冷凍した食材の旨みを残したまま、短時間でムラなく解凍できる「解凍プレート」が注目を集めている。
電子レンジを使用した解凍では、食材の旨みや栄養成分が水分と一緒に溶け出したり、凍ったままの部分が残ったりすることがある。一方で、自然解凍を行うと解凍までに時間がかかる。解凍プレートは、この両者のデメリットを解消できるアイテムだ。
ニトリは、この解凍プレートとまな板をひとつにまとめて、さらに包丁のシャープナーも追加した「解凍プレートシャープナー付きまな板」を開発した。従来の解凍プレートと同じ価格帯で、さらに収納スペースを取らないことから販売開始半年で約21万個と大ヒットを記録中だ。
開発に携わったニトリ商品部の開発担当者に、開発秘話や機能面の特徴について話を聞くとともに、実際に商品を使ってみた。

省スペース・多機能化の製品開発
これまでも多機能なキッチン用品の開発に力を入れてきたニトリ。2024年4月に販売した「1台10役スライサーセット」がその代表例だ。サラダスピナーやおろし器など10個の機能が備わったボウル型のスライサーセットは、スペースを取らず色々な機能を使えることが好評で約22万個以上の販売実績を上げた。
省スペース・多機能をコンセプトとした製品開発に注力するニトリが注目したのが、キッチンで使用頻度の高いまな板だった。
「社内会議でスライサーをつけたり、まな板の材質をアップグレードすることを検討しました。ただ、お客様の購入しやすい価格で実現することが難しくて。社内でアンケートを取った結果、『解凍プレートやシャープナーをつけて欲しい』という声が集まりました。コストの基準もクリアできそうだったため、開発工程へと進みました」
まな板と解凍プレートがセットになっていることのメリットは大きい。ラップで包んだ生肉などの冷凍食材を解凍プレートに置き、その間に洗濯などの家事を進めると、家事がひと段落した時には食材が解凍されている。解凍プレートをひっくり返すとスムーズに調理を始めることも可能だ。洗い物も増えないため、家事の負担も減る。

一方で、多機能化によるデメリットもある。まな板に解凍プレートをつける場合、食材を解凍している時間は食材を切ることができない。そのことに対する懸念はなかったのだろうか。
「開発の初期段階では反対意見もありました。ただ、ニトリでは『ライフテスト』と呼ばれる商品レビューを行っています。他社の製品も含めて社員に使用してもらい、意見を聞く取り組みです。試験を実施した結果、『別々に使用したい』という意見はあったものの、そこまでは多くなかったのです」
こうして1年かけて解凍プレートとシャープナーつきのまな板を開発すると、試験販売へのステップへと進んだ。試験販売では、特定の店舗で販売し、企画台数に達するかどうかを判断する。販売目標をクリアするのは試験販売する製品のうち約半分だという。
「まな板などの『商品カテゴリー』の平均売上金額や台数などの基準に対する結果を見ます。開発段階では『ご好評いただけるだろう』と判断した商品が基準に達しなかったり、その逆に意外な商品が大幅に売れることもあります。販売してみないとわからないことは多いですね」
今回は関東を中心とした約30店舗で試験販売を実施し、目標台数を大幅に上回った。こうして「解凍プレートシャープナー付きまな板」は2024年9月より全国のニトリの店頭に並ぶことになった。
実際に使ってみると…鮭が20分で解凍できた!
「解凍プレートシャープナー付きまな板」は、熱伝導率が高いアルミニウム製。食材の熱を素早く吸収することで、冷凍された肉や魚を置くだけで効率よく解凍できる。解凍だけでなく、お弁当や炊きたてご飯の粗熱取りにも活用できる。
また、包丁の切れ味が気になったときにサッと研げるシャープナーや、薬味づくりに便利なすりおろし部もついている。プレートの裏側はまな板として使用でき、一台四役の多機能アイテムだ。

サイズはM(1,490円)とL(1,990円)の2種類をラインナップ。今回はMサイズのプレートを購入して、実際に鮭の切り身を解凍してみた。

凍った鮭を載せると、プレートの端の方までひんやりと冷たくなった。プレート全体で冷気を吸収していることがよくわかる。解凍プレートに乗せた鮭は、約10分ほどで片面が十分に解凍できた。

裏返してさらに約7 、8分。合計20分もかからず、カチカチだった鮭はほぼ完全に解凍。しかも、ドリップはほぼ出ず、ムラなく圴一に解凍できるのも嬉しい。

冷凍食材を使うはずだったのに、前日のうちに冷蔵庫に移すのを忘れていた!ということは往々にしてあることだが、解凍プレートを使えば、自然解凍より短時間で、食材の旨みを逃すことなく解凍できるだろう。
テレビで紹介⇒全国の店舗で売り切れ続出
「解凍プレートシャープナー付きまな板」は、販売を開始した1ヶ月後にはヒット商品に。2024年10月に地上波のテレビ番組で紹介されると、SNSでも話題になり、全国の店舗から在庫が一気になくなったという。
「在庫がなくなり入手困難になったことがXやInstagramで話題になり、品薄の状態が続きました。特に20代から40代の若い世代の方々に支持をいただきました。想定の2倍以上売れまして、現在も増産を続けています」
ニトリ公式オンラインストアでは星4.4の高評価を獲得。「厚みが3センチくらいの冷凍の鮭を置いてみたら、短時間でしっかり解凍できました」「とにかく万能の一言!」「お値段以上だと思います」と絶賛するレビューも相次いでいる。

また、「解凍プレートシャープナー付きまな板」の販売をきっかけに、解凍プレートの認知も拡大したという。2023年頃から話題を集めていた解凍プレートは、家事や調理に対する興味が強いファミリー層を中心に支持を集めていた。
しかし、商品自体を知らない人や購入意欲の薄い人も多く、「解凍プレート」の市場も大きくはなかった。まな板と統合することで、店舗の目立つコーナーに並び、「解凍プレート」という調理グッズを知る人が増えたのだ。
担当者は「『調理時間を少なくしたい』というニーズは強いのだと思います」と分析する。
現在は、購入者の意見を反映して別商品である「解凍プレート」も発売中。10分間で約6倍の速さで解凍することができるという。
「現行の商品に関しても改善を考えています。どのような改善をしていくのか具体的に詰めていきますが、お客様にとって安くて便利なものを作りたいですね」
ライフスタイルを豊かにする商品を購入しやすい価格で開発するニトリ。今後の新商品の開発にも期待したい。
(取材・記事/中 たんぺい、編集・レビュー 荘司結有)