エジプトのモルシ大統領への退陣圧力が強まっている。エジプト軍は1日、反政府デモ拡大を受けて緊急声明を発表し、すべての政治勢力に対し48時間以内に対立を解消するよう呼びかけた。政治勢力間で解決に至らない場合は「全勢力が参加した将来への道筋をわれわれが設定する」と述べ、軍として仲介に乗り出す方針を示した。共同通信が伝えた。
時事通信によると、デモ隊はモルシ大統領の出身母体であるムスリム同胞団の本部を襲撃。建物内の同胞団メンバーが上空に向けて威嚇発砲し、これをデモ隊は攻撃と受け止め放火を始めた。同胞団側はデモ隊への射撃に切り替え、少なくとも8人が死亡、数十人が負傷した。
こうした事態を受けてエジプト軍は緊急声明を発表し「すべての政治勢力が対立を解消できるよう最後のチャンスとして48時間を与える」としたうえで、混乱を収拾できなければ仲介に乗り出す考えを明らかにしたとNHKが伝えている。
エジプト軍は、デモ隊に同調する動きを見せている。時事通信によると、エジプト中心部タハリール広場の上空をエジプト国旗を下げた軍のヘリコプター編隊が旋回飛行した。イスラム主義組織ムスリム同胞団出身のモルシ大統領の退陣を求めるデモ隊への連帯の意思表示とみられる。
ムスリム同胞団とは、エジプトを中心に活動する穏健派のイスラム原理主義組織。都市部から農村部まで張り巡らされた草の根ネットワークを持ち、エジプト国民の2~3割の支持者がいると見られる。しかし、宗教と政治の一体化が進むことに拒絶反応を示す国民も少なくなく、とりわけ世俗志向の若者の間に反発を持つ者が多いと見られる。(コトバンク「ムスリム同胞団」より)
エジプト軍がデモ隊と連帯する姿勢を見せ始めたことで、モルシ大統領の辞任は避けられないとの見方が広がっている。エジプト情勢は2011年2月のムバラク前大統領退陣以降、もっとも重大な局面を迎えている。
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