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2018年02月19日 12時23分 JST | 更新 2018年02月19日 12時23分 JST

子ども医療費助成制度とコンビニ受診

子どもであっても窓口での支払いは求めたうえで、償還払いにした方がいいと思っています。

Opus via Getty Images

小児救急のコンビニ受診の進行には、様々な要因があるずです。地域ごとの違いもあるでしょう。そのなかで、子ども医療費助成制度が全国的に普及してきたことも、少なからず影響しているように思います。これは、いくつかの都県で医師として働き、子育てをしてきた経験からの実感でもあります。

現在、子どもの医療費の窓口負担は、健康保険の給付によって未就学児が2割、小学1年生以上は3割となっています。けれども、実際には、自治体が子どもの医療費を助成するようになっており、一定の年齢になるまでは無料で医療を受けられる地域がほとんどです。

とはいえ、都道府県ごとに助成制度の内容が決められていることから、助成が受けられる子どもの年齢、通院や入院による違い、親の所得制限などの差があり、一部負担金があるかどうかとか、現物給付か償還払いかといった違いも生じています。

たとえば、東京都では、18歳まで救急受診は無料であり、親の所得制限もありません。一方、沖縄県では、0~2歳まで救急受診は無料ですが、3~6歳では千円負担が発生し、7歳以上では助成がなく3割負担です。ただし、財政に余裕がある市町村は上乗せの助成をするのが一般的で、たとえば私が住んでいる中城村は手厚く、中学卒業まで無料となっています。

実は、東京都と沖縄県では、医療費の支払い方法に大きな違いがあります。東京都は現物給付で窓口での支払いがありませんが、沖縄県は償還払いなので、一旦は自己負担分を全額支払う必要があるのですね(翌々月の末月に指定された口座に助成金が支払われる)。これ、受診行動への影響は大きいですよ。

以上、長々と制度について解説しましたが、何が言いたいかというと、「医療費が無料で、窓口での支払いすらなければ、そりゃコンビニ化もするよな」ってこと。子どもへの医療費助成を否定しているのではありません。子どもの医療費が無料であることは良いことです。ただし、この制度を導入する市町村には「適正利用についての責任」があることを自覚していただきたいと思うのです。

老人医療費が無料だった時代に社会的入院が加速してしまい、医療現場が疲弊したばかりか、入院を必要とする人が入院しにくくなるという弊害が生じたことも、ここで思い出しておきたいところ・・・。

さて、平成26年の医療法改正では、「国民は(中略)医療を適切に受けるよう努めなければならない」(第六条の二第三項)とする条文が加えられました。これまで、医療提供体制を定める法律として、医療者と行政がどうあるべきかは書かれていましたが、利用者である住民がどうあるべきかは書きこまれていませんでした。この改正で、住民の責務が明記されたことは画期的なことだったと思います。

ただし、住民に責務が課せられたということは、行政には「住民が適切に医療を利用できるよう、分かりやすく説明する義務がある」ということでもあります。子どもの医療費を無料にしているのは、健康保険制度ではないので、保険者による指導が入りにくい領域です。その実施主体である市町村が、単にアクセスを向上させる取り組みだけでなく、住民教育まで責任を果たしていかなければなりません。

具体的には、助成制度の拡充によって・・・、 人口あたりの救急受診する患者数、すべての外来受診のうちの時間外受診の比率、救急受診者のうち入院となった患者の比率などの指標を設定し、どのような影響が現場に発生しているかを経時的に把握するべきでしょう。

さらに、保険者や医療機関と情報を共有しながら、頻回に救急受診している世帯について、その事情について確認するとともに、かかりつけ医をもつことなど個別に必要な指導を行うことも検討しなければなりません。市町村の保健師なら、こうした個人情報を扱うことができるはずです。

もちろん、住民全体における保健行動の底上げとして、電話相談窓口の充実と周知(コールトリアージ)、家庭における判断能力の向上(フィールドトリアージ)を進めることも必要ですね。やるべきこと、やれることはたくさんあります。これこそが医療法第六条において求められている取り組みじゃないかと私は思います。

最後に・・・

個人的には、子どもであっても窓口での支払いは求めたうえで、償還払いにした方がいいと思っています。子どもが受けた医療費がどれくらいだったかを知ることは、患者教育上も重要だからです。また、病気の予防に要するコストと同等か、それ以上を医療費として求めなければ、「病気になったら治療すればいいや」というモラルハザードを引き起こすことも考えられます。

ただし、(のちに払い戻しがあるとしても)窓口での支払いすら困難な世帯があるのも事実です。こうした貧困世帯では、少しでも自己負担があると虫歯を放置したりと、不健康の連鎖へと陥るリスクが高いとされます。コンビニ受診を抑制することは必要ですが、単一の施策による調整ではなく、拡大しつつある子どもの貧困への配慮を忘れないようにしなければなりません。