最近、香港や香港映画の仕事づいています。
もちろん、今の香港の人気を後押ししたのは、今年の1月に日本で公開された映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』でしょう。劇中に出てきた叉焼飯(チャーシューファン)は大人気に。私も、過去に何度も叉焼飯(香港の焼味)については取り上げてきましたが、ここまで注目が集まる時代が来るなんて予想もしていませんでした。
その影響を受けてなのか、そうでなくてもなのか、たくさん新しい香港料理、広東料理のお店が増えています。
今回は、池袋や高田馬場にできた「民記煲仔飯(ミンキ ボーチャイファン)」を紹介しようと思います。
一人用の土鍋で炊いた、中国版炊き込みご飯

そもそも煲仔飯(ボーチャイファン)という言葉自体、聞きなれない人も多いと思います。中国の一人用の土鍋で炊いた炊き込みご飯のことで、香港に行くと、街角で、コンロにいくつも土鍋を並べてご飯を炊いている様子を目にすることがありました。外で炊いているお店もあったと思うんですけど、今はどうでしょうか。
土鍋は、砂鍋という中華系独特の鍋で、煲仔飯は片手でつかむ握りがあることが多いです。日本でも一人用の土鍋が売っていますが、香港で見かけるあの片手の土鍋がほしくて、買ってみたこともあります。雰囲気が出るんですよね。
煲仔飯は、炊き込みご飯とはいえ、実は、具材を混ぜて炊くというよりは、炊いたジャスミンライスなどの長粒米の上に、さまざまな具材をのせて再度加熱し、蒸すというのが正確かもしれません。
のっている具材はというと、鶏肉やミンチ、中国ソーセージなどの肉類と、青菜、そして生卵(蒸しあがってほどよく火が入ります)というものが主流ではないでしょうか。
民記煲仔飯でも、中国ソーセージと、豚肉や牛肉、鶏肉を一緒にのせたメニューがメインになっていました。底のご飯が土鍋にくっついてお焦げになっていて、カリカリとしておいしいです。
そこに、ちょっと甘くて色の濃い中国醤油をかけて、混ぜながら食べます。
民記のお肉には、わりと濃いめの味付けがされているようでしたが、香港で食べるときは、あまり鶏肉やひき肉に茶色い色はついていないことが多いかもしれません。
味としては、ミシュラン一つ星にも輝いた香港天津専門店の「添好運(ティム・ホー・ワン)」にスペアリブの蒸しごはんというメニューがあり、そのスペアリブが土鍋で炊いたご飯の上にのっているようなイメージです。書いていたら添好運に行きたくなってしまいました。
香港のあの味を家でも…

煲仔飯は家でも真似して作ることができます。
ジャスミンライスなどの長粒米を準備して、100均などにも売っている一人用の土鍋で炊き、その上に、ソーセージやひき肉、青梗菜や小松菜などの茹でた青菜をのせ、真ん中に卵を割り落として再び加熱、そして中国醤油などをかけて卵をつぶしながらいただけば、十分、煲仔飯気分を味わえるでしょう。
手に入るならば醤油は、煲仔飯豉油(ボーチャイファンシーヤウ)とか、煲仔飯用醤油と書かれたものが売っているのでそれを使うといいでしょう。日本でも、Amazonや中国食材店での取り扱いがあります。
ただなくても、なんとなく作ってもいいんです。甘めの濃い醤油なので、日本の濃い口醤油にオイスターソースや砂糖などを混ぜたものをかけたのでも十分だと思います。
逆に本格的にしたいのであれば、ソーセージも中国ソーセージを買ってきたりすれば、風味が一層、本場のものに近づきます。
私なんかは、もっと飛躍して、「添好運」でスペアリブご飯をテイクアウトしてきて、それを家で土鍋に入れ替え、少し火を入れてお焦げをつけたりしてみたいな、なんて考えています。そこに青菜や中国ソーセージをのせたり、煲仔飯豉油をかけたりしたら、かなり香港で食べたあの味に近づくんじゃないかと思います。
もしくは、スペアリブの豆鼓蒸しを買ってきて、ジャスミンライスを炊き上げた上にのっけて、もう一度加熱するというのもいいかもしれません。
そういえば、私は陳建一さんの「四川飯店監修 四川焼売」という冷凍食品が大好きなんですが、「香港の人が、この焼売は香港の味に近いと思っている」と聞いたことがあるんです。
今は息子さんの建太郎さんの写真がのっていますが、この焼売の中身をひき肉のように崩してジャスミンライスの上にのっけて、中国ソーセージに青菜に生卵ものせ、煲仔飯豉油をかけたら、本当においしいのではないかと思ったりしています。
