なぜ「使用済み紙おむつ」は増加している?水分が焼却効率の低下にも

花王が紙おむつの炭素化リサイクルシステムに関する実証実験の開始を発表。自社開発の熱分解技術を搭載した炭素化装置を使用して、地域での活用を目指す。

持続可能な社会の実現を目指して、各領域で循環型ビジネスモデルの実現に向けた取り組みが進んでいる。

そうした中、花王は2021年から研究開発を進めてきた、使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステムに関する実証実験の開始を発表した。

高齢化で使用済み紙おむつの量が増加

環境省の「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」 によると、使用済み紙おむつは2030年度には年間約245万~261万トンに達し、一般廃棄物に占める割合は6.6〜7.1%に達する見込みだ。 

また、使用済み紙おむつは多くの水分を含むため、焼却効率を低下させる要因ともなっており、高齢化に伴う使用量増加とともに、ごみ処理に対応する自治体の負担となっている。

そうした課題が深刻化する中、本実験では、炭素化装置で使用済み紙おむつを半炭化物(熱分解による炭化に至る前段階で炭素を多く含む物質)に加工し、地域での活用を目指す。

炭素化リサイクルシステムの仕組み
炭素化リサイクルシステムの仕組み
花王

同社では、使用済み紙おむつを半炭化できる炭素化装置を開発しており、2021年から愛媛県西条市で実証実験を行ってきた。実験では、市内の保育施設に自社開発の炭素化装置1号機を設置し、使用済み紙おむつの体積を約20分の1にまで減らし、炭素を多く含む半炭化物の加工に成功している。

装置に搭載した熱分解技術により、燃焼に至らない低温で水分を除去し、炭素を多く含む半炭化物への加工する仕組みだ。また、加工により、殺菌・消臭が行われ衛生的に処理できるほか、発生場所で処理ができ、体積も小さくなるため回収負担が軽減するという。

新たな実証実験の舞台は、徳島県上勝町

上勝町ゼロ・ウェイストセンター
上勝町ゼロ・ウェイストセンター
花王

今回公表された実証実験の舞台は、徳島県上勝町。上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)内のごみステーションに炭素化装置2号機を設置する。

2号機の特徴は、西条市に設置した1号機と比べ、1回あたりの最大処理量が約30kgから50kgに拡大し、より多くの量を一度に処理できる点だ。また、1号機よりも少ないエネルギーでの処理が可能だ。

同社はリリース上で「使用済み紙おむつ処理の課題解決に加え、通常ごみとして焼却されCO2を排出する使用済み紙おむつを、化石燃料の代替燃料として利用することで、CO2排出量の削減を目指す」と今後の展望を説明している。

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