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働きながら学んできた大学院での一年を振り返って

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私は福島県で働く7年目の看護師だ。昨年4月に通信制の星槎大学大学院へ入学し、大学院生として2年目を迎えた。

あっという間に1年が過ぎ、まさに「怒涛の1年」であった。仕事と学修の両立は大変だからと周囲から言われており、自分でもそれは想像していたものの、実際に1年を過ごした今思い返すと、想像以上に「忙しかった」。

しかし、学修を進めていくうちに「忙しさ」以上に、「学ぶ楽しさ」「思い描いたことが形になっていく嬉しさ」が大きなものになっていった。大学院入学当初の私では想像もできなかった1年を振り返ってみたいと思う。

昨年度に入学してから、すぐ4月に履修科目を決め、それぞれの科目の学習指導書に沿って学修を開始した。

通信教育における単位修得は、(1)事前レポート課題を提出、(2)対面式授業(スクーリング)を受講、(3)科目習得試験を受ける、(4)試験に合格すれば単位が修得できる、という形で進められていく。

文章で書くとシンプルな流れに見えるかもしれないが、何科目もこの流れに沿って進めていくことは本当に大変であった。

看護師として仕事をし、自宅に帰り、帰宅後には学生として課題が待っている。事前レポートは指定テキストの精読が必須であり、どの科目も数冊のテキストがあり、内容を把握するまでは時間を要した。授業ではディスカッションが中心となるため、この事前学習が非常に重要であった。

「教育」の分野の用語で定義が分からないものもあり、読んだテキストの内容を理解するまでが大変であった。聞きなれない用語を調べることから始めるため、時間を要し、学習の難しさを感じた。

また残業や不規則な勤務形態の仕事との両立での疲れからも、思い通りに学修が進まず、どうしたらよいのかと葛藤の日々だった。自分で選んだ「働きながら学ぶ道」であったが、うまく学習が進まない、そのジレンマで精神的にも疲労感が募り、そんな自分に嫌気がさしたこともあった。

しかし、それでも頑張ろうと思えたのは一緒に学ぶ仲間の存在が大きかったからだ。

ある日に私が悩んでいると、大学院の同期から学修内容の相談メールがきた。同期である彼女とは入学試験で初めて合い、「何かあったらメールでやりとりしよう」と言われ、アドレスを交換していたが、まさか本当にメールが来るとは思っていなかった。

お互いの進捗状況を尋ねるような内容で何度かメールのやり取りをしたのだが、それがとても自分の励みになったことを覚えている。自分だけでなく、みんなも試行錯誤しながら学修に励んでいることを知ったからだ。

彼女をはじめとして、同期生のほとんどが職場では管理職看護師や看護教員として働き、自宅では母として、妻として振る舞いながら院生として学んでいたことを後から知った。

同期生とは住んでいる地域が異なるため、どのようにコミュニケーションを図ればよいのかはじめは分からなかった。

しかし、“みんなで一緒に卒業しよう“をモットーに、普段のやり取りはSNSでグループを作ってそこで情報共有していこう、とアグレッシブに、遠いなら遠いなりのコミュニケーションの仕方を同期生が考えてくれた。

そのおかげで、悩みや学修の相談をすることができ、孤独感を味わうことなくここまで進むことができている。

看護師になってからは夜型の生活に慣れていたのだが、大学院との両立について熟考したのちに、私は朝型の学習スタイルに切り替えた。

思い返すと、看護学生時代もこのようなスタイルで勉強していた。理由は、夜間にしっかり休息をとることで、頭と体がリセットされるため学習に取り組みやすくなること、また学習の次の予定が決まっていることで、起床時から短期間で集中して学習に取り組めるからだ。

一緒に学べる仲間の存在、丁寧に指導してくれる先生方、職場の仲間、そして家族に励まされ、昨年度は10科目20単位を取得することができた。

今年度は5科目10単位の取得を目指し学修を開始している。(1年目の20単位取得は、以下に触れる「修士論文」のための研究により多くの時間をかけるためでもある)

大学院卒業に向けては、この単位修得以外にも、「修士論文」という大きな目標がある。そのため、今年度はこれに集中していきたいと思っている。研究テーマを決め、計画書を作成し、実際の研究を進め、研究内容を論文にまとめていくわけだ。

大学院では年に2回、全体での研究発表会があり、そこでは自分の研究内容について進捗を発表する。私は現在、看護師の現任教育をテーマに研究を進めており、すでに1回目の研究発表会で「研究計画」を、2回目の研究発表会で「研究進捗内容」をプレゼンテーションした。

現在も、“臨床の現場に役立つ研究をする”という指導教官の教えのもとに、看護師への教育介入を行っている最中だが、ここまで研究を進めてくる道のりには、科目の単位取得とは全く違う多くの困難があった。

そして、“研究は自分だけではできない”ということを実感している。現場の看護師への教育介入にむけて、私自身の専門的知識を積み上げていくこと、そしてどうやって教えていくかを具体的に考えていく必要があった。

私がやりたいスタイルで教育介入をするのではなく、教育を受ける側のニーズ、教育背景、勤務形態を考慮することが大事だと気づいた時に、教育をするということへの責任を改めて感じた。

それと同時に、しっかりした看護師教育ができるのだろうか、二年間でこの研究を終えられるのだろうかと不安も募った。さらに、この研究の構想を自分の言葉で文章として表現することの難しさも痛感した。

研究計画書を作成することも、研究計画を大学院や協力病院の倫理審査委員会に諮ることに慣れていない私には苦労の連続だった。様々な参考文献を調べて自分の知識を増やしながら、指導教員と何度もメールや電話でやりとりをして研究内容を修正していった。

私の中の研究への不安は、今年の3月に倫理審査の承認を得て本格的な研究開始へのゴーサインが出たことで大きく解消された。今は思い描いてきた研究が形になりつつある嬉しさと、自分が学んだことを周囲に還元していくことの楽しさとやりがいを感じている。

私が大学院に進学した理由の一つに、知識や技術を「アウトプットできるようになりたい」という思いがあった。

慢性的な看護師不足を背景に、看護師を志望する動機や背景も多様化してきた今日、知識や技術を分かりやすく表現する難しさを感じつつも、その力は仲間を増やすための重要な要素になるという思いがあったからである。

また、昔から看護は実践力、即戦力と言われてきたが、そういった力を発揮するだけでなく、どうやって発揮しているかを分かりやすく表現しながら後進を育てていくことも必要となるとも考えている。

想像を超えた怒涛の一年であったが、この一年間で経験した様々な困難は私に「学ぶこと」「教育すること」の難しさ、奥深さ、責任感を教えてくれた。

また、困難な壁があったことによって立ち止まり、内省するきっかけにもなった。その度に、解決の糸口を探り、ひとつずつ乗り越えていくことで、楽しさ、嬉しさ、やりがいを実感することができた。それぞれのステップで抱く感情は異なったものの、私にとって非常に意義深い一年であったとは間違いない。

大学院卒業まであと一年、おそらく自分で予想もできない数多くの困難にぶつかると思う。しかし、多くの人の助けになれるよう、そして仲間を増やしていけるよう、これからも努力していきたい。

(2016年6月16日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)