第二次世界大戦時に造られ、その後長らく放置されていたロンドンの地下防空壕で、ラディッシュやからし菜、小豆苗などの野菜が栽培されている。
三層構造の栽培台、水循環システム、LED照明によって、地下の温帯環境と湿度が栽培にもっとも適した状態に保たれるシステムを考案したのは、Zero Carbon Food(ゼロ・カーボン・フード)社のリチャード・バラーフ氏とスティーブン・ドリング氏だ。
ゼロ・カーボン・フード社はクラウドファンディング・サイト「Crowdcube」で、「現在使われていないロンドンの地下スペースを活用し、LED照明を使った水耕法による葉物野菜やハーブ、小型の野菜の栽培を行ない、最小限の二酸化炭素排出量で新鮮な素材を生産します」と説明している。
何年もの準備期間を経て、およそ1万平方メートルの農園が今年3月、本格稼働を開始する。
同社プレスリリースによると、世界初の地下野菜がレストランや市場に出回るのは夏ごろになる予定だ。出荷されるのは、ブロッコリー、ニラ、赤筋ソレル(別名:ルメックス)、コリアンダー、タイバジルだ。マッシュルームやトマトといった大きめの野菜も今後栽培していく予定だという。
ドリング氏は英紙「ガーディアン」の記事で、「地上の温室を使わず地下で栽培するのは、気温が一定しているためです」と説明している。「水耕栽培というと専門技術を必要としそうですが、実際はそうでもありません」
「種がたくさんまかれた栽培台を水でいっぱいにします。まるで、クレソンを子どものように育てる感じですね。水はタンクへといったん引いていきますが、しばらくすると栽培台が、水であふれんばかりとなります。それが何度も繰り返されます。エネルギー消費量は非常に少ないのです」
同社は事業拡大に意欲的で、クラウドファンディングを通じ、30万ポンド(およそ5000万円)の資金獲得を目指している。これまでのところ、4万550ポンド(およそ700万円)が集まっている。
食の専門家にも地下栽培野菜を認めてもらおうと、同社は、国際的評価を受けているミシェル・ルー・ジュニア氏と手を組んだ。同氏は、ミシュランガイドで2つ星を獲得したロンドン市内のレストラン「ル・ガブロッシュ」で腕をふるっている。
ルー・ジュニア氏はプレスリリースの中で、次のようにコメントしている。「初めて彼らに会った時は、きっと頭がおかしいんだと思いました。防空壕に実際に足を運び、地下で栽培中の野菜を口にしたのですが、そのおいしさには心から感動しました。市場で大きく受け入れられるでしょう」
英紙「インデペンデント」の料理評論家サムエル・ムストン氏も、地下栽培の野菜に高評価を与えている。小豆苗、ミニラディッシュ、レッド・リーフ・マスタードは、「色あいも美しく、肉厚」で、「鮮烈で生命力にあふれた」味わいだという。
[Meredith Bennett-Smith(English) 日本語版:遠藤康子/ガリレオ]
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