。私は2015年、長男を出産後に「産後うつ」を経験し、初めてその苦しみと孤独を思い知りました。仕事柄「産後うつ」という言葉は産婦人科医から聞いたことはありましたが、まさか自分がそうなるとは思いませんでしたし、妊娠中は誰からもそんな大変なことがあるとは聞かされませんでした。

私の場合は、産後うつや睡眠不足、片頭痛などから日常生活が送れなくなりました。そんな私がどうやって産後うつの苦しみと向き合い克服していったのか。このブログでは、産後うつ経験者として一つの体験談をお伝えしたいと思います。

前回は、初めての赤ちゃんと向き合うことの不安と孤独について書きました。今回は、産後うつの苦しみについて書いてみます。

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生まれたての息子は、体重約3400g、身長50cmと両掌に置けるほど小さく、手足はか細く、やわらかくてふにゃふにゃしたように感じられた。

腕に抱く息子の命は、ふっと息が吹きかかるだけでも消えてしまいそうな儚い蝋燭の炎のように思えた。新生児を取材させてもらったことをはあっても抱くことなど初めての私は、どう扱っていいのか、抱っこするのも怖々だった。

(ペット(の話を持ってくるのもどうかだが)もニワトリ以外飼ったことがないので、自分より小さい命に触れたことがほとんどなかった)

ちょっと力を入れ間違えたら、すわっていない首がガクンと折れ曲がらないか、手足の骨が折れやしないか、関節をおかしな方向に曲げやしないか、ヒヤヒヤしていて抱くのも毎回緊張したぐらいだった。

自分が世話をしなければいけないが、その世話がやり過ぎでないか、不足していないか、そういったことが全く分からなかった。

よく「手を抜いたほうがいいよ」と言われるけど、何に力を入れて、何に抜いていいのか、そもそもそこから分からないのだから、手の抜きようなどないのだ。

おそらく二人目を持つことでもないと分からないのだと思う。

産後に片頭痛が起こるようになった。

私の場合は典型的な片頭痛だが、突然目の前にギザギザの閃光やモザイクが見え始め(いわゆる閃輝暗点)、その後に凄まじい頭痛が始まる。そうなると、もう動けない。ここまでつらい頭痛というものがあるのか、と思うほどで、これが始まると授乳もままならなかったし、家事などは完全に無理だった。

初めて片頭痛を起こしたのは退院翌日だった。マンションに息子と二人きりで、誰にも助けを求めることはできず、私はパニックを起こした。私がこんな状態で、生まれたての子どもに何かあってはいけない、私がこのまま動けなくなったら母乳をあげられなくなって、子どもが脱水になったらどうするんだと、パニックで過呼吸気味だった。

一人きりでどうしていいか分からなくなって出産した病院に電話した。とりあえず救急外来に来てほしいということだったので、電話でタクシーを呼んだ。

子どもが生まれて初めての二人での外出が、救急外来受診とは。

張り裂けそうな頭をなんとか支えながら、子どもを初めてのスリングにくるみ、粉ミルクやおむつを用意した。頭はすさまじく痛かったけど、子どもに何かあってはと、必要そうなものをなんでもかんでも詰め込んだので、バッグはぱんぱんになった。バッグを持つことすらつらいのに重くてしんどかった(自分のものは財布と携帯と診察券だけ)。こういうことを一人でしなければいけないことが、とてもつらかった。

玄関に来たタクシーに乗り込んだ。私は頭痛もひどかったが、初めて子どもを外に連れていくことの緊張も加わり、頭の中は大混乱だった。ずっと子どもに向かって「大丈夫だよ、大丈夫だよ」と言っていたのを覚えている。大丈夫だよと言ってほしいのは誰よりも自分だったろうに。

そして救急外来を受診し、MRIを撮った結果、片頭痛と診断された。その時は夫も会社から駆けつけてくれた。

それから毎日午後に片頭痛が起こるようになり、2回ほど受診もした。

私はどんどんやつれ、孤独と不安に苛まれ、精神的に追い詰められていった。

 

子どもは本当にこれで大丈夫なのか?(子どもは答えてくれない、新生児期は笑わないというのもつらい)

私がやっていることは合っているのか?(多分合っているんだろうけど、あまりに心もとない。実は異変が起きているのに気付いていないだけならどうしよう)

誰かこれで大丈夫だよと言ってほしい、誰かと話がしたい。(でも外出するにも体がつらい、電話やメールするのも手間でその気が起きない、話していたら子どもが泣き出しそう、話して睡眠時間がなくなるのもつらい)

子どもが泣いたら気が気でなくなってほったらかしておけない、トイレに行くにも食事をとるのも罪悪感がある。(「子どもは泣くのが仕事」なんて、頭では十分過ぎるほどに分かっている。放っておくことができない精神状態になっていることがつらいのだ)

子どもと二人きりでいるのが怖い・・・。(でも、自分しかいない・・・)

ある晩、その不安を夫に告げると、「体重が増えていて、母乳も飲んでるんだから何の問題もないじゃない。健康だよ」と軽く言われた。

そういうことじゃない、と思って落ち込んだ。話が通じない、と思った。

でも何が「そういうことじゃない」のかは、どうにも説明が難しい。

「母乳を飲んでうんちもおしっこも出て体重が増えている = 健康」→「はい、よかったね。問題なし」という単純な図式に、頭の中はまったくならない。もっとたくさんの不確定な要素があって、そちらの方に大いに悩まされるのだ。

パソコンやスマホを見ようにも目がつらくなって勝手に瞼が閉じるようになり、体力も落ち、片頭痛に悩まされ、母乳育児も苦痛になっていった。

そんな状況の中、子どもの予防接種を受ける医療機関を探したり、保育園見学に行ったり、子育てサロンに行ったり、子どもの健診を受けたり、それなりに色々とあった。たまに育児がつらいと目をショボショボさせながら「育児がつらい」とfacebookに投稿したりして、友人も様子を見に訪れてくれた。

でも、一定の時間誰かが一緒にいてくれたとしても、その時間が終わったらまた子どもと二人きりになるので、それがつらかった。知人友人が帰るときは、「お願いだから帰らないで」とすがりついて泣きたい気分だった(でも、一生懸命に笑った)。

また当時、産後の母親支援ということで生協の家事サービスを利用していて、週3回昼間に2時間来てもらっていた。食事作りや洗濯をお願いしていたのだが、やはり初めての人が自宅に入るので気遣った。もちろん皆さんとてもいい方々で、私にも気遣ってくれたし、子どものことも可愛がってくれた。しかし私は相手がなるべく緊張しないようにと笑って話したり、世間話をしたりしてしまった。担当の方が帰ると、どっと疲れたりした。

 

(2017年5月15日「ロハス・メディカルブログ」より転載)

前回の記事~産後、何が、なぜ大変になるのか? 私が「産後うつ」の苦しみを語る理由

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