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コスタリカサッカー大躍進の要因 スタイルの確立と10番の決定力

2014年07月03日 22時47分 JST | 更新 2014年07月04日 17時59分 JST

リオデジャネイロでコロンビアの背番号10、ハメス・ロドリゲス(モナコ)の眩いばかりの輝きを目の当たりにした後、29日(以下現地時間)はレシフェへ移動してきた。コスタリカ対ギリシャ戦を取材するためだ。本来であれば、この試合は日本のラウンド16の大一番になるはずだったが、結果的には日本が圧倒的に押しながら攻めきれず、徹底的に守り抜いたギリシャが、ここ一番の勝負強さを見せてコートジボワールを撃破。ワールドカップ史上初の16強入りを果たし、コスタリカへの挑戦権を得た。堅守速攻のスタイルを志向する両者の顔合わせということで、鋭いカウンターの応酬が期待された。日本対コートジボワール戦のためにレシフェを訪れてから2週間。この地は相変わらず高温多湿の気候だった。29日の雨が降ったと思えば止み、晴れ間が広がるという目まぐるしい空模様。気象条件を考えると、暑さに慣れているコスタリカが有利かと思われた。

だが、試合が始まってみると、彼らにはウルグアイ、イタリア、イングランドと同居する「死の組」を1位通過した勢いがない。守備面では球際の強さ、寄せの激しさが以前ほどは感じられず、ボールを奪ってからの切り替えも遅い。1トップのキャンベル(オリピアコス)、両ワイドに位置するブライアン・ルイス(PSV)、ボラーニョス(コペンハーゲン)にボールが収まる回数も著しく少なく、前半のシュート数はわずか2本(枠内ゼロ)と、絶好調時のコスタリカとはかけ離れた印象だった。対するギリシャは、日本戦でも見せた堅守をベースに、1トップのサマラス(セルティック)を起点にロングボールを放り込む手堅い戦いを今回も貫いた。ここまでナタルやフォルタレーザ、レシフェと暑い地域での試合が多かった彼らは効率のいい戦いに徹して結果を出しており、今回も同じスタイルを踏襲。前半の0-0は悪くない結果だったのではないだろうか。

迎えた後半。コスタリカはワンチャンスから今大会絶好調のブライアン・ルイスが相手の隙を突くゴールを奪い、1点をリードする。こうなるとギリシャも動かざるを得ない。サントス監督はベンチに置いていた長身FWミトログル(フラム)を投入。前線をサマラスとの2トップにしてハイボールを多用し始めた。その矢先の21分、コスタリカはセンターバックのドゥアルテ(ブルージュ)が2枚目の警告を受けて退場。10人での戦いを強いられる。数的不利に立ったことで、彼らは1点を守るべく、堅守の色合いを強めた。

ギリシャにしてみれば、日本戦と全く逆の展開になった訳だが、彼らには高さとリスタートという絶対的な武器がある。指揮官はさらに前線にゲカス(コンヤスポル)を送り込み、制空権を完全に握る。それを繰り返し続けた結果、後半ロスタイムにゲカスのシュートのこぼれ球をパパスタソプロス(ドルトムント)が蹴りこみ、延長戦に突入した。延長戦はこの時間帯に追い付いたギリシャが支配し、惜しいチャンスを何度も作った。後半8分には5対2でカウンターを繰り出す決定機もあったが、GKナバス(レバンテ)の的確な反応の前に決めきれない。コスタリカも耐えに耐えて1点を与えず、結局はPK戦決着ということになった。

そのPK戦で集中力を切らさなかったのはコスタリカの方だった。彼らは5人全員が成功。ギリシャは4人目のゲカスが失敗し、ついに勝敗は決した。死の組を1位通過したコスタリカの結束力と闘争心は本物だった。彼らは初出場の1990年イタリア大会のベスト16を上回るベスト8進出をついに果たしたのだ。コスタリカ人記者によれば、コスタリカは監督がコロコロ変わっていて継続した代表強化が出来ないのが悩みだったが、2011年9月に就任したピント監督が3年がかりで今のチームを作ったのが今回の成功に繋がっているという。5-4-1の基本布陣を採る彼らは組織的な手堅い守備をベースに、個の力の高い前線3枚を軸に点を取りに行くスタイルが確立されている。

6月2日に日本とアメリカ・タンパでテストマッチを行った際も、結果的に敗れはしたが、戦い方で手応えを掴んだようだった。その流れの初戦でウルグアイを叩いたことで、一気に波に乗った。とりわけ10番をつけるブライアン・ルイスの決定力の高さは目を引くと言っていい。そう言うラッキーボーイが出てこなければ、伏兵とみられるチームが躍進することは出来ない。今回のコスタリカは守備力、カウンターの破壊力、傑出した得点力を持つタレントとあらゆる好条件が揃って、躍進を果たしたのだ。

彼らの次なる相手は5日にサルヴァドールで対戦するオランダ。前回、準優勝の強豪は非常に難敵だ。疲労蓄積も気になるだけに、いかにリカバーしてフレッシュな状態に戻すかが1つのポイントとなる。コスタリカ旋風が何処まで続くかに注目しつつ、今後の戦いを見ていきたい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

(2014年6月30日「元川悦子コラム」より転載)

ワールドカップ サポーター美女