イギリス系南アフリカ人の遠泳家ルイス・ピュー氏は、米マサチューセッツ州のマーサズ・ヴィニヤード島の周り100キロメートル(62マイル)の距離を泳ぎ切り、島を一周した初の人物となりました。
UPIやThe Guardianなどが報じています。この挑戦は12日間にわたり、水温8度という厳しい条件の中で行われ、サメの保護と正しい理解を促すために実施されました。
ピュー氏がこの島を選んだ背景には、映画『ジョーズ』の公開50周年という節目がありました。同映画は、架空のホオジロザメが人間を襲うというストーリーで、公開以降、サメに対する恐怖心を大きく植え付けた作品とされています。ピュー氏はPBS NEWSなどの取材に「この50年間、私たちはサメを恐れ、攻撃してきましたが、今こそ和解すべき時です」と語り、「サメは冷酷な殺し屋でも悪役でもなく、海の生態系にとって極めて重要な存在です」と訴えました。
今回の挑戦は、かつてエベレストの氷河近くや火山、カバやワニ、ホッキョクグマとともに泳ぐなど数々の遠泳を成功させてきた経験を持つピュー氏にとっても、「これまでで最も過酷な泳ぎのひとつ」だったといいます。寒さ、風、波、そして長距離の中で、常に暗く深い海の底に何がいるかを考えながら泳ぎ続ける精神的負担は計り知れなかったそうです。
また、ノーイースター(北東の嵐)による悪天候の影響で、一部の日にはわずか約800メートル(半マイル)しか進めないこともあり、時には1日で複数回泳ぐことで距離を取り戻す必要がありました。終盤はエドガータウン港の灯台前でゴールし、多くの地元住民の歓声に迎えられたピュー氏は、その足で塩キャラメルとベリーブラウニー味のアイスクリームを堪能したといいます。
スピルバーグ監督も影響懸念していた
ピュー氏は国連の海洋活動にも関わっており、「サメは年間で約1億匹も殺されている。これは持続不可能な“生態系の殺戮”であり、今こそ私たちが守るべき存在です」と強調しました。CBSによると、映画『ジョーズ』の影響について、スティーブン・スピルバーグ監督や原作者のピーター・ベンチリー氏も後にその影響力を懸念し、サメの保護活動に取り組むようになったそうです。
ピュー氏は、「サメと共に生きる未来を築くために、私たち一人ひとりがその役割を果たさなければならない」と訴え、挑戦を通じて海洋保護への関心を広く呼びかけました。