貝を使って器を修復した、漆芸家による作品が、Xで話題になっています。
投稿したのは、漆芸家 佐野圭亮さん(@K_Sano_Urushi)。
公開した写真には、唐津焼の器の割れてしまった部分を、貝を使った装飾技法「螺鈿(らでん)」を用いて修復した作品が写っており、螺鈿の装飾がオーロラのようにきらめいています。
佐野さんに制作の工程を尋ねたところ「まず欠損部分に下地材を練り合わせた粘土を付けて形状を復元し、漆が乾いたあと、表面の凹凸を研いで整えます。さらに漆を重ねて平滑な肌を作り、螺鈿を施せる状態に。そこから色を選んで円形に打ち抜いた貝を一つずつ漆で接着し、最後に磨き上げて光沢と輝きを与えることで完成します」と教えてくれました。
佐野さんは「金継ぎは“金”を使うから金継ぎと呼ばれますが、その本質は壊れたものに新たな景観美を与え、再び価値を芽生えさせること。その精神性において表現の方法は人の工夫次第です。伝統技法を守った上で、新しい表現を提起しました」と語ります。
最近では金継ぎ体験ができる場所も増え、急速に広まっていますが、佐野さんは「金継ぎの背景にある精神性や、漆芸によって培われた蒔絵技術のほんの一部であることが置き去りにされがちだ」と感じているそうです。
「割れた器を金で装飾してみたら、というのは大昔の人の思いつきだったのでしょう。ほんの小さなクリエイティブが、漆で創作する職人によって育まれてきた。だからこそ私は単に金を蒔くだけではなく、伝統的な技を重視しつつ能動的に表現を探求する姿勢を忘れてはならないと思いました」と続けました。
投稿には、「美しいです!」「伝統の金継ぎを螺鈿で…発想がすごい」「別世界に吸い込まれそう」などの声が寄せられています。
大きな反響に佐野さんは「日本には古い物が多くありますが、古さが価値に直結するとは限りません。価値がない陶片でも、私たちが愛情をもって新たな価値を見出したとき、人を感動させるものへ変わる可能性があります。クリエイティブのベクトルには無限の可能性がある。新たな伝統が何か、反響に耳を寄せて見極めていきたいと思います」とコメントしています。