飲酒や喫煙…「悪い習慣」を断ち切るためのコツ。習慣化アプリ開発者が語る「例外を設けない」という大原則

毎日の習慣が途切れそうになったときの「対策」は?また、禁煙や禁酒を成功させるためのコツとは?アプリ「継続する技術」の開発者・戸田大介さんに聞きました。

多忙なビジネスパーソンにとって、新しく何かを習慣づけるのはとても難しいことだ。

ただ、大ヒット習慣化アプリ「継続する技術」の開発者である戸田大介さんは、「たった5分から始める」などコツさえ踏まえれば、勉強や筋トレなどの継続成功率が大きく高まるという。

後編では、毎日の習慣が途切れそうになったときの「対策」や、喫煙など「悪い習慣」をやめるときのポイントについて聞いた。

「今日は疲れたから…」と例外を設けない

――著書の『継続する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)には、習慣化三原則の3つ目として「例外を設けない」と綴られています。具体的にどうするのでしょうか?

弊社の習慣化アプリには、習慣づけたいものを何曜日に行うかを設定する項目があります。それでわかったのが、できるだけ多くの曜日を設定したほうが成功率が高いこと。極端な話、週7日毎日行うことが最も継続成功率が高いのです。

要するに、毎日やるというリズムをつくる。言い換えれば、例外の日を設けないのがベストということです。

逆に、最初のうちは週1日から始めて、少しずつ増やすというのは、意外と失敗しやすい。なぜなら、習慣が定着する前に、そのリズムが弱まってしまうからです。

人の心は、元に戻ろうという力が常に働き続けています。新しい習慣とは、言わばその作用を無理やり変えていくことです。週1だけだと、頑張っても元に戻るという繰り返しで、前に進みにくいのです。

習慣化したいものは、週7日、毎日行うことが最も継続成功率が高いのだそう
習慣化したいものは、週7日、毎日行うことが最も継続成功率が高いのだそう
Nora Carol Photography via Getty Images

――社会人は日帰り出張で疲れ切ってしまったり、遅くまで飲み会に付き合ったりといったイレギュラーなことも時折あります。「今日はいいかな…」と毎日の習慣が途切れそうな場合は、どうすればいいでしょうか?

そんな日でも、「30秒だけ筋トレをしよう」とか、どんなに小さなことでもいいので続けてみましょう。

とにかく、「ゼロにしない」というのがすごく大事です。「今日は、まぁいいや」と投げてしまうと、明日も「まぁいいや」となってしまうのが人間です。それで、あっという間に心が離れてしまいます。

実際、弊社の調査でも一日サボってしまった人の70%近くが、それを境に二度と行動しなくなることがわかっています。それに一度サボると、その後頑張って復活したとしても、結局はやがて挫折しやすくなるのです。

人間は、もともと習慣づけが苦手な生き物です。低すぎるぐらい目標を下げて、ようやく何かを続けられると考えたほうがいいです。

――スポーツ選手など活躍している著名人をロールモデルにして習慣化に取り組むのはどうなのでしょう?

その場合、最初から頑張ってしまい、途中で挫折するリスクが高いです。それに、ロールモデルがいると、かえって焦り、劣等感、自己否定感が出てしまうこともあります。

今は世界で活躍するすごい人でも、最初からそうではなかったはずです。あくまでも目標は小さいところから始めましょう。

著書「継続する技術」(左)が大ヒット中の戸田大介さん(右)
著書「継続する技術」(左)が大ヒット中の戸田大介さん(右)

日々の小さな達成感が「継続」につながる

――1日5分からのスタートで、少しずつ時間を増やす方法では、目に見える結果が現れるまで、どうしても長い期間を要します。継続しようという気持ちが萎えそうになったとき、どう対策をとるべきでしょうか?

誰もが当然ながら、何らかのいい結果を求めて習慣を身につけようとしますね。筋トレならば「引き締まった体になりたい」、「10kg減量したい」などと目標があるでしょう。

でも現実は、最初の1ヶ月は順調に目標を達成していたけれど、2ヶ月目で停滞したといったことは当たり前にあるわけです。

そこで大事なのが、今日行動できたこと、わずかな進歩があったことに、小さな達成感を得ること。日々の小さな達成感が自己肯定感を小さく上げ、継続につながっていくからです。

例えば、今日は30分勉強できたとします。「1時間頑張ろう」と思っていた人なら「30分しかできなかった」とがっかりします。でも、「5分だけできればOK」と思っていた人なら「うわっ、30分もできた」と喜びますよね。

要するに、自分が思っている期待値を超えると、達成感や自己肯定感を得るわけです。であれば、自分の期待値をはじめから下げておけばいいという話になります。それは、割と簡単にできますよね。それだけで日々の達成感とか自己肯定感を保てるのです。

――最終目標だけでなく、中期的な目標も立てることはメリットがあるでしょうか。それともデメリットになりかねないのでしょうか?

そこは、はっきり白黒つけるのは難しいのですが、中期目標を立てること自体はいいことです。

ただ、その目標が頭の中に居座って固執しすぎると、逆効果になるパターンが多いでしょう。「現状、ここまでしか進んでいない。目標から逆算すると現時点でここまで達成していなければいけないのに……」という心理に陥りやすいからです。

ですから目標というのは、参考程度にとどめておき、到達すべき「距離」ではなく、進むべき「方向」として考えておくことをおすすめします。

一気に高い目標を掲げるより、日々コツコツと小さな目標を達成するほうが、結果的にゴールに早く到達するもの
一気に高い目標を掲げるより、日々コツコツと小さな目標を達成するほうが、結果的にゴールに早く到達するもの
mkmojostock via Getty Images

タバコや酒…悪い習慣をやめるコツとは?

――良い習慣を身につけるのとは逆に、悪い習慣をやめるのに苦労する人も多いです。これも何か秘訣はあるでしょうか?

実は、何かを続けるよりも、何かをやめるほうが成功率は低いです。例えばファスティングは、一時的に食べるのをやめることですが、こうしたことは失敗しやすいのです。

1つの問題は、最初の時点でハードルを高く掲げてしまうことです。例えば禁煙であれば、それまで1日に10本吸っていたのを、いきなり0本にしがちです。そして、「何かを完全ストップする」という目標だと、1日中その誘惑に耐え続けることになります。これでは達成は難しいです。

まず言えるのは、初日で完全にやめるのではなく、段階的に減らしていくことが大事。もう1つのポイントは、「何かをしない」ではなく、「代わりに何かをする」と、行動を置き換えることです。

「タバコを吸わない」ではなく、タバコを吸う代わりにガムを噛む。「お菓子をやめる」ではなく、まずは小皿に取り分けて少し食べ、足りない分はヘルシーな食べ物に置き換えるといった具合です。似た満足を得られる何かと差し替えるのが、成功のコツです。

また、最終的に完全にやめるにしても、そこに至るまでは日数をかけ、少しずつやめていくよう心がけましょう。

これまでお話したとおり、良い習慣づけも、悪い習慣からの脱出も、コツさえおさえておけば難しくはありません。ぜひ、今日から実践してみてください。

(取材・執筆/鈴木拓也、編集/荘司結有)

【PROFILE】戸田大介さん

山形県尾花沢市出身。新卒で電通アイソバー(現・電通デジタル)に入社し、データアナリストとして勤務した後、bondavi 株式会社を創業。2016年に習慣化アプリ「継続する技術」、2018年に集中アプリ『集中』をリリース。収入のほぼ全てをユーザー任意の寄付とし、しばらくは支出超過に苦しむも、徐々に口コミで評判が広まり、『継続する技術』は国内 No.1 習慣化アプリとなり200万ダウンロード、『集中』は自社最高の300万ダウンロードを記録し、2023年に「寄付のみで黒字化」を達成。著書に『継続する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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