ボーイング787 規制当局から疑問の声

バッテリーの発火事故で1月から運航停止となっていた米航空機大手ボーイングの最新鋭旅客機787(ドリームライナー)の商業運航が再び始まったが、同社はなお、787絡みでさまざまなリスクに直面している
Reuters

[シアトル 30日 ロイター] バッテリーの発火事故で1月から運航停止となっていた米航空機大手ボーイング

米連邦航空局(FAA)がバッテリーシステムの改良を条件に787の運航停止命令を解除したことを受け、アフリカのエチオピア航空が27日に787の商業運航を世界で初めて再開。日本航空

787の運航停止期間中もボーイングの株価は18%上昇しており、ボーイングが受注残を納入できるとの楽観見通しを背景に、株式市場は同社の株価におおむね前向きな態度を示している。

それでも航空専門家の間からは、ボーイングはまだ続いている規制当局の調査から逆風を受けやすいとの声が出ている。こうした調査で今後、バッテリーの不具合に関する新たな情報が明らかにされたり、新型機の承認が難しくなる恐れもある。

例えば米運輸安全委員会(NTSB)による調査に詳しい筋によると、この調査ではかなり先になってバッテリー発火の原因が判明し、ボーイングが取った対策と問題分析にあらためて厳しい目が向けられるかもしれないという。

またNTSBは調査終了後に、規制手続き面の変更を勧告しそうだ。この勧告に法的拘束力はないが、ボーイングやライバルであるEADS

同時にFAAも、787の設計、製造、生産に関する調査を行っている。米テコップ・インターナショナルのコンサルタントとして20年にわたりFAAのアドバイザーを務めるハンス・ウェーバー氏は、この種のFAAの調査に関しては大騒ぎしないのが普通だが、バッテリーの問題に注目が集まっている以上は「だれもが息を凝らして成り行きを見守っている」と指摘した。

米議会関係者によると、航空問題を担当する議員は、ボーイングとFAAが787の危機から学んだ教訓を知るための公聴会を早ければ5月にも開こうと、日程調整を進めている。

787の主要生産拠点があるワシントン州選出のリック・ラーセン下院議員のあるスタッフは「下院で787に関する公聴会があっても何ら不思議ではない」と話した。

<承認作業の監督強化を勧告も>

ボーイングは、バッテリー発火の原因を特定できないままで、過熱しにくいような方式に交換する対策を実施。充電器の仕様も変えたほか、過熱時に熱や炎を封じ込めるステンレス製の仕切りなどを設けた。

同社は先週、今後も徹底的に仮説の実証に挑んでいくとともに、新たな事実が増えてくるにつれて問題分析の結果も変わりうると強調した。

NTSBが23日に開いた公聴会で同社のマイク・シネット民間航空機部門副社長は「事故原因が具体的に理解できる状況に至れば、設定したこれらの仮説についてもより良い理解が得られる」と述べた。

この公聴会ではNTSBのデボラ・ハースマン委員長に対するいくつかの質問から、FAA内では常時25人のスタッフで787プログラムを監督しているのに対して、ボーイング内にはFAAの代行で承認作業を行う権限を持った人員が約900人いることが分かった。こうした状況を受けてNTSBは、承認作業についての監督を強化し、承認をより難しくするよう勧告する可能性がある。

(Alwyn Scott記者)

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