G8サミット(主要8カ国首脳会議)が17日午後(日本時間18日未明)英国・北アイルランドで開幕し、「世界経済に関する首脳宣言」が前倒しで発表され、その内容にアベノミクスを後押しするような文章が盛り込まれた。
G8サミットとは、日本、米国、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシアの首脳及び、欧州連合(EU)の委員長が参加して、毎年開催される首脳会議。国際社会が直面する、地球規模の様々な課題について自由な意見交換をしながら、コンセンサスを形成し、その中で決まった内容を“宣言”する。
今回のサミットのまず最初の議題となったのは「世界経済」。この中で宣言された「世界経済に関する首脳宣言」では、世界の経済動向については、見通しは弱いままであるが、日本やアメリカ、EUがとった政策措置などにより、下方リスクは後退したと述べられた。最優先課題に「成長と雇用の促進」を挙げた。
各国に関する経済状態について、安倍首相は、民間投資を引き出す成長戦略などを説明。消費税率引き上げについても、「環境が整えば実行する」と述べた。宣言の中では、日本については、「日本の成長は、大胆な金融緩和と、最近発表された成長戦略によって、支えられている。しかし、信頼ある中期財政計画の策定という課題に取り組む必要がある。」と、評価と指摘、合わせて発表された。「アベノミクスは良いんだけど、ちゃんとした財政計画も立ててね。」ということだろう。
安倍首相が発表した成長戦略の第3弾については、特に、労働市場や衰退産業に対する規制緩和などへの期待が大きかっただけに、市場は落胆し、株価が下落した。
ロイターは、G8に出席しているドイツのメルケル首相の話として、安倍首相が日本の構造改革について述べたと報じている。
(安倍首相は)見通しが立てられる期間内に構造改革に取り組むとともに、中期的には財政健全化を成し遂げると言明したことを明らかにした。メルケル首相は「日本が構造改革に関して非常に積極的に考えていることを聞けたことはとても重要だった」と語った。
(ロイター「安倍首相、G8会議で構造改革への取り組み言明=独首相」より。2013/06/18 04:01)
構造改革を望む声は長きにわたって存在する。しかし、これに懸念を表明する声もある。経済・金融評論家の大塚将司は、Business Journalの「アベノミクス・成長戦略の“盲点”…規制緩和・構造改革では成長しない?」という記事で、下記のように論じている。
規制緩和と構造改革は何をもたらすのか。増えないパイ(内需)を取る主体が変わるだけだ。現状維持なら、守旧派の主体が今まで通りシェアを保ち、現状が打破されれば、守旧派がシェアを落とし、外資や新興勢力がそれを奪う。それだけのことだ。主役交代のタイムラグで短期間は成長にプラスに働くことがあっても、パイは増えないのだ。
(Business Journal「アベノミクス・成長戦略の“盲点”…規制緩和・構造改革では成長しない?」より。 2013.06.15)
規制を緩和しても、参加する企業が変わるだけで、需要は増えないということだろう。大塚氏は、これを打破するためには、輸出産業の拡大だと説いている。輸出できる「モノ」をさらに増やすと共に、現在の輸出産業の競争力を維持する施策を取る必要があるとのことだ。
そういう目で見ると、今回のG8は「アベノミクス」を世界からお墨付きをもらうためのもので、そのために「規制緩和」という“お土産”を持っていったとも、言えなくもない。