中国の景気減速が理由で、融資が受けられなくなる可能性のある外国企業とは

中国の巨大な財・サービス市場はかつてグローバル企業にとって現代版の黄金郷とみなされていたが、中国は今や成長が鈍化し、こうした企業にとって経営上の重荷になりつつある…
Reuters

中国の巨大な財・サービス市場はかつてグローバル企業にとって現代版の黄金郷とみなされていたが、中国は今や成長が鈍化し、こうした企業にとって経営上の重荷になりつつある。

過去20年間の中国経済の興隆で国際的なビジネスは変貌した。しかし、その中国は最近の経済指標が示す通り、輸出の不振と銀行セクターの暴走で景気減速に見舞われている。

このため世界のファンドマネジャーは世界第2の経済大国である中国に事業を集中する企業に関して投資評価の再考を迫られている。

INGインベスト・マネジメントの投資ストラテジスト、マールテン・ヤン・バッカム氏は「中国の影響を受けやすい企業はいずれも株価のパフォーマンスが悪い。成長率に回復の兆しが見られない以上、この傾向は変わらない」と語る。INGインベストメントはこのほど、中国の事業比率が大きい企業の株式に対する投資比率を引き下げた。

市場は既にコモディティ需要の減速に備えている。しかし高級品販売の落ち込みにつながった汚職摘発の動きをはじめ、シャドーバンキング(影の銀行)の取り締まりに至るまで、中国政府の最近の動きは何もかもが国内需要を冷え込ませるものだとバッカム氏はみている。

実際に投資家が恐れているのは、成長率が7%を割り込むことよりも、銀行の本格的な信用引き締めがここ数年の銀行融資と消費の拡大を腰折れさせる事態だ。バッカム氏は「中国に対する懸念の一部が現実化するだけでも、消費が打撃を受ける」と付け加えた。

中国の売上高比率が高い50社で構成するモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)の中国エクスポージャー指数はことしに入って約10%下落した。下落分の3分の2は中国の成長見通しに暗さが増した直近の四半期に集中している。

対照的に先進国の売上高比率が高い企業で構成する指数は12%上昇し、欧米や日本の景気見通しの改善傾向が際立っている。

フィデリティ・グローバル・リアル・アセット・セキュリティーズ・ファンドのポートフォリオマネージャー、アミット・ロダー氏は、中国事業の不振を欧州の販売回復で効果的に穴埋めできる独フォルクスワーゲン(VW)を選好している。

同社の高級車部門ベントレーは今月、中国の販売が23%減少する一方、米国と欧州は12─22%増加したと発表した。

ロダー氏は「長期的なテーマは引き続き中国のような新興国市場の消費の伸びだ。短期的には米国の復活と欧州の景気底打ちの兆しもあって、欧米の事業比率の高い企業に焦点を当てるのが好ましい」と語った。

<半導体とセメント>

過去20年間に中国が年10%の成長を達成したことで、外国企業は利益拡大と株価の急騰という恩恵に浴した。中国の数兆ドル規模に及ぶインフラ整備計画に伴いブラジルやロシアから資源が流入し、ドイツや米国から半導体や建設機械が集まった。

一方、自動車メーカーやアパレル、化粧品企業は13億人の中国国民が豊かになることで利益を得た。中国の1人当たりの所得は2000年から4倍に増えている。

銀行の推計によると、米欧企業の利益のうち中国が直接占める割合は5─6%だが、資源や食品の価格面での影響を含めた間接的な割合はもっと高くなる。

中国の景気減速はすでにコモディティ取引に影響を及ぼしている。

シティ・プライベート・バンクでマネージドインベストメントのグローバルヘッドを務めるデビッド・バイリン氏は「コモディティや原材料の事業比率が高い企業の投資には関心がない。結局のところ、中国の需要は明らかに減退している」と述べた。

消費が中国経済に占める比率は35%強にすぎず、隣国インドのほぼ半分の水準だ。中国では3億人超が中間層とみられ、スマートフォンやブランド服の需要は当面不安がない。

しかし中国の経済発展と雇用は貿易と密接に関連している。輸出の不振にインフレのほかシャドーバンキングの取り締まりによる借り入れコストの増加が重なり、すでに可処分所得にも影響が及んでいる可能性がある。

例えば、スイス製時計の輸出はことし第1・四半期に25%減少した。輸入関税が免除されるため多くの中国人が購入に訪れる香港では19%落ち込んだ。

モルガン・スタンレーによると、欧州の高級ブランドや半導体、エネルギー関連企業及び自動車などのメーカーはいずれも売上高の10%以上を中国で稼いでいる。同社は先週、顧客向けノートで、中国と新興国の事業比率の高い銘柄に警戒するようアドバイスした。

ドイツ銀行によると、米国企業は利益の約5%を中国が占めるが、ピザ・ハットやケンタッキーフライドチキンなどを中国で展開する外食店チェーンのヤム・ブランズのように50%に達する企業もある。

このため中国の景気鈍化は企業収益のほか、中国の顧客に依存する新興国市場にも悪影響を及ぼす。

しかし中国の景気減速の意味合いはユーロ圏の景気回復にまで波及すると、JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバルストラテジスト、ダン・モリス氏は指摘する。同氏は「ドイツ経済は欧州危機の最中にも堅調だったが、数字の上ではその多くが輸出の寄与によるもので、中でも中国向けが最大だった。今や中国政府による景気対策は期待できず、ドイツの成長率は他国並みになるだろう」との見方を示した。

(Sujata Rao記者)

[ロンドン 14日 ロイター]

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