本当にしょっぱくなる…!減塩食がおいしくなる魔法の食器「エレキソルト」第二弾はカップで。味はどう?試してみた【発表会レビュー】

販売後7ヶ月で予想の7倍の売上を記録し、国内外で数々の賞を受賞するエレキソルト。第二弾は美容機器メーカーのヤーマンが開発に参加し、スプーンに加え、より多様なニーズに応えるコップ型も登場した。

医療の発展などにより、社会全体の健康意識が向上している。

 一方、医療が介入する前の「ヘルスケア」領域においても、健康な日々の暮らしを支えるテクノロジーが続々と登場している。

 そうした中、キリンホールディングスは9月9日、減塩サポート食器「エレキソルト」第二弾の販売を開始。独自開発した波形の電流を流すことで、食事の際に使用するだけで旨味や塩味を増強する「エレキソルト」は2024年5月の発売以来、国内外で数々の賞を受賞するなど高い評価を受けてきた。

 今回、新作発表会で新製品を実際に試し、同社が注力するヘルスケア事業の意義と今後の展望などについて聞いた。

WHO摂取量の2倍?日本人の塩分過多に向き合う一手

今回、エレキソルトシリーズの第二弾として発表されたのは「エレキソルトカップ(ES-B001)」と「エレキソルトスプーン(ES-S002)」。電流を流すことで味を変化させる技術「電気味覚」の搭載により、本製品を使用するだけで、通常の食事よりも旨味や塩味を増強して感じられるという。

塩分の過剰摂取は世界的な健康課題となっており、特に醤油や塩を多用する日本人の食事は塩分過多に偏りやすい。また、厚生労働省によれば、日本人の1日の食塩摂取量はWHOが推奨する5.0g(未満)の約2倍に上る。

ホールディングスヘルスサイエンス事業部の佐藤愛さん
ホールディングスヘルスサイエンス事業部の佐藤愛さん
キリンホールディングス

キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業部の佐藤愛さんは、本製品の開発背景について「減塩に関して『大切だと分かっていても意識した食事を続けにくい』や『いきなり食べ慣れたものを大きく薄味に変えようとすると満足感や食欲低下につながる』といった生活者の方々の声が聞こえてくる中で、『もの足りなさ』を補いつつ、社会課題の解決に貢献する製品として開発されました」と説明。明治大学の宮下芳明さんをはじめとした産学連携で電流波形を開発し、旨味や塩味の基となるイオンの動きをコントロールすることに成功したという。

エレキソルトの第一弾商品「エレキソルトスプーン(ES-S001)」が発売されたのは、2024年5月。販売開始から約7ヶ月で予定台数の7倍を売り上げ、製造が追いつかないほどの注文が殺到したという。

さらに飲食店や自治体、医療機関とのコラボレーションなども積極的に実施し、スプーンで減塩という価値提供を広めてきたほか、現在は世界最大級の展示会「CES Innovation Awards 2025」をはじめとした国内外のアワードにて、複数の受賞経歴を誇る。さらに多くの生活者から「食事が楽しくなった」「美味しく感じられた」「大事な方への健康を思うギフトとして喜んでもらえた」という声が寄せられたという。

しかし、製品を支持する声が多い一方で「スプーン以外の形態も欲しい」「食洗機で洗いたい」「使い方が難しい」「先端が大きい」などの声も寄せられ、第二弾の開発が始動した。

ヤーマンとキリンの技術が集約した「エレキソルト」を実際に試してみた

エレキソルトと減塩食(イメージ画像)
エレキソルトと減塩食(イメージ画像)
キリンホールディングス

第二弾の「エレキソルトスプーン(ES-S002)」では、第一弾の製品に寄せられた声を元に (1)電流構造の改良(2)先端の小型化(3)食洗機での洗浄に対応(4)ボタン電池の採用 が実現した。

また「エレキソルトカップ(ES-B001)」は「スプーン以外の形態もほしい」という声に応えるため、(1)どこから飲んでも安定した電流が流れる電極構造(2)高い耐熱性と耐久性(3)洗浄しやすいカップ構造(4)ボタン電池の採用(5)安全性を配慮した機器デザイン が特徴だ。

第二弾の開発には美容健康機器や化粧品、先端電子機器などを開発・製造・販売する「ヤーマン」が参画した。ヤーマンは開発にあたり、美容機器の開発で培った小型設計技術や防水設計技術、電気設計回路を応用したほか、美しさを残しつつ意識せずとも正しく使いやすいデザインを考案するなど、多くの技術を動員したという。

ヤーマン開発本部開発企画部の小島英明さんは「企業スローガンの一部である『先端テクノロジーと常識を変えるアイデアで、美しくなる。夢や驚きをとどけていく』という思いのもと、本プロジェクトを通じて大きな社会課題である減塩課題の解決に寄与したく、開発に参加させていただきました」と本事業に寄せる思いを語った。

ヤーマン開発本部開発企画部の小島英明さん
ヤーマン開発本部開発企画部の小島英明さん
キリンホールディングス

発表会では、塩分濃度0.5%〜0.6%に薄めたミネストローネが提供され、実際に「エレキソルトカップ(ES-B001)」を使用してその効果を体験した。

 使用方法は簡単で、本体のスイッチを長押しして電源を入れたら、同じスイッチをもう一度押して強度レベル(3段階)を調節する。持ち手の電極パネルに手で触れながらカップに口をつけるだけだ。

まずそのままの状態でミネストローネを口に含んでみると、減塩されていることもあり、確かに薄味の優しい味わいだ。続いて強度を1にしてみると、口に含んだ瞬間に僅かに塩味が増しているのを確認した。

 続いて強度をもう1つ上げてみると、先ほどまで「薄い」と感じていた味わいが「ちょっとしょっぱいかも」と思うほどの鮮明な塩味が感じられた。思わず隣席していた記者と目を見合わせ、「もっとしょっぱくなるんですかね?」と強度を最大まで上げて口に含んでみると、「これだけだと喉が乾きそう」「パンが欲しい」と思うほどの強い塩味が感じられた。

普段の感覚では味が薄いと感じるものにも、これだけの塩分が含まれているのかと驚きつつ、スイッチを切って再びコップに口をつけると、最初の優しい味わいに戻っており、思わず舌を疑った。周囲で共に体験していた発表会の参加者たちも、揃って驚きの表情を浮かべ、目を丸くしていた。

エレキソルト
エレキソルト
キリンホールディングス

体験を終えると、佐藤さんが再び登壇し「効果を体験していただけたようで幸いです」と笑みを浮かべた。さらに「2026年からはアジア圏での販売開始を目指します。長期的にはカトラリーのラインアップの拡充と旨味や塩味以外を対象にした電気味覚の技術開発を視野に入れております」と今後の展望を語った。

 日本に限らず、アジア圏には塩分を多く含む食文化を持つ国が多いため、そのニーズは今後も大きくなっていきそうだ。「エレキソルトスプーン(ES-S002)」と「エレキソルトカップ(ES-B001)」は公式オンラインストアで販売が開始されており、一部量販店の店頭やECサイトでも11月以降、販売を開始する予定だ。

昨年度まで、ずっと赤字。ヘルスサイエンス事業の存在意義

キリンホールディングスヘルスサイエンス事業本部長の吉村透留さん
キリンホールディングスヘルスサイエンス事業本部長の吉村透留さん
キリンホールディングス

発表会にはキリンホールディングス ヘルスサイエンス事業本部長の吉村透留さんも登壇し、同事業領域におけるこれまでの歩みと展望などについて紹介した。

同社のヘルスサイエンス事業は2019年に本格的に展開され、2025年度から黒字化が見込まれている。高齢化が進む現代において、ヘルスケアを通じた生活者のサポートが必須となる時代を見据えての事業開始であったことがうかがえる。また、2035年度までに500億円の事業利益の創出を目指すといい、吉村さんは「グループ全体を支えるエンジンを目指して、中長期的な成長を目指します」と意気込みを語った。

ヘルスサイエンス事業の中枢を担うのは「土台の健康づくり」だ。食事や運動、休息、免疫ケアの推進を通じて、人間が元来持っている力を高め、個別の健康課題にフォーカスした独自のアプローチで生活者に寄り添うという。吉村さんは「売上規模の指標だけではなく、社会的なインパクトを高める事業を目指します」と説明した。

具体的な事業内容としては、企業のM&Aに加え、5年後、10年後の未来の社会を見据えた多様な新規事業を展開。さらに潜在的な未充足の健康課題(アンメットニーズ)の解決にも注力し、生活者に新しい健康価値を届けるという。 

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