2014年 IPO総括  一般的な発行体イメージは申請期売上50億円、経常利益5億円未満 予想PER20倍 株式時価総額50億円。

今回は2014年IPOマーケットの総括をしてみたいと思います。

新年明けましておめでとうございます。

旧年中は大変お世話になりました。

本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

今回は2014年IPOマーケットの総括をしてみたいと思います。

先ずは総括表ですが、細かいので拡大していただければと思います。

【新規上場社数は6年連続増加、昨年はマザーズが圧倒的。6年ぶりにセントレックス銘柄も】

過去10年のIPO社数とその年の大納会の日経平均終値をグラフにしました。

先ずは2007年の世界的なサブプライム問題表面化より、日経平均とIPO社数は下げに転じ、2008年のリーマンショックを機に日経平均が大きく下がると共に 2009年にはIPO社数は19社まで落ち込みました。それ以降、日経平均は東日本大震災の影響を受けるも、IPO社数は6年連続増加しており、昨年は77社が上場しました。

このグラフを見るとIPOはやはりマーケット環境に大きく影響を受けると言ってよいでしょう。但し日経平均は昨年は過去10年で一番高かったのですが、IPO社数は150社を超える水準にまで到達していません。ここは個人的にはもうIPOが150社とか200社という時代は来ないと考えています。この話はまた別の時にしたいと思います。

そして、昨年の市場別の上場社数は、マザーズが44社と全体の半数以上となっており、最近は時にマザーズ上場の傾向が強くなっています。一方で今年は久しぶりにセントレックスにIPOがありました。 日本PCサービスという発行体で、これは2008年のゲオエステート以来の6年ぶりのIPOとなります。

【主幹事は大和が一昨年比3倍以上の実績を出し、野村を猛追】

次に主幹事証券ですが、一昨年は野村が27社と全体の半分を野村が主幹事でしたが、逆に昨年、野村は26社と1社数字を落としており、一昨年 6社だった大和が21社と3倍以上増やし、野村を猛追した構図となっています。そして一昨年6社だったSBIは昨年も5社と主幹事が出来るネット証券として着実にその存在感を高めています。

【申請期売上高50億円未満 経常利益5億円未満が全体の半数以上】

申請期の売上高見込みですが、売上高50億円未満が42社と全体の半数以上という状況です。一番売上高が小さいのはデータセクションの 4億円、一番大きいのはリクルートホールディングスの1兆2900億円でした。

一方で経常利益ですが、赤字が2社あり、経常利益5億円未満まで43社、全体の半数以上となっています。赤字が一番大きかったのはCYBERDYNEで6億4600万円の赤字、経常利益が一番大きかったのは、やはりリクルートの1260億円でした。これを見るとIPOでは申請期売上高50億円程度、経常利益5億円未満という発行体のイメージが出来そうですね。

【予想PERは千差万別 赤字と100倍超を除いた平均は22.4倍、中央値は19.0倍】

次に公開価格(※初値ではない)による予想PERですが、これはまさに千差万別で、赤字2社を除くと一番予想PERが高かったのは、フリークアウトの6451倍。次がアキュセラインクの2195倍と、ちょっと異次元の世界でした。フリークアウトはその公開価格 2000円から初値は 7000円と更に2.5倍を付けました。一方で一番低かったのは、綿半ホールディングスの4.3倍です。但し、今回赤字の発行体2社と予想 PER100倍超の4社を除いた71社の予想PERの平均は22.4倍、中央値は19倍なので、まあ、IPOディスカウント後で20倍が一つの目安にはなると思います。

【株式時価総額は1兆8000億円から6億円まで。セントレックスは3億円からIPO可能】

公開価格で計算した株式時価総額の分布ですが、50億円未満で27社、100億円未満で46社と全体の 60%になります。更にその100億円未満を10億円単位で分解しましたが、70億円未満で41社なので、やはり半数を超えています。一番小さいのは日本PCサービスの6億 1900万円。マザーズの上場基準が10億円で、セントレックスの上場基準が3億円以上なので、そのためのセントレックス上場だと思われます。一方で 1000億円以上の上場もリクルートホールディングス1兆7994億円、西武ホールディングス5474億円、ジャパンディスプレイ5412億円、すかいらーく3378億円、日立マクセル1104億円と5社あり、昨年はそれなりのラージキャップ案件あった年だとも言えます。

【ファイナンス総額はジャパンディスプレイの3347億円が最大。オファリングレシオは時価総額の4分の1が目安。】

公募・売出を含むファイナンス総額(OAは含まず)ですが、10億円未満が25社、20億円未満で47社とこれもやはり全体の60%になります。一番小さいのは日本PCサービスの1億3800万円(公募1億1000万円、売出 2800万円)で、マザーズでは ビーロットの2億3100万円(公募1億8500万円、売出4600万円)になります。一方で一番大きいのは、ジャパンディスプレイの3347億円でした。

次にファイナンス総額と同じくらい重要で、時価総額の何%をマーケットに放出するかという指標のオファリングレシオ「(公募数+売出数)÷発行済株式総数(公募含む)」ですが、これは、平均が26.1%、中央値が 23.4%でした。要はIPO時に約4分の1のファイナンスを行っているということになります。これはマーケット環境に関係なく、従来からこの程度の比率になっています。今回一番小さいのは、7.8%の西武ホールディングスでした。想定発行価格が低すぎると難色を示し、サーベラスが売出を避けたのは記憶に新しいところです。一番大きかったのは、テクノプロホールディングスの84.2%です、しかも公募はなく、すべて売出でした。その結果、やはりマーケットでは消化できず、公開価格1950円に対し、初値は1852円と公募割れとなってしまいました。

まだまだ個別に書きたい部分もありますが、それはまた改めて行いたいと思います。

今年もIPOが活況であります様に、祈念したいと思います。

本年もよろしくお願い申し上げます。

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