サッカーのスペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(34)が7月1日、ワールドカップ決勝トーナメントでロシアに敗退した直後に「代表での素晴らしい時間は終わった」と語り、スペイン代表からの引退を表明した。
「みんなが思い描き、僕自身も夢に見ていた結末ではなかった。僕のキャリアにとっても最も悲しい日。ほろ苦い思いをもって代表引退する」と語った。
スペインサッカー協会は公式Twitterで「感謝を伝えることしかできない。われわれに栄光を与え、トップに導いてくれた。模範的で、唯一無二の、代えが利かない存在。永遠にありがとう、アンドレス」と投稿した。
ワールドカップ後にはJ1神戸でプレーする。
ここでイニエスタとワールドカップを象徴する1シーンをふり返ってみたい。
南アフリカW杯、決勝で捧げたゴール
スペインの名門、バルセロナでの活躍は多くのサッカーファンの知るところだが、2010年のワールドカップ南アフリカ大会では、決勝のオランダ戦で才能が躍動した。
右足で決勝ゴールを決めたイニエスタは、めずらしく感情を爆発させ、ユニフォームを脱ぐパフォーマンスを披露。
肌着には「ダニ(エル)・ハルケ 永遠に僕らとともに」と書かれていた。
ハルケとは、2009年に急死した、スペインリーグ、エスパニョールの主将(当時)でイニエスタの友人、ダニエル・ハルケのこと。ワールドカップ決勝から約10カ月前、合宿中に心臓発作で亡くなった。
サッカー界全体が悲しみに包まれたが、各ユース年代でプレーしてきた仲間で、家族ぐるみの付き合いもあったイニエスタは悲嘆にくれた。
エスパニョールで急成長していたハルケは、A代表入りも間近とも言われており、イニエスタはいつかハルケとともに代表でプレーするのが夢だったという。
イニエスタは、ユニフォームを脱いだことでイエローカードを受けたものの、ワールドカップ初優勝という最高のプレゼントを亡き友へ贈った。イニエスタ自身は、大会最優秀選手にも輝いた。
親友の名が書かれたシャツを、イニエスタはエスパニョールのスタジアムに寄贈したという。
「このシャツはここにあるべきものだ。あの得点と共に、ハルケも人々の心にずっと残り続けるだろう」と彼は語った。
あれから8年。イニエスタは代表引退を決めた。
34歳のイニエスタは、代表通算133試合に出場し、13ゴールを記録。 2008年の欧州選手権(EURO)では決勝のドイツ戦でアシストを記録し、44年ぶり欧州制覇に貢献。2010年の南アフリカワールドカップで初優勝し、2012年の欧州選手権制覇にも導くなど、スペイン"無敵艦隊"の黄金時代を支えた。
あの決勝ゴールと亡き友への思いは、今もなお多くの人々の心に刻まれている。