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未来志向の「海の家」からはじまる古都・鎌倉の新たな挑戦

年間2300万人が訪れる鎌倉市。IT企業や地元の自治体が取り組むインバウンド対策について取材した。
People who bathe in the sea at Yuigahama beach
People who bathe in the sea at Yuigahama beach
Tsuneo Yamashita via Getty Images

国内の観光地に足を運ぶと、訪日観光客にあふれ、まるで海外旅行に行ったかのような感覚を味わった、という人も少なくないだろう。海外から日本を訪れる旅行客(インバウンド)は年々増加傾向にある。観光庁によると、訪日外国人の数は、過去5年間で3倍以上に伸びている。

4年後の2020年には、東京オリンピックを控え、社会現象としても、経済活動の観点からも、ますます注目が集まる「インバウンド」。その千載一遇のチャンスを生かして、継続的な観光立国を実現しようと、国を筆頭に、各自治体や企業も環境整備に乗り出している。

寺社をはじめ、貴重な歴史的建造物を多く残す、東の古都・鎌倉もそのひとつだ。

ハフポスト日本版は、鎌倉市の由比ガ浜海水浴場を訪れた。鎌倉市観光協会の井手太一会長、由比ヶ浜でビーチハウス「Quick Silver (クイックシルバー)」を営む神奈川県海水浴場組合連合会の小西美恵子会長、レノボ・ジャパン株式会社代表取締役社長の留目真伸氏に、鎌倉市で取り組む地域活性のためのインバウンド対策について話を聞いた。

年間2300万人が訪れる鎌倉も、インバウンド対策は…

時代によっていくらかの盛衰はあったものの、昨年も鎌倉市全体で約2300万もの人々が訪れた、まさに関東を代表する観光都市だ。しかし、ここでも、外国人観光客に対する受け入れ環境は十分に整えられているとはいいがたい。鎌倉市観光協会の井手太一会長は語る。

「欧米系の方々を中心に、多くの外国人観光客の皆さんにお越しいただいていますが、外貨両替所もなく、クレジットカード払いに対応するお店も少ないのが現状です」

2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピックを前に、外国人観光客の受け入れ環境の整備が急務だ。これまでの遅れを取り戻すべく、課題の解決を目指すという。

「手始めに、2016年10月に鎌倉駅ビル内にある観光案内所をリニューアルします。多くのお客さまにご利用いただけるよう案内所を広く設けるとともに、スタッフも強化、英語、フランス語、スペイン語にも対応していくつもりです」

また鎌倉駅前の交番は、観光客への案内専任のスタッフが常駐する「観光交番」に生まれ変わるという。「観光交番」は、全国5〜6箇所の交番で警察署が実施する取り組みとして動き出した。鎌倉駅前交番は、そのひとつとして選ばれ、2016年10月を目処に開始される見込みだ。

井手会長は、「今後は、案内所や交番にも、他言語対応した案内用のタブレット端末を設置して利便性を高めていきます。IT企業と連携することで得られるメリットは大きい。鎌倉市でも積極的に取り込んでいきたい」と期待を寄せる。

鎌倉市によるインバウンド対策は、もうひとつの観光資源である海岸エリアにおいても、同様の取り組みが進められている。

IT企業との提携によって、鎌倉の「海の家」が進化した

鎌倉市でも人気のスポット、由比ガ浜でビーチハウス『Quick Silver (クイックシルバー)』を35年にわたって運営する小西さんも、同様の課題を感じている。

ひと足先に隣接する逗子市がビーチでの音楽の全面禁止などを条例で定めたこともあり、2014~2015年の夏には若者たちが大挙して鎌倉の海に押し寄せた。その結果、深酒による利用客のけんかや、騒音、若者が水着のまま駅前で歩くなどの問題が起き、ニュースでも大きく取り上げられた。

「風紀の乱れが度を越してしまい、問題が深刻化していく中で、私自身、遊び盛りの若者や『海の家」の経営者たちの気持ちを汲みながら、市や観光協会、商工会議所との協議を重ねてきました」

小西さんは、「お客さまを選ばない、誰もが楽しめる由比ガ浜であってほしい」という思いから、条例の施行に向けて、約1年にわたり、尽力した。

その結果、鎌倉市では、『海の家』を除くビーチでの飲酒禁止、ビーチでの音楽禁止などを定めた「鎌倉市海水浴場のマナーの向上に関する条例」が設けられた。

由比ガ浜には約20店舗の『海の家』がある。海の家以外の場所で飲酒を規制することは、店の売り上げ低下にもつながる。しかし、経営者たちによる組合では「過ごしやすいビーチを守る」ことを第一に話し合いを重ねてきたという。

「海の家は、守るべき日本独特の文化です。ご家族連れに楽しく過ごしていただくことで、子どもたちが大人になったときに、また家族と共にここを訪れてくれる。由比ガ浜はそういう場所であってほしいと思います」

条例の施行後も、ビーチのパトロールとクリーンアップを組合のメンバーで実施することで、かつての由比ガ浜の姿を取り戻したのだ。

「今では、若者ばかりではなく、家族連れや年配の方など、どなたにも過ごしやすいビーチの姿を取り戻しました。市内の観光を終えた後にこちらにいらっしゃって、夕食やお酒を楽しまれる外国人観光客の方も多いんですよ。夕方以降は、地元の方やお寺のお坊さんたちでも賑わいます。地元の方から外国人旅行者、お子さんからおじいちゃん、おばあちゃんまで、由比ガ浜が皆さんに愛されているのを目の当たりにできるのは、とてもうれしいですね」

そして、『Quick Silver』では、3年前からIT企業のレノボ・ジャパン株式会社と提携し、その一部を『Lenovo House at Quick Silver』(レノボ・ハウス)として運営し、より多くの人に「愛される」ビーチづくりに取り組んでいる。

『レノボ・ハウス』では、キャッシュレスで決済できる最先端のサービスや、旬の観光情報が得られるアプリが使えるタブレットを導入した。

「お財布の管理が難しいビーチにおいて、手ぶらで決済できるキャッシュレスサービスは、お客さまにとってとても便利だと思います。今後も、『レノボ・ハウス』ならではのサービスを提供して、『海の家』がお客さまのニーズに合わせて進化していくのを見られるのは、本当に喜ばしいことです」

いよいよ動き出す「おもてなしプラットフォーム」

最先端のIT技術を導入することで、ビーチでの利便性やインバウンド対応への向上に力を貸しているのが、留目社長率いるレノボ・ジャパン株式会社。

「実は、レノボ・ハウスを始めた当初は、マーケティング活動の一環だと考えていたんです。ただ、若者にもっとITに触れてほしい、海をもっと楽しくできるんじゃないかという思いだけでなく、利用者との結び付きや共感を抱いていただくことについては強く意識していました」

今年で3年目となるレノボ・ハウスは、キャッシュレスサービスを可能にした『Liquid Pay』、観光情報を提供する『JOYin!』を駆使して、留目社長が思い描く“未来のITの形”を提示する方向に歩み出した。

経済産業省が、インバウンド消費の拡大に向けて取り組む事業者間連携である「おもてなしプラットフォーム」。2016年10月から、本格的に日本各地の自治体で実施されるローカル実証では、鎌倉市がその舞台の1つに選ばれた。

「我々レノボ・ジャパンは、関東ローカル実証のメンバーとして参加し、この『海の家』での取り組みをきっかけに、本格的なプロジェクトをスタートさせます。今年のレノボ・ハウスは、『おもてなしプラットフォーム』の先駆けとして位置付けられているのです」

テクノロジーを活用し地域活性に貢献を

地域づくりやインバウンド対策は、鎌倉市とレノボ・ジャパンの例に限らず、自治体と企業、また観光地域づくりの舵取り役を担う法人(DMO)など、そこにかかわる者が協働して共に新たな価値を創造する「共創」が進むはずだ。留目氏は、「共創」にどんな価値を見出しているのだろうか。

「『おもてなしプラットフォーム』のコンセプトにしても、ハコをつくって終わりというものではありません。インバウンドのビジネスは、何のためにあるのか。観光ビジネスを行う事業主、観光地に暮らす地域の方々のための仕組みなんです。それをテクノロジーでお手伝いさせていただくのが、レノボ・ジャパンの役割だと考えています。もちろん、その過程で我々が得られるものも決して少なくないでしょう」

地域活性を言葉だけで終わらせないためにも、国や自治体、企業などが一体となってインバウンド対策に取り込み、観光立国への道筋を付ける「おもてなしプラットフォーム」への期待は大きい。東京オリンピック、そしてさらなる未来に向けて、それぞれが強みを生かし「共創」していくことが、成功へのカギを握りそうだ。

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