この10年間にわたって、研究者たちは、原子を冷却・捕捉・操作する技術を改良して精密測定を行うとともに、そうした原子を量子ビット(キュービット)として用いてきた。
しかし、分子に対して同じことを行うのは、分子の電子構造がより複雑で操作しにくいため、依然として困難である。
現行の方法では、多くのレーザーを用いる複雑な手順が必要だが、捕捉された分子や分子イオンによって、量子情報処理や基本定数の精密測定に興味深い可能性が開かれるかもしれない。
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今回著者たちは、単一分子イオンの生成とコヒーレント操作を1つのレーザーだけで行う一般的なプロトコルを確立しており、これは単一分子イオンと共に捕捉された1個の原子を利用している。
この手法はCaH分子イオンを用いて実証されているが、他の分子種にも拡張できる可能性がある。著者たちは、今回の手法によって、Hなどの対称分子の捕捉と操作が可能になると予想している。
Nature545, 7653
2017年5月11日
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doi:10.1038/nature22338
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