アートとカルチャー
2020年08月21日 07時56分 JST | 更新 2020年08月22日 15時50分 JST

ロンブー田村亮さん「死ぬつもりで生き方を振り返った」 相方・淳さんへ宛てた「遺書」

世間を騒がせた"闇営業問題"から1年あまり。芸能活動再開までの道のりを支えた相方・淳さんへの思いを聞きました。

Kazuhiro Matsubara(ハフポスト日本版)
インタビューに応じた田村亮さん

2019年7月20日ーー。

ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんは、多くの人の前で、涙を流していた。

反社会的勢力が主催する会合に出席し、金銭を受け取っていたなどとして、吉本興業から謹慎処分を受けていた最中に、自主的に記者会見を開いた。

自分がしてしまったこと、そして、世間に「ウソをついて」しまったことを自分の口できちんと謝りたい、その一心だったという。

 「正直なことを言うと、あの時は自分のことしか考えられてなかった。淳のことを考える余裕はゼロでした」

亮さんは、あの日を振り返ってこう語る。

そんな亮さんに、相方・淳さんへの思いを、改めて”棚卸し”する機会が訪れた。淳さんが慶應大学大学院での研究をもとに開発している遺書動画サービス「ITAKOTO(イタコト)」への実験体験を頼まれた。自分が死んだ時にメッセージを送りたい相手に、動画を使って遺書をのこすこのサービス。相方からの頼みということもあり、最初は戸惑いもあったというが、挑戦した。

激動の1年あまりを振り返りつつ、遺書をのこすというプロセスで浮かび上がった、相方・淳さんへの思いを聞いた。

 

闇営業騒動からの地上波復帰

田村亮さんら複数の芸人が、反社会勢力が主催する会合に参加し、現金を受け取っていたことが明るみになった「闇営業騒動」。

亮さんは被害者への謝罪や世間への説明の仕方をめぐって、所属していた吉本興業と対立。雨上がり決死隊の宮迫博之さんとともに異例の「自主会見」を開いた。 

「正直にいうと、あの時は淳のことも、ロンドンブーツのことも、お世話になった番組スタッフのことも何も考えてなかったです。そんな風に、後先まったく考えない行動をした時点で、コンビのちゃぶ台をひっくり返したようなもんですよね…。だけど、あの時の自分のメンタルを思い返すと、自分や家族に対して、ウソをついたままで生きていくことはできない、という一心で、それ以外は頭になかったです」

Kazuhiro Matsubara(ハフポスト日本版)
インタビューに応じた田村亮さん

 

コンビのちゃぶ台をひっくり返した

亮さんはそう振り返るが、会見後の亮さんに寄り添い、復活へのレールを敷いたのは相方の淳さんだった。

「芸能活動を再開したい」と打ち明けた亮さんのために、淳さん自身が代表取締役となり、株式会社LONDONBOOTSを設立。吉本興業と専属エージェント契約を結び、LONDONBOOTS所属タレントである亮さんと、吉本興業との間を取り持った。

また、亮さんの活動拠点としてYouTubeチャンネル「ロンブーチャンネル」を立ち上げるなど、次々に仕事をプロデュースした。

「復帰はロンハーで」

そして2020年4月7日。亮さんは、長年2人がコンビでMCを務めてきた冠番組「ロンドンハーツ」に出演し、9ヶ月ぶりの地上波復帰を果たす。これを皮切りに、YouTubeチャンネルで次々と企画に参加したり、企業のCMに出演したりするなど芸能活動を本格再開した。

「復帰はロンハー。これは淳の強いこだわりでした。今まで世話になった人たちに、順位をつけるわけにはいかない。だけど、やっぱり本当に自分たちが育ててもらったロンドンハーツに対して、そこに戻ることが最善なんじゃないかと淳に言われて、その方針に従いました」

ロンドンハーツでは「当分はセットの外で見学」という淳さんの“お達し”に従い、スタジオの外側でパイプ椅子に座り、毎回メモを取りながら収録を見つめている。

失意の中でコンビの今後を考えてくれたのは「全て淳です」と亮さんはいい、「その通りにしてよかったと今は思う」と語る。 

「本音をいうと、僕はYouTubeでどんどん活動していけば別にいいんじゃないかってどこかで思ってたのもあるんです。でもそれは違うと淳に言われました。自分があれだけ迷惑をかけたんだから、筋を通せと。そう言われたら、確かにそうだな、失礼だな、と思い直したんですよ。どうせこれだけ休んでるし(笑)、少々復帰が伸びても、ちゃんとしないとなと思い直しました。結果、これでよかったと思ってます」

Kazuhiro Matsubara(ハフポスト日本版)
インタビューに応じた田村亮さん

 

正反対のコンビだからこそ…

相方に導かれ、少しずつ復帰の道を歩んできた亮さん。“騒動”の裏でなされていた会話を聞くと、「コンビ愛」という言葉でくくることができない2人独自の関係性が浮かび上がってくる。

「今のロンハーの話からもわかるように、淳は本当に筋を通すし、義理を通す人。世間的には淳の方が過激なことを言ってるイメージがあったり、逆に僕は『亮さん優しい』と言っていただいたりもするけど、本当は、全然そんなことはない」という。

「僕は、自分も好きなことをやりたい代わりに、人に対しても好きにやったらええやんかと思うタイプ。淳が(ビジネスや大学院進学など)やりたいことを次々見つけてバンバン動いているのも、やったらええがなと思いながら面白がって見てられる。そういうところは合ってるんじゃないですかね」

義理堅い性格とマイペースなキャラクター。正反対にも見える2人だからこそ、コンビは長続きするのかもしれない。

 

Aya Ikuta / HuffPost Japan
芸能活動を休止していた田村亮さんと、相方・田村淳さんが2020年1月30日に「ロンドンブーツ1号2号」として復活ライブを開催。その後、揃って記者会見に登場した。

 

淳に言われて「やってみてよかった」

こうした激動の日々の裏で、相方への思いを改めて言葉にする機会に恵まれた。それが淳さんが研究開発している遺書動画サービス「ITAKOTO」だ。

「死ぬつもりでメッセージを残す過程で、生きていく上で大切なものは何なのか、気づきを得て欲しい」

そんな淳さんの言葉に背中を押され、妻、長男、次男、そして淳さんに宛てた遺書動画を撮影した。

「遺書って仰々しいイメージもあるし、『言わずしても俺の気持ちはわかるやろ』みたいな気持ちもあって、最初は抵抗があった」と振り返るが、結果的には「やってみて本当によかった」と語る。

「例えば、長男への遺書。これまで2人の息子には、『長男だから』『次男だから』というのは絶対言いたくない、と思ってきたんです。でも遺書を書いてみたら、長男に対して、(家族のことを)すごく託す気持ちを持っているんだと気づいて、自分でも驚きました。『何かあったら頼むね』とか言っちゃってるんですよね。そういう無言のプレッシャーみたいなものは、本人にもバレちゃってただろうな、と反省した部分ですね」

まさに、淳さんの狙い通り、「死ぬつもりでメッセージを残し、生き方を振り返る」を実践したかたちだ。

株式会社itakoto
遺書動画サービス「ITAKOTO」

相方・淳へ。「普段言わないアイラブユー」を

激動の一年を支えてくれた相方・淳さんへの言葉は「一番シンプルになった」という。

「”ごめんな”と”ありがとう”の2つだけ。僕が淳に残した言葉を、反対に淳に言われても、『そんなのわかってたよ』と思うようなことしか言ってない気がします。『日本人はわざわざアイラブユーを言わない』とかよくいいますけど、それを改めて言った感じですかね」

「最初は、遺書を動画にとるだけで何か変わるのか?と懐疑的なとこもあったけど、淳に対してもっていた感情が、ストンと腑に落ちて、納得感が増したような感覚があって……。やってよかったなぁと思います」

Kazuhiro Matsubara(ハフポスト日本版)
インタビューに応じた田村亮さん

コンビ結成27年。解散は「考えたことがない」。

「もちろんケンカもしたし、意地になったこともあった。でもそれが『本当の間違い』になってしまわないように、2人で修正してきたんだと思います。この道を正解にしたいって思いはあったから」

闇営業問題も、そこからの復活も「もちろん大きな出来事だったけど、何年後かには、コンビにとっては長い歴史の中の一部になっていく気がする」と語る。

淳さんの言葉に身を委ね、戸惑いながらも最後には「これでよかった」と亮さんが納得する。そんな風に、2人はこれからも歩んでいくのだろう。

【動画】田村亮さん、相方・淳さんへ 今伝えたい思い(1分24秒)

 (取材・文:南 麻理江 / 写真・動画:松原一裕)