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「我が家のこと」のように考える勉強会 台湾の民主支援を契機に

2014年09月20日 01時31分 JST | 更新 2014年11月17日 19時12分 JST

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取材・執筆・撮影:キ・ウテイ

 木曜日の午後8時になると、早稲田大学22号館の719号教室から、熱い議論の声が聞こえてくる。6月半ば、この日は30人ほどの学生が「死刑」について論じていた。誰でも自由に参加し、意見を述べ合える「拿山瑪谷(ナサン・マグー)東京勉強会」。台湾原住民である国際コミュニケーション研究科修士2年、何時宜(ハェシイ)さん(24)が立ち上げた。「我が家のことのように社会に関心を持とう」と訴えたくて、「我が家」という意味を持つ原住民の言葉を会の名にした。

 勉強会の設立は、2014年3月18日に行われた台湾ひまわり学生運動を支援する「台湾の民主主義を声援する世界一斉活動」の一環だった。3月30日に第一回の勉強会を開いて以来、週に1度の議論のテーマは、反原発や性的少数者などの社会問題から、芸術や台湾原住民の言葉まで幅広い。在日台湾人だけでなく、中国人や日本人学生の参加も多い。

 幼い頃、原住民の友達が教科書を買うお金がなくていじめられていた光景を何さんは覚えている。「みんなが仲良く生活できるようにならないか」。そんな思いを、何さんは長く抱いてきた。学生運動への支援を決めたとき、ふと思い出した「お爺さんの教え」がある。何さんの祖父は台湾ニニ八事件*の被害者で、国民党に政治犯として扱われて刑務所に送られた。しかし釈放された後、祖父は「ニニ八平和基金会」を設立した。「憎しみでは何も解決できない。もっと多くの若者に、この島でどうしたら平和的に共存できるのかを考えてもらいたい」という祖父の言葉だ。

 勉強会をスタートさせた頃は、就職活動の最中だった。準備とぶつかり、面接試験に行けなかったこともある。それでも設立にこぎつけたのは、「もっと多くの人と一緒に民主主義の価値を考えたい」という信念だった。日本で就職することが決まり、卒業した後もこの「皆で考える場所」を残していきたいと思っている。

*ニニ八事件:1947年2月28日に台湾の台北市で発生し、その後台湾全土に広がった、本省人(台湾人)と外省人(在台中国人)との大規模な抗争。国民党軍の一部は一般市民に無差別的な発砲を行い、約28,000人もの本省人が殺害・処刑されたという。

(2014年8月12日「Spork!」より転載)