AIの活用が一般化した現代、特に生成AIは多くの領域で多様な活用方法が創出されている。
デロイトトーマツ グループは今年7月、プライム市場に上場する売上1000億円以上の企業の部長クラス以上を対象に、生成AIの活用に関する意識調査を実施。日本のリーディング企業における生成AIの導入・活用状況、その目的や成果、収益、人員への影響などを明らかにした。
8月に公開された調査結果を一部抜粋して紹介する。
【調査概要】
調査目的:企業の、生成AIに対する理解度や関心度合い、生成AI活用の現状の実態を調査し、課題・悩みを把握すること
調査期間:2025年7月 インターネットでの調査
調査対象者:プライム市場所属売上1000億円以上の企業の部長クラス以上700人
設問:33の本設問で「生成AI導入・活用関連」「売上・コスト関連」「生成AI人材関連」の3テーマの回答を取得
生成AIの「導入」と「利用率」の間に溝
調査では、97.7%(前年94.3%)の回答者が生成AI導入を有益と考え、95.6%(前年87.6%)が生成AIを既に導入していると回答。さらに、特定の部署だけではなく「全社的に導入している」と回答した割合が47%(前年26.4%)に上り、昨年から20ポイント以上高い結果となった。
一方で、社内での生成AIの利用割合について「ほとんどの社員が利用している」と回答した割合は18.5%(前年6.3%)、「半数以上の社員が利用している」と回答した割合が32.9%(前年23.1%)に留まっており、増加傾向にはあるものの、導入と実際の社員利用割合の間に溝があることが推察できる。
また、導入後の社内利用における課題については、約4割の企業が「データの活用不足」「社員の理解不足」「機能の不足」をトップ3に挙げた。

生成AIの導入目的では企業規模を問わず「業務の自動化・効率化」が最多。一方で生成AIの社員利用を割合別に見ると「ほとんどの社員が利用している」と答えた企業では「事業構造の変革」を重視する傾向が明らかになった。生成AIは単なる業務効率化にとどまらず、事業全体の変革のきっかけとなっているようだ。

生成AI導入が進む企業では「売上が増加する見込み」が多数
PoCやトライアルの段階から生成AIの本格的な開発・導入に取り組む際の課題に関しては、多くの業界で「専門人材の不足」が最大の課題として挙がった。また、ガバナンス体制の整備や全社的な推進機能、データ整備やAI基盤構築など、課題は多岐にわたるようだ。

さらに、42.7%の企業が生成AI導入により「社内の意思決定スピードが向上した」と回答(前年比10ポイント増)したほか、社員の生産性についても「変化なし」の回答が28.6%(前年56.0%)まで減少。「競争優位性が向上した」と回答した企業の割合も56.6%(前年39.3%)と大幅に増加した。

生成AI導入による売上の変化においては、前年は「変化なし」が過半数であった中、今年は「増加する見込み」が半数を超過。これらの成果に関わる指標の傾向は、いずれも社員利用割合が高い企業ほど顕著に現れる結果となった。