安倍首相が官房長官だったときに行われた“タクシーの規制緩和”が、再び規制強化に戻されようとしている。
タクシーの台数を減らす『タクシー事業適正化・活性化特別措置法改正案』の全容が8月16日に判明した。47NEWSによると、この法案は自民党がまとめたもので、1台当たりの売り上げが落ち込む都市部のタクシー事業者に対し、台数減らしを事実上義務付ける内容だとされる。
タクシーの規制緩和(改正道路運送法)は、2002年に行われたもの。東京ハイヤー・タクシー協会のWebページにある『タクシー参入規制緩和とその後の実態』には、下記のような緩和が行われたと書かれている。
- 認可制か → 事前届出制
- 最低保持台数の緩和/60台 → 10台に
- 営業所および車庫/所有から → リースに
- 導入車両/新車から → 中古車で可に
これらの規制緩和でタクシー会社の新規参入が増え、タクシーの台数も事業者が柔軟に増やせるようになった。長距離などの割引も増えたし、ワンコインタクシーと呼ばれる初乗り料金500円のタクシーが出てきたのもこの頃だった。
2002年は小泉純一郎政権時。安倍首相は当時、官房長官であった。このときの緩和によって、タクシー業者がどのように変わったかを、当時の経済財政政策担当大臣だった竹中平蔵・慶応大教授は、田原総一朗氏との話の中で下記のように話している。
「タクシー(の運転手)これね、俺たち(タクシーの運転手)給料安いんだよなぁ。でもね俺、前からタクシー運転手やってるんだけれども、今度リストラされた息子もね、車増えたんで運転手になったんだよ。そうすると前から自分の給料三割下がったかもしんないけどね、それで0.7になってもね、息子も0.7だからね、足すと1.4で前より増えてるんだよ」
(中略)
だから結局その一見確かに給料は下がった。で、競争で厳しくなったかもしれないけど、全体としてのパイは大きくなっているという。これ実は経済の本質なんですよ。そういうところ安倍さん、パンと見てる。
(ニコニコチャンネル・アベノミクスチャンネル『「アベノミクスはどこへ向かう?』田原総一朗氏と竹中平蔵氏の緊急対談(3月24日)」より。 2013/04/16 18:18)
しかし、竹中教授も話しているように、タクシー1台当たりの売り上げが落ち込む結果ともなっている。2009年10月1日には超党派議員たちによって、タクシー事業者への規制を再び強化し、供給過剰が顕著な地域では安易な増車ができにくくする、いわゆる『タクシー活性化法』が施行された。ワンコインタクシーが規制されたのもこの頃であった。
今回自民党がまとめた案では、特定の地域で、更にタクシーの台数を減らす“減車”が可能になる。この法案を、安倍首相がどのように受け止めるかにも今後注目が集まるだろう。
タクシーの減車が行われると、その分タクシーの運転手の数も減ることになるため、雇用者を減らさない工夫というのもタクシー業界には必要になってくる。規制緩和の後、旅行をあきらめていた高齢者に「タクシー」で送迎するツアープランや、子供の塾やお稽古を送り迎えするキッズタクシーなど、新しいビジネスもうまれてきた。
タクシー業界は規制により、参入者を増やさないでおくべきだろうか。それとも新たなビジネスをどんどん開発すべきだろうか。あなたの考えやアイディアをお寄せください。