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「卒業したら死のうと思う」と語った先輩へ、なにも伝えられなかったLGBTの後悔

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LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字からとった性的マイノリティの総称のひとつ)は日本の人口のうち約7.6%=13人に1人と言われています。既に約484万人のLGBTが日本全国で、あなたの隣で、働いています。

しかし、就職活動中に「ホモ」や「オカマ」といった差別用語によるハラスメントを受けることや、就職後も、配属先で笑いの対象にされたり、自分のセクシュアリティがバレないよう嘘を続けながら働いているLGBTも少なくありません。

今回、私が所属しているNPO法人ReBitの代表である藥師実芳さんへインタビューをし、自身の体験から、就労におけるLGBTの抱える困難や、それらを解消するきっかけとなるイベントについて語っていただきました。

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「卒業したら死のうと思う」と語った先輩へ、なにも伝えられなかった後悔


LGBTの就活・就労に対する事業を展開することになったきっかけは、藥師さんが大学3年生の時。「1つ上にトランスジェンダーの先輩がいたんですけど、周りにもセクシュアリティをオープンにし、常に明るく、みんなから好かれているような人でした。でもある時、その先輩は「大学を卒業したら死ぬしかない。自分はトランスジェンダーだからどうせ働けない」とぽろっと言ったんです。
「そんなことないですよ」と答えたけれど、その根拠がなかった。ここに行ったらサポートがある、こんなロールモデルがいる、こんなLGBTフレンドリーな企業があるという情報が当時はほとんどなくて」と藥師さんは語ります。

その翌年、藥師さん自身が就職活動を経験。結果としては、50社受けて2社内定を獲得するも、誰に相談すればいいのかもわからず「よく就活帰りの中央線でひとりで泣いていました。」と語りました。
受けた会社によっては、トランスジェンダーであることを理由に、面接の途中で帰らされたり、面白おかしく話を聞かれたり、体の構造について聞かれるなど、ハラスメントを受けることもありました。

「こういった悩みを相談できたり、共有できる場や、ロールモデル、LGBTフレンドリーな企業に出会える場があればよかった」そんな思いから社会人1年目にキャリアカウンセラーの資格を取得し、LGBT就活支援を始めました。3年目を迎えるこの事業では約500人のLGBT就活生を応援。日本初となるLGBT就活サイトも立ち上げました。

「セクシュアリティのせいで、自分に選択肢が少ないんじゃないかと感じている人がいるとしたら、そうでないと伝えたい。どんな業界でも、どんな業種でも選べる。そんなメッセージを企業と一緒に伝えていきたい。」

学齢期、就活期、就労初期からLGBTをサポートしたい


「国内の約484万人のLGBTのうち、同僚一人にでもカミングアウトしているLGBTの割合は4.8%。300人の職場でようやく1人カミングアウトできているかいないかという状況です。」と藥師さんは語ります。(電通ダイバーシティ・ラボ LGBT調査 2015年4月 LGBT500人への調査

自分の上司や同僚・部下が同性愛者や両性愛者だった場合「嫌だ」と答えた人は約35%という調査もあり(日本労働組合総連合会「LGBTに関する職場の意識調査」2016年6月-7月)、このカミングアウトの割合の低さの背景には、こういった嫌悪があると考えられます。

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「LGBTの人は就活のときも、はたらきはじめてからも困りやすいんです」と藥師さんはいいます。

カミングアウトをして就活をすると、面接官に理解がない場合、ハラスメントを受けることがあります。また、カミングアウトをしないで就活をすると、セクシュアリティはアイデンティティのひとつだからこそ、例えば学生時代にがんばってきたことや、その企業に入りたい理由の背景にセクシュアリティが関わっていた場合、嘘をつかないといけません。また、LGBTについての研修や福利厚生の状況を企業側に聞くことができず、結果的に「自分が安全に働ける職場なのかどうか」を知ることができません。

履歴書の男女欄の記入や、職場でのカミングアウトなど、トランスジェンダーの約69%、同性愛者や両性愛者の約40%が求職時に困難を感じるといわれています。

(出展:特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター2015)

働きはじめると更に困難があります。カミングアウトして働く場合、人事には理解があっても、配属先にLGBTに対する理解がないと、ハラスメントなどにつながります。また、カミングアウトしていない場合でも、例えば「土日なにしてたの?」と聞かれたときに、同性パートナーをはじめとした家族や、自分自身について開示することが難しくなることで、コミュニケーションや人間関係に困難が生じることがあります。

また、福利厚生に同性パートナーが家族と想定されないことで、同性パートナーが入院した場合に休みが取れなかったり、転勤になった際にパートナーと一緒に行く事ができないことがあり、その職場で働き続けることが困難になることがあります。

違いを想定している場所は、誰にとっても働きやすい場所


「カミングアウトしても、しなくても自分らしく働くことができる職場が理想です」と藥師さんは語ります。誰かがカミングアウトしていてもしてなくてもLGBTの人がいることが前提となっている職場。そして、LGBTの存在が想定されている場所は、LGBTではない人にとっても働きやすい場所だと思います。例えば信仰の違いや、考え方の違い、文化の違いなど、目に見えない違いも含めた違いが想定されている職場は、誰にとっても働きやすい職場であるはずです。

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あなたが選べない選択肢はないと伝えたい


人生においても大部分を占める「職場」で、自分らしく生きることができないことはとても辛いことです。
そんな中、最近ではLGBTへの差別禁止規定を明文化したり、同性パートナーも配偶者と認め結婚祝い金を支給する企業が出てきました。さらに、死亡保険金の受取人を同性パートナーに指定できるプランを整えたり、企業の中にLGBTの社員コミュニティができる企業も出てきました。少しずつですが、社会は変わりつつあります。

LGBTでも職業の選択肢を狭める必要はない。「あなたが選べない選択肢はない」と伝えていくために、NPO法人ReBitでは、様々な業界のLGBT施策に取り組む企業を呼び、企業も、LGBTもLGBTでない人も、就活生も、学生も、社会人も、ともに「自分らしくはたらく」を考えるワークEXPO「RAINBOW CROSSING TOKYO」を10月8日(土)に開催することになりました。

「このイベントに何百人という人がくることは、企業のダイバーシティ施策を後押しする強いメッセージになります。企業が変えてください、ではなく、このイベントに来たあなた自身が企業を変えるメッセージになる。来場したひとりひとりのストーリーを企業側が感じとって、行動に移していく、その交差点を作りたい。」と藥師さんは語ります。

RAINBOW CROSSING TOKYOの「CROSSING=交差点」には、企業と企業の交差、企業と学生の交差、企業とLGBTの交差、LGBTとLGBTじゃない人の交差。様々な人や思いが交差する場をつくりたいという願いが込められています。

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(RAINBOW CROSSING TOKYOのフライヤー)

LGBTも、ALLYも、一緒に


RAINBOW CROSSING TOKYOでは、企業による講演や、各企業と参加者との交流ブース、LGBTやLGBTを理解し、支援したいという「ALLY(アライ)」の社会人によるパネルトーク、個別質問会、オーダーメイドスーツの採寸や販売など、多数のコンテンツが実施されます。

参加は無料で、対象は、自分らしくはたらくことに興味のある就活生・学生・求職者・社会人(年齢・セクシュアリティ不問)です。もちろんLGBTではない人も参加できます。

「LGBTは見た目で違いはわからないけれど、あなたの隣にも必ずいる。あなたが知ることで職場がLGBTフレンドリーになるきっかけになる。」と藥師さんは言います。

自分の職場にLGBTがいるかわからない、カミングアウトされたけど、どう応えればいいかわからなかったという人、社会人でも学生や就活生でも、これから職場でALLYとして行動したいけど、どうすれば良いかわからないという人の、ひとつのきっかけになるはずです。

13人に1人のLGBTだけでは職場は変えられません。ALLYと一緒に声をあげて行動していくこと、13人のうち13人が声をあげていくことで環境は変わっていきます。

RAINBOW CROSSING TOKYO


最後に、藥師さんがFacebookで投稿した一文を載せたいと思います。

5年前、「どうせ働けないから死のうと思う」とトランスジェンダーの先輩に言われた僕は何も言えなくて。
4年前、実際就活をすると不安を誰にも相談できずにひとり泣いた。
3年前、「LGBT就活」をはじめて今までに約500名のはたらくを応援。
2年前、構想をはじめたイベントを、いよいよリリースしました。
10月8日、やります。
学生も就活生も既卒生も社会人も、企業関係者も支援者も。LGBTの人もLGBTじゃない人も。
あなたに、来てほしいと思ってます。RAINBOW CROSSING TOKYO