タイ・プミポン国王のご崩御に際して、タイ当地で感じたこと

9世の時代が終わり、今、10世の時代が始まろうとしているタイです。

いつもはパッパラパーな記事から若干の真面目さを醸し出した程度の記事でとどめていましたが、今回は大真面目に書きます。つっちーです。

2016年10月13日、プミポン・アドゥンヤデート(Rama9・รัชกาลที่๙・以下、国王)が、バンコクのシリラート病院にてご崩御されました。享年88歳。

在位は1946年8月9日。70年ものあいだ、タイ王国の9番目の国王として君臨されました。崩御のニュースから1カ月近く経つ今も、タイの人々は悲しみに暮れています。

タイ人がなぜここまで国王を慕っていたのか。なぜ彼らの心の支えとなっているのか。

僕はタイに4年しか住んでいないので想像でしか書けない面もあります。しかし、タイ人に寄り添って話を聞いているうちに見えて来るものもたくさんあります。

僕の目から見たプミポン国王のことを書いてみます。

プミポン国王が国民に愛された軌跡

自らが指揮を執り、タイ王国の発展に大いに貢献された

タイがこれだけ経済発展したのは、国王がインフラを整備したおかげです。

国民が最低限の生活と自立が送れるよう、国王自ら山谷から海まで隈なく自分の足で巡り、計画を立て、数々のインフラを建てられました。

今でこそ路線バスなどでバンコクからチェンマイ間の移動も容易にできますが、昔は細い一本道のみで交通が非常に困難だったようです。

今あるインフラは国王の汗と涙の結晶のようなもので、これらがあるからこそタイは飛躍的な経済発展を遂げたのです。

政治混乱の時も、国王は間に入り和解させる中心的な立場だった

この国の政治はまだまだ民主的ではないのかもしれません。在任中、幾度と無くクーデターで政変が右往左往する中、国王はその真ん中に立ち混乱を鎮めてこられました。

慈悲深い言動、立ち振る舞い、功績は国民の心の拠り所だった

タイ国民は、国王のことを「お父さん」と慕います。何があっても国王は国民の傍に寄り添う姿勢と王としての威厳を保たれ、同時に利他の愛で国民を守ってこられました。

少なくとも70歳以下の方は、産まれてからずっと国王がいたわけです。その愛する国王が亡くなられて、タイ国民の心にはぽっかり穴が開いてしまったようです。

その気持ちの比較対象の例が思いつきませんが、言うなれば、自分の大切な人が、準備はしていたものの突然死んでしまったようなものでしょう。

書き出せばキリがありませんが、タイ人と話をしているうちに、このような見解が多々見られました。

国王は、国王として愛されただけでなく、プミポン国王という一個人として愛された部分も大きいかと思います。

タイの街並みの変化

国王が崩御され、今のタイはどうなっているのか......。気になる方も多いかと思いますが、(不謹慎かもしれませんが)意外とあまり変わりはありません。

しいて変わったことと言えば、

視界が真っ黒になった

タイ人は今も喪に服しています。服装も黒、灰、白のいずれかの地味な服装です。強制ではありません。基本的には個人の意思でその日何を着るかは決められます。

また、街中の国王の写真が少しずつ白黒の遺影のような写真に変えられつつあり、駅や街中のカラーの広告は電灯が消され、モニター広告は自粛され、代わりにご崩御に伴うメッセージが流れています。

街中にくりだしてみると、服を販売するお店は基本的に黒い服をディスプレイしていて、また一部のテレビ放送、ウェブサイトは白黒になっています。

パーティやコンサートが自粛

出典先:TNEWS HEADSHOT

上の画像は、11月のスコータイ県のロイクラトンというイベントの自粛の告知(県によっては違いが見られる)。

国王が亡くなられてから3カ月以内の催し物、パーティ、コンサートのいくつかがキャンセル。続行されるとしても、規模縮小、もしくは内容を変更して続行されることになります。

ハロウィンパーティはもちろん、ほとんどの場所で自粛に。個人的な友人を呼んでのハロウィンの「集会」は開かれた模様です。また、僕の友人のお誕生日パーティもキャンセルになり、その代わりに近しい友人だけ呼んでのお食事会に変更されました。

バーやクラブも自粛

まさかの夜12時で閉まります。ほとんどの夜の繁華街が今のところ12時で閉まるのが現状です。いつまで続くのかはお店によりますが、30~100日ほどはこのような状態が続きそうです。

次期国王について

少々不安な空気はあります。もう前々から言われてきたことで、詳しいことは不敬罪に該当する可能性もあるのであまり大きな声では言えませんが、様々な憶測がタイ人の中で飛び交っています。

このようなところでしょうか。これら以外に日常で変わったことは特に見受けられません。

これからタイにご旅行などでこられる方へ

観光するには、ちょっぴり制限があるかもしれません。

王宮、ワットポーの近辺はよく道路が閉鎖されたり、ワットポーでは連日お参りの人で混雑していたりします。

▶今8月頃のサナームルアン近辺

▶今現在のサナームルアン近郊の様子

王宮、ワットポー、サナームルアンの近辺は普段から交通事情が読めない上に道路閉鎖などもあるので、いち居住者としては人の多さによる帰宅時の不便さ、スリなどの可能性を考えて近づかないようにしています。

国王のお参りに参加するのも大いに結構ですが、その際はきちんとした喪服を着用の上、参加しましょう。また、自身の安全の確保に努めることも心がけてください。

夜のクラブやバーは、夜12時で閉まります。これは当分続く予定で、いつまで続くかは各店舗の判断に委ねられています。昼間に行くレストランやバーなどは、通常営業のところが多いので問題はないと思います。

ナイトマーケットなども自粛している店舗が多いです。シーロム通りのナイトマーケットは土曜の晩に行きましたが、お店がまばらでいつもより殺風景でした。

上記のように、所々で影響は出ていますが、過去に昭和天皇が崩御された時の日本も各地で自粛をした事実があります。同じ人間として、どうかタイの方々を優しく見守りましょう。

最後に

9世の時代が終わり、今、10世の時代が始まろうとしているタイです。

いろんな意見はありますが、僕としては悲しみ・不安な気持ちがある反面、不謹慎かもしれませんがポジティブな気持ちもあり、新しい時代の幕開けにちょっぴりワクワクしている自分もいます。

この国の行く末を温かく見届けたいなと思います。

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ライター

つっちー/Tsucchi

京都府出身。小さな頃からの"外部"との交流やLGBTとして過ごした経験から、心理学や国際政治、哲学に興味をもち、在学中はイギリス、タイに留学。現在は、タイのコンサル会社にて日本人とタイ人をつなぐコーディネーターとして日々邁進中。将来は世界の人々に対して、有益な情報を啓蒙をするお仕事に携わること。

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