自公過半数獲得、民主激減という結果に終わった参院選。原発問題に揺れる福島・福井、分裂選挙で大混戦となった岩手、「民主王国」と言われるほど民主党が強さを誇った三重、橋下徹・日本維新の会共同代表の旧日本軍慰安婦をめぐる発言で逆風が吹いた大阪、普天間基地移転問題が焦点となった沖縄など、ハフィントンポストが注目した地方選挙区の結果は果たしてどうなったか。
■原発再稼働の議論深まらず 現職閣僚の森雅子氏が圧勝 福島選挙区
福島第一原発事故の収束が見えない福島県。福島選挙区(改選数1)には新旧あわせて6人もの候補が立った。改選数が2から1に減り、全国で唯一、自民と民主の現職候補が対決する構図となった。
自民現職で、少子化担当大臣の森雅子氏(48)は原発について推進とも廃炉とも言明せず、「原発サイトの迅速な収束、除染の徹底。再生エネルギー開発」と述べるにとどめる一方、地元の会合などで、原発事故対応の強化は訴えるものの、原発再稼働の是非については直接の言及を避けてきた。
結果は、森雅子氏が484,089票を獲得し、同じく再選を目指した金子恵美氏に大差をつけて再選した。産経新聞によると、森氏は駆けつけた根本匠復興相(62)と握手し、約250人の支持者を前に「震災と原発事故の被災地である福島県から唯一選ばれた参院議員として、必ずこの福島を再生して参る覚悟ですと一言一言、かみしめるように話した。また、当確後のインタビューで「原子力規制委員会の規制基準に『地元の理解を得る』との項目があり、県内廃炉は政府の方針と矛盾しない」と説明。その上で「衆参のねじれが解消されることで復興政策をさらに加速できる」と語った。
惨敗を喫した民主の金子恵美氏は前回、森氏に13万票差をつけてトップ当選していた。開票開始後、早々と金子氏の落選が確実になり、福島市内の事務所に集まった県連幹部ら約20人は沈痛な表情を浮かべた。金子氏は「私の不徳の致すところ。民主への逆風を止められなかった」と述べた。
福島民友新聞によると、福島選挙区の投票率は54.52%(男性55.19%、女性53.90%)で、2010(平成22)年の前回(61.63%)を7.11ポイント下回った。
■小沢一郎氏と決別、民主党から離党した現職・平野達男氏が大勝 岩手選挙区
小沢一郎・生活の党代表のお膝元である岩手県では、過去最多の6人が立候補した。被災地の復興のかじとりをどの候補者に託すのか、かつての「民主王国」は、民主公認、小沢氏の後継、民主党を離党した現職の3つに分裂し、自民党と議席を争う大混戦となった。敵陣分裂という追い風もあって、自民党は21年ぶりの議席奪還を狙った。
結果は、無所属の現職平野達男氏(59)が24万3368票を獲得し、自民党の新人田中真一氏(46)に8万1869票差で3選を果たした。前復興相としての実績と知名度を強調し、手堅く票をまとめた。過去最多6人による選挙戦となったが、新人候補は知名度不足などが響き、支持が広がらなかった。
3月末に民主党からの離党を決断し、無所属で戦いに臨んだ平野氏。全県的な支援組織がなく、当初厳しい戦いも想定されたが、記者団の質問に対し「支援者に勇気づけられ、追い詰められているという感覚は全くなかった」ときっぱり。特に選挙戦後半は、選挙カーに近寄って握手を求める有権者が増え、「支持拡大の実感があった」と振り返った。
岩手選挙区で、悲願だった21年ぶりの議席奪還を託された自民党新人の田中真一氏(46)だったが、現職の壁に屈した。小沢王国の分裂という千載一遇のチャンスを生かし切ることができなかった。落選が決まると、盛岡市の事務所は沈痛な雰囲気に包まれた。「私の力不足。期待に沿えず申し訳ない」と頭を下げる田中氏。支持者からは「よく頑張った」と労をねぎらう拍手が送られた。
岩手日報によると、投票率は57・53%で、前回2010年の60・36%を2・83ポイント下回った。
■現実路線を選択した自民・滝波宏文氏が当選 福井選挙区
国のエネルギー政策の行方が問われる中、現在、国内で唯一稼働中の関西電力大飯発電所や高速増殖炉「もんじゅ」など14機の原発を抱える「原発集中立地県」の福井県。福井選挙区(改選数1)は自民現職の松村龍二氏の引退に伴い、自民、民主、共産などの4新人が名乗りを上げて、1992年以来の新人同士の戦いとなった。
結果は、自民党新人で元財務官僚の滝波宏文氏(41)が23万7732票を獲得し、次点の民主党新人で党県連副代表の藤野利和氏(61)に約18万票の大差をつけ、初当選を果たした。共産党新人で党県常任委員の山田和雄氏(46)は3万5600票、政治団体幸福実現党新人の白川康之氏(56)は7020票だった。
福井新聞によると、藤野氏は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」のマイナス面を訴え、憲法改正など政権の行きすぎにブレーキを掛ける必要性を強調。町議、県議時代の実績や庶民的な人柄もアピールした。
当選した滝波氏は、福井新聞とのインタビューで次のように語った。
「古里福井には私の信条であり、日本人が一番基本とすべき『勤勉・正直・感謝』の精神が残っている。今こそこの精神を見つめ直し、中央の政策を整理していくことが重要だ。都会の議論が福井から見て、何かずれていないか。そうした視点で発言していく」
「エネルギーについて日本は今、将来の世代に『賢い選択をした』と評価されるベストミックスをつくらないといけない。原発とともに何十年も歩んできた福井県から、日本のエネルギー全体がどうあるべきかを発信することによって、歴史の検証に耐えられるエネルギー政策がつくれると信じている」
(福井新聞 滝波氏「古里目線で日本再生」 参院選初当選で意気込み 2013/7/22 0:31)
福井新聞によると、投票率は53・78%で、参院選で過去最低だった1995年の53・02%をわずかに上回ったものの、過去2番目の低さ。
■「民主王国」牙城崩れる 岡田克也氏「過剰な期待感との戦いだった」 三重選挙区
三重県は民主党の岡田克也前副総理のお膝元であり、2000年の参院補選以来、民主党が5連勝する「民主王国」だった。民主にとっては全国31の1人区で「勝てる可能性が最も高い選挙区」と期待がかかっていた選挙区でもある。自民は引退した斎藤十朗元参院議長が最後に当選した1998年以来、15年ぶりの議席奪還を目指していた。
結果は、吉川有美氏(自民新)が、高橋千秋氏(民主現)の激しい追い上げをかわして初当選した。吉川氏は、三重県内では1960(年の衆院選以来、53年ぶりの女性国会議員となる。中日新聞によると、吉川氏は、昨年の衆院選で五人に増えた自民党所属の国会議員らを中心に全県的な組織選挙を展開。高い内閣支持率を追い風に、経済成長の推進や女性の社会進出を訴え、幅広い支持を集めた。
吉川氏は「すべては自民党、公明党、そして三重県の支持していただいた県民のお陰と思う。本当にありがとうございました。みなさまの支援を無にしないよう、ここ三重県と日本のさらなる発展に向けて邁進(まいしん)していく」と話した。
落選した高橋氏は午後9時45分ごろ、事務所に到着。集まった支援者に深々と頭を下げ「私の力不足でした。今後、党の立て直しに努めていきたい」と話した。また、二人三脚で選挙戦を戦った岡田氏は「非常に残念だ。反応は悪くなかったが、アベノミクスに対する過剰な期待感との戦いだった」と振り返った。
朝日新聞によると、三重選挙区の投票率は57・82%(前回60・85%)だった。
■ 日本維新の会の東徹氏がトップ当選 共産党が1998年以来の議席獲得 大阪選挙区
橋下徹共同代表(大阪市長)の旧日本軍慰安婦をめぐる発言などの影響で、苦戦を強いられた日本維新の会の本拠地・大阪府では、トップ当選できるかどうかが今後の橋下氏の求心力を左右する、と地元議員らは総力戦を展開した。
改選数が1増え、4になった大阪選挙区では、自民柳本卓治氏、維新東徹氏、公明杉久武氏の3新人が安定した戦いで当選。共産新人の辰巳孝太郎氏が民主現職の梅村聡氏に競り勝ち、共産党候補として大阪選挙区で1998年以来の議席を確保した。
日本維新の会の東徹氏(46)は100万票超を獲得し、トップ当選を果たした。当選が決まると、まず「都構想」への見通しを口にした。「政治、行政を仕組みから変える都構想を実現し、国の道州制につなげていく。国の課題である経済政策と財政再建に全力で取り組みたい」と語った。
共産党の辰巳氏は自民、維新批判を強めて党支持層以外にも浸透、最終盤にかけ勢いを増した。梅村氏は唯一の現職として社会保障制度改革などの実績をアピールしたが、逆風に苦しみ、支持層もまとめきれなかった。
辰巳氏は「『自共対決』がはっきりした選挙だった。無党派層や反自民、反維新の方からもたくさんの支持をいただいた」と語った。
大阪選挙区唯一の現職候補として「国会でもう一度仕事をさせてほしい」と訴え続けた民主党の梅村聡氏。しかし、党への風当たりは予想以上に強く、勢いに乗る共産の辰巳孝太郎氏に競り負けた。梅村氏は「選挙戦を通じて府内で思いを訴えることができました。結果は残念だが、次の飛躍の糧にしたい」と語った。
産経新聞によると、大阪選挙区の投票率は前回(56.35%)を下回る52.72%だった。
■ 自民党、信任を得られず 現職の糸数慶子氏が圧勝 沖縄選挙区
参院選の争点の一つでもある沖縄の米軍基地移設の問題で揺れる沖縄県。沖縄選挙区は、自民党が参院選で「最重点区」に位置づけていた。安倍晋三首相(自民党総裁)は、那覇市で行った街頭演説で「普天間の一日も早い移設を実現していきたい」と発言した。これは、日米政府が合意する名護市辺野古への移設を念頭に置いた発言だともいえる。地元の党県連は公約で「県外移設」をはっきりと明記しており、国と沖縄との意見の相違が改めて浮き彫りになった。
結果は、社会大衆党委員長の糸数慶子氏(65)=社民、共産、生活、みどり推薦=が29万4420票を獲得し、新人で自民公認の安里政晃氏(45)=公明推薦=に3万3028票差をつけて3選を果たした。アベノミクスや憲法改正などを掲げ全国的に躍進した自民党だが、沖縄では政策が浸透せず信任を得られなかった。
糸数氏は自らを、オスプレイ配備など米軍基地問題で中央と対立する沖縄の「代弁者」と主張。県民の共感を引き寄せた。当選後、政府が進める米軍普天間飛行場の県内移設やオスプレイ配備に触れ、「県民の民意はNOだ」と糸数氏は語った。
自民の「ねじれ」も突いた。党本部の公約に反して普天間の県外移設を掲げた自民新顔を、糸数氏は「県民だましの二枚舌」と批判。応援に入った石破茂幹事長や閣僚に対しても「公約が違うのに、なぜ応援できるのか」と非難した。
沖縄タイムスによると、投票率は53・43%で、補選を除いて過去最低だった前回(2010年)参院選の52・44%を0・99ポイント上回った。
関連記事