これまで、数々の素晴らしい映画をお届けしてきた『金曜ロードSHOW!』。今回、「3週連続 秋のジブリ」と題して、スタジオジブリの名作を3週連続で放送することが明らかになりました。
気になる作品は、『となりのトトロ』(11月4日)、『紅の豚』(11日)、『猫の恩返し』と同作劇場公開時に同時上映された『ギブリーズepisode2』から選ばれた2つのエピソード「カレーなる勝負」「初恋」(18日)を予定しているそうです。これは楽しみですね。
今回は、そんなジブリシリーズの中から小話をひとつ。
今年1月に通算15回目となる放送となった『天空の城ラピュタ』。近年、TVで放送がされる度に、Twitter上では「バルス」を発信する遊びが定番化していますね。1月の放送では、そんな滅びの呪文を唱える遊びを公認し、特別サイトを立ち上げ、また、CMの度に「バルス」までの時間が表示されて、その瞬間が訪れるのを皆で待つという特異な盛り上がりがみられました。ラピュタ好きの皆さんの中にも、このお祭りに参加した人もいるのでは?
しかし、そんな名シーンですが、実は皆が知っているものとは異なる「バルス!」があったのをご存じでしょうか。
スタジオジブリで『天空の城ラピュタ』をはじめ、人気作品『となりのトトロ』『魔女の宅急便』などの制作に携わった、元スタジオジブリ制作進行の木原浩勝さんが、自著【もう一つの「バルス」宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代】のなかで、その「バルス!」について語っています。
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写真:photo acより
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皆さんの知る「バルス!」のシーンは、パズーが握りこぶしを差し出し、シータの右手がそっと上に重ねられ、そして、二人の手はしっかり握り合うものかと思います。その後、床にランチャーを投げ捨て、そのことに驚いているムスカの前で、手と手をとったまま「バルス!」と唱えます(ツイートが炸裂する瞬間です)。
これはお馴染みのシーンですよね。何度も見てきたシーンですので、すぐに思い出すことができます。しかし、木原さんが仕事中にラフコンテでは、これとは異なった「バルス!」があったようです。
気になるその「バルス!」とは......。
銃をかまえる姿は同じなのですが、手の動きが違うのです。こちらでは、シータの拳をパズーの手のひらが包んでおり、そのままゆっくりと重ね合った拳をムスカに向け突き出すのです。
徐々に拳がひらいていき、その手の中には飛行石。シータの手の甲の後ろにはパズーの手が添えられています。そして、ムスカに対して、飛行石を見せつけて動くなと言わんばかりのポーズをとる。最後に発せられた言葉が、「バルス!」。
「なんとラフコンテでは、ムスカに向かって、水戸黄門の印籠のように飛行石に刻まれたラピュタ王家の紋章をかざす『バルス』だったのだ」と、その違いについて木原さんは明かしています。
前者は飛行石を手に隠したバルス。後者は、飛行石を見せるバルス。ラフコンテの時は、また違ったスタイルの「バルス!」があったんですね。これには驚き。どちらの「バルス!」がいいのかは人によって好みが違いますが、すっかり慣れ親しんだ前者の方が、しっくりくるのは私だけではないはず。
なぜ、「バルス!」のシーンが変更されたのかは、これは1人のみにしかわかりません。しかし、木原さんは「疑問は疑問のままでいい」と考えているそう。というのも、一つのシーンを描くにも、それぞれの登場人物の背景や、作品全体の尺を考えて完成させる必要があるのです。こういった謎が心を引きつけるのも、宮崎作品の特徴なのではないでしょうか。
さて、今回の秋のジブリでは同作は放送されませんが、同じジブリの世界をたっぷり楽しめる3週間が楽しみですね。また、いつか『天空の城ラピュタ』の16回目がされるのを、食パンの上に目玉焼きをのっけた"アレ"を食べながら、首を長くして待とうかと思います。