米アップルが次期モバイル端末向けOSに組み込む予定の健康管理アプリ「ヘルスキット」の開発を、マウントサイナイなどの米主要医療機関のほか、医療情報の米オールスクリプツなどと連携して進めていることが、関係筋の話で明らかになった。
アップルが提携している他の機関は、クリーブランドクリニックとジョンズ・ホプキンズ大学。
「ヘルスキット」はモバイル端末向け次期基本ソフト(OS)「iOS8」で作動。アップルは同アプリの詳しい機能について公表していないが、9月の発売が予想されるスマートフォン(スマホ)の新機種、「iPhone(アイフォーン)6」に搭載される公算が大きい。
モバイル機器を通した健康管理サービスには韓国サムスン電子や米グーグルも関心を示しており、アップルはライバル各社との競争力強化の中心に「ヘルスキット」を据えたい考え。
血圧や体重などの健康管理上必要な情報を収集し管理するソフトウエアや医療機器は多数実用化されているが、一括して管理するアプリなどはない。
アップルは「ヘルスキット」を通して、利用者自身が健康管理に役立てると同時に、利用者の承諾を得た上で医療関係者が診療に利用し、より適切な診断や治療方針の決定ができるようにしたい考え。
フォレスター・リサーチのヘルスケアアナリスト、スキップ・スノー氏は、「アップルは健康管理データのハブ(中心拠点)を目指している」との見方を示した。
ただ、個人情報保護などをめぐる多くの規制が複雑に絡み合っているうえ、旧式のIT(情報技術)を利用したシステムも多く存在していることから、「ヘルスキット」を通した健康情報の一元管理には課題も多いとの指摘もある。
モバイル端末向けアプリ開発業者の団体、ACTのエクゼクティブ・ディレクター、モーガン・リード氏は、「参入をめざす企業は多い」とし、「『ヘルスキット』が現存するすべてのシステムを統合できるか、疑念を持っている」と述べた。
「ヘルスキット」開発をめぐる提携に関して、アップル、オールスクリプツ、マウントサイナイ、ジョンズ・ホプキンズ大学はコメントを控えている。ただクリーブランドクリニックの担当者は「ヘルスキット」開発についてアップルと協力していることを認めた。
アップルはこれまでに、スポーツ用品大手の米ナイキ、電子医療情報管理の米エピック・システムズ、米メイヨー・クリニックと提携していることを明らかにしている。