「あそこの飛行機は儲けのために座席をこんなに狭くしやがった、許せるか?」ライバル企業が異例の批判

航空機メーカー大手2社の間で、エコノミークラスの座席をめぐって議論が過熱している。多くの人数を載せるために座席の幅を狭くした企業に対して「こんな飛行機、許せる?」と、ライバル企業が批判しているのだ。

今月にドバイ航空ショーを控えるなか、航空機メーカー大手2社の間で、長距離旅客機の座席幅をめぐる議論が過熱している。

論争の的となっているのはエコノミークラスの座席幅で、航空会社が最も注力するクラスではないものの、欧州航空機大手エアバス

エアバスは今週、業界の基準としてエコノミークラスの座席幅を少なくとも18インチ(約46センチ)とすることを求めた。一方、エアバス最大のライバルであるボーイングは、航空会社の判断に委ねるべきだとしている。

両社は従来より大型の長距離向け双発機の販売でしのぎを削っており、今月17━21日に開催されるドバイ航空ショーで記録的な受注が見込まれている。

この新たな「ミニジャンボ」ジェット機において、エコノミークラスが1列9席になるのか、もしくは10席になるのかという座席レイアウトが、経済性を考える上で重要となっている。

ボーイング777型機の次世代モデルである777Xは406座席で、エコノミークラスは1列が10席、1席の幅は17インチ(約43センチ)。一方、エアバスのライバル機A350は350座席で1列が9席。1席の幅は18インチだ。

航空機メーカー大手が業界メディアの広告で技術的な問題をめぐってやり合うことはよくあるが、エアバスはドバイ航空ショーの開催を前に直接世論に訴える手段に出た。同航空ショーではボーイング777Xの独り勝ちとみられ、100機を超える受注を獲得すると予想されている。

エアバスは最近、「あなたはこれを受け入れるか」と題された、レストランで3人の客がすし詰めに座らされているイラストを投資家らに示した。同社の販売責任者は「ボーイングは近距離のターボプロップ機よりも狭い座席を長距離飛行に導入しようとしている」と語った。

<体重増加>

食生活の変化に伴って人々の体重が増加したのに対し、航空機の座席の大きさはさほど変わっていないのが現状だ。

米保健福祉省のデータによると、ボーイング747型機が現代の長距離旅行を定義づけた1970年代初めから21世紀に入るまでに、40代の米国人男性の平均体重は1割増加。また、21世紀の米国人男性の平均的な胴回りは39.7インチ(約101センチ)との統計もある。

この場合、エコノミークラスの座席では2インチ(約5センチ)の余裕しかなく、長距離飛行では十分な広さではないとエアバスは指摘。ボーイングは乗客のウエストが今より細かった1950年代の座席のコンセプトに固執していると主張している。

エアバスはまた、座席幅を1インチ広くすると睡眠の質が53%向上する結果が、外部に委託した調査で得られたとしている。

一方、ボーイングはこうしたエアバスの主張に真っ向から対立する姿勢を示し、航空会社が料金と設備のバランスをどう取るかについての判断にメーカーが立ち入るべきではないと反論。さらに、フライト体験が座席の幅だけで評価されているわけではないことは調査結果から明らかだと主張している。

ボーイングの客室担当者は「結局は、航空会社に柔軟性を提供し、彼らが成功するために必要だと信じることを可能にさせるということだ。航空会社も自分たちのビジネスについて指図されたくはないだろう」と述べた。

<し烈な受注競争>

利用客にとって座席のわずかなスペースの問題も、サプライヤーにとっては利益に影響しかねない問題となりつつある。

背景には、向こう数十年間で少なくとも推定7000億ドルのビジネスとなる航空機の受注競争がある。この規模は米国にとっても欧州にとっても輸出を押し上げるのに十分だ。

ロイターが7月に初めて報じたように、座席のレイアウト問題は最新型ジェット機をめぐる論争の中心となっている。

エアバスもボーイングも、最新機の1座席当たりの燃料効率について、マーケットリーダーのボーイング777━300ER機と比べて20%向上していると主張する。

ただボーイングは、1列10席の777X型機と1列9席の777型オリジナル機とを比較している部分があり、現在使用されている1列10席の航空機と比べると単価コストの改善は鈍る。

一方、アナリストからは、現在運航中の777型機が1列10席というのは、より安い運賃を可能にし、多くの利用客から支持されている結果との声も聞かれる。

エアバスが求める座席幅の業界基準は、唯一のライバルであるボーイングの支持が得られない限り実現しないとみられるが、777Xの快走に一矢を報いることはできるかもしれない。

(Tim Hepher記者、翻訳:伊藤典子、編集:橋本俊樹)

[パリ 1日 ロイター]

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