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ドラマ「明日ママ」初回を夫と一緒に視聴したアッキーこと昭恵夫人が「とても心を痛めています」

2014年02月01日 16時43分 JST | 更新 2014年04月02日 18時12分 JST

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児童養護施設「広尾フレンズ」で子どもを抱く昭恵夫人(プライバシー保護のため修正)

何人も子どもを抱えてのしのし歩いたり、膝の上に抱き上げたり、スキンシップに励む。

子どもたちが過剰なほどのスキンシップを求めてくるのも、本当の親と直に接することができないことの裏返し。

そのことを身を持って知る彼女は、子どもたちの心が、虐待やネグレクトなどを経て、とても傷つきやすいことやちょっとしたことがきっかけになって、自傷行為などに走りかねないことを肌で感じている。

「児童養護施設の職員はだいたい4年程度で退職してしまうので、その都度、子どもたちの気持ちが不安定になってしまうことも心配...」

施設側によるとそんな会話をしょっちゅう交わすという。

昨年の夏は、青森県の新郷村で「広尾フレンズ」の子どもたち25人が農家にホームスステイした際、昭恵さんも同行している。記念の植樹は地元でニュースにもなっている。

首相夫人がヤマツツジ植樹/新郷(東奥日報 2013年8月8日)


新郷村は7日、村と交流がある児童養護施設を運営する社会福祉法人「福田(ふくでん)会」(東京)の太田孝昭理事長や、同法人後援会長で安倍晋三首相夫人の昭恵さんらの歓迎会を美郷館で開いた。安倍さんらは、入所児童らの成長や、村と同法人のさらなる交流を願って、村役場前にヤマツツジを植樹した。 同施設の児童・生徒は昨年夏、村に初めて約2週間滞在した。今年も1日から8日間の日程で、4歳から16歳までの25人がホームステイなどしながら村民と交流を重ねている。

出典:東奥日報

そんなふうに子どもたちと直に接しながら彼女は児童養護施設の子どもたちのことを案じてきた。

児童養護施設を舞台にした日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」が放送されると聞き、児童養護施設の関係者に不安が広がっていることを知った昭恵さんは「広尾フレンズ」に問い合わせてきた。

「心配ですね。いつ放送するんですか?」

「初回は1月15日水曜日の午後10時からです」

「見ます」

施設側が放送する日時を伝えると、「明日ママ」の初回放送をリアルタイムで夫の安倍晋三首相と2人で見たという。

初回の放送は、児童養護施設の子どもたちをペットショップの犬扱いし、児童虐待といえるシーンや「赤ちゃんポスト」に捨てられていた子どもが「ポスト」、「コインロッカー」に捨てられた子どもが「ロッカー」などのあだ名で登場する。

児童養護施設の子どもたちが「親に捨てられたんだ」という会話も出てきて、全国の児童養護施設の関係者を驚愕させる放送だった。

児童養護施設をめぐって、実態と大きく違うような誇張が多く、施設の子どもたちが学校でいじめられかねない。

施設の子どもたちがどこかで卑屈な思いをしかねない。関係者は一様にそんな不安を抱いた。

「自分たちは親に捨てられた存在」

「自分たちはペットショップの犬と同じ」

虐待などのトラウマを抱える子どもたちがドラマを見たら、フラッシュバックで自傷行為が繰り返されたらどうしよう・・・。

危機感を強めた「広尾フレンズ」の土屋學施設長は、これは問題だらけの放送だと感じ、施設の子どもが通う地元の小中学校とも連絡を取ったり、児童養護施設の団体である全国児童養護施設協議会(全養協)などと連絡を取ったりして対応策に追われた。

そんな矢先、後援会長である昭恵夫人からも連絡が来た。

「今回の件ではとても心を痛めています。私たちにできることがあれば何でもおっしゃってください。」

昭恵さん本人からそんな申し出を受けて、土屋施設長は「とてもありがたいと感じました」と言う。

土屋さんの施設長室の壁には、昭恵さんが子どもを抱きかかえている写真が飾られている。それが冒頭の写真だ。掲載した写真では子どもの顔をプライバシーの保護のために修正してある。

写真の隣には、安倍晋三首相の直筆の色紙も飾られている。

大きな筆文字で「夢」と書かれ、続いて「為社会福祉法人福田会 内閣総理大臣 安倍晋三」とある。

土屋施設長によると、昭恵さんは後援会長として「広尾フレンズ」が主催して近隣の大使館などとの交流イベントなどの行事にはほぼ欠かさず顔を出しているという。

そうした時も挨拶は周囲が予め用意した言葉ではなく、毎回、必ず自分で考えた言葉で思いのこもった挨拶するという。

「必ずご自分が考えた文章で挨拶するんです。本当に思いがこもった言葉ばかりで・・・」(土屋施設長)

昨年11月に「後援会長」に就任した際に「広尾フレンズ」のパンフレットに昭恵さんが載せた文章をこんなふうだった。

私は、7年ほど前に初めて福田会の児童養護施設に伺う機会がありました。

両親と離れて暮らさなければならない子どもたちが、それでもたくましく生きている姿、そして、それを温かく教え導く職員の方たちの姿に感銘を受けました。

それからは、子どもたちに会いに、ときどき福田会におじゃましておりました。...(中略)... 皆様ご承知のように、福祉を取り巻く状況は大変厳しいものとなっています。他方で、未来のある子どもたちに充分な生活環境を維持するために、施設の立て替えをはじめ、様々な対応が必要となってきております。...(以下、略)...

施設の子どもたちの現状を理解し、後援会長として協力を要請している。

「福祉を取り巻く状況は大変厳しい」という言及。

施設の子どもたちの問題がなかなか世間から理解されないことも気にかけているという。

そんなふうに施設の子どもたちのことを気にかけてきた昭恵さんがドラマ「明日ママ」の描き方を見て、「心を痛めた」という。施設側に対して、自分ができることなら何でも協力したい、という姿勢を見せている。

「明日、ママがいない」の第1話が放送された後、「広尾フレンズ」では職員会議を開き、「子どもにこのドラマを見る時には職員がそばにいて一緒に見る」という方針を決めた。小学生は就寝時間に入っているが、中学生、高校生はテレビを見ても良いことになっている時間だ。

この施設の子どもたちが通う地元の小学校では、第1話の放送後に全校集会を開き、校長がドラマの描き方は間違っていて、施設の子どもたちを差別したりしないように呼びかけたという。

たった1度のドラマの放送で全国各地で児童養護施設や小学校などが対応に追われている。

「明日ママ」をめぐる議論では、児童養護施設の実態をよく知らない人から「それならドラマを見なければ良いじゃないか」という声も聞かれるが、子どもたちが学校などでドラマに関して他の子どもからからかわれた時に、そのことを自覚できない場合にダメージが深刻になる恐れがある。そこで施設では、どういうドラマなのかを子どもたちが理解する必要があると慎重に配慮しながら見せているという。

土屋學施設長も、第1話の放送を見た施設の困惑を以下のように語る。

うちの施設の子どもは、ほぼ全員に親がいるんです。

ほとんどの子どもは自分が「親に捨てられた」などとは思っていません。

虐待されていた子どもでさえも親からの電話を楽しみにしていたりします。

親の側のいろいろな事情、なかには子どもの側からみれば理不尽な事情もあって一緒に住むことができないのですが、それでも子どもたちはけなげに「お母さんは病院に入院しているから」などと言うのです。

それを一律に捨てられた、とばっさり表現するこのドラマには見た子どもたちも「ひどい」と怒っています。

土屋施設長が心配したのは、ドラマによって施設の子どもたちが学校でからかわれたりすることで「フラッシュバック」を起してしまうことだった、という。

精神カウンセリングの専門家に聞いた話として土屋さんが説明してくれた言葉は印象に残った。

幼い頃に虐待やネグレクトなどのつらい体験をした子どもたちの心というのは、コップに並々水を注いで、いっぱいになっている状態だ。

表面張力で水が今にもこぼれ落ちる寸前と同じだ。

これに「最後の一滴」を加えることで、コップから水は一気に溢れ出てしまう。

溢れ出た状態が「フラッシュバック」だという。

リストカットなどの自傷行為や過呼吸症候群ばかりでなく、暴れ出して他の子どもに暴行するというような場合もある。

ある子どもが突然キレて暴れ出しても、児童養護施設の関係者ならば「最後の一滴」によってフラッシュバックが起きたからだと理解できるが、事情を知らない人がみれば、乱暴な子どもだ、というふうにだけ受け止められてしまうこともある。

その「最後の一滴」は何になるか分からない。昔の記憶だったり、学校で他の子どもから投げかけられた言葉、という場合もある。

もちろんテレビも...。

今回のドラマが、その「最後の一滴」になりうる、と施設側では感じている。

実際に、全国児童養護施設協議会が第1回放送の後で行った緊急調査では、ドラマを見てフラッシュバックを起して自傷行為に走ったケースが複数報告されている。

いったんフラッシュバックが始まると、何度も繰り返す。

リストカットする子どもは「苦しい」から、そういう行為を繰り返す。

「切ると痛みで苦しさがまぎれ、気持ちがスーっとなる」。

リストカットした子どもはそう話す。

本人に死ぬつもりがなくても深く切り過ぎることもある。

だからドラマの影響で子どもたちが自殺することを関係者はみな本気で心配している、と土屋施設長らは口を揃える。

この心配は施設の子どもたちをよく知る昭恵夫人にも共有されている。

今回の日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」の児童養護施設についての極端で誤解を招く描き方については、主管官庁である厚労省の担当者も怒っているという。

厚労省は、児童養護施設について、かつての大人数で暮らす方式(大舎制と呼ばれる)からできるだけ細やかに目が届くような少人数で暮らす方式(小舎制)へ移行するように奨励している。政策的にも小規模な施設が推進されるなかで、少人数の子どもたちを以前よりも職員の数を増やしてきめ細かいケアをしていこうという小規模な児童養護施設。そのひとつである「グループホーム」型の児童養護施設がドラマに登場した。そこで描かれたような暗くて暴力的なイメージだと誤解が広がってしまうことを懸念している。

児童養護施設や里親など、実の親が育てられない子どもを社会全体で養護する「社会的養護」に詳しい政治家たちも与野党を問わずに動き出している。

「明日ママ」の問題はいずれ国会でも審議されることになりそうだ。

昭恵夫人は今回、個人的には「明日ママ」で子どもが傷つくのではという心配を施設側と共有しながらも、首相夫人という立場を考慮して表で発言することは控えているようだ。

だが、「とても心を痛めている」という言葉に彼女なりの「思い」を読み取ることができる。

今のところ昭恵夫人は「広尾フレンズ」に対し、補佐官を通じて力になってくれそうな各界の人物を紹介するなどの協力にとどまっている。

首相夫人という「伝家の宝刀」に頼ることには遠慮を感じているという土屋施設長は次のように語っている。

「ポスト」や「ロッカー」などの「あだ名」については、児童養護施設を知らない人から見れば、たかが「あだ名」じゃないか、と思う人が多いかもしれません。

でも、児童養護施設ではどこでも、子どもたちがどういう経緯でここにやってきたのか、ということを子どもの前で語ることは絶対にありあせん。ドラマでは子どもたちが「ポストに捨てられていた」「コインロッカーに捨てられていた」と会話していますが、そんなことは絶対に許しません。入所理由を平気でばらし、子ども同士で話題にするなんて・・・絶対にありえないし、そういう「あだ名」でドラマが進行すること自体が一種の虐待だと思います。これだけは絶対に改善してもらいたい。

「広尾フレンズ」も入っている全国児童養護施設協議会に対して、日本テレビは番組内容の見直しを約束したと報道されている。

その見直しが十分なものになるのかどうか。

多くの「関係者」が推移を見守っている。

その「関係者」の一人には、アッキーも入っている。

その隣では夫も一緒にドラマを見ているかもしれない。

(2014年2月1日「Yahoo!個人」より転載)