任天堂・岩田聡社長に聞く、WiiU不振「想定したどんな状況より悪い」

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岩田社長は、スマートフォンやタブレット端末に「マリオ」や「ゼルダ」のゲームソフトを提供することに否定的で、今後のゲーム事業も、自社のハードとソフトを一体で展開する方針を示している。

ただ、主力と位置付ける「WiiU」は、前期に900万台の目標を掲げながら272万台の販売にとどまった。この結果、前期は、期初に1000億円の営業黒字を目標にしながら、464億円の営業赤字に陥った。

「娯楽産業に浮き沈みの波があるのは宿命」(岩田社長)だが、ゲーム機1台の不振で、瞬時に赤字に陥る事業構造には「問題がある」と指摘。このため(1)健康など新規事業、(2)キャラクタービジネスの積極展開、(3)新興国向けゲーム機の投入――の展開で、収益構造の多様化を図っていく方針を示した。

健康事業は今期中に詳細を公表して来期にサービス開始、2017年3月期に収益貢献を目指す。キャラクタービジネスは、他社へのライセンスだけでなく、自社のゲーム機と連動するフィギュアを今年の年末商戦に投入する。キャラクタービジネスは今期の業績予想に織り込んでいないが、フィギュアの反響などをみて「アップサイドを考えていく」(岩田社長)意向を示した。

また、新興国向けゲーム機については、専用のハードとソフトを開発中で、早ければ2015年に第一弾を投入する計画という。

インタビューの詳細は以下の通り。

――1億台を売り上げた「Wii」の爆発的なヒットの後に「WiiU」の不振で赤字に陥った。

「娯楽は、浮き沈みの波が激しいのが宿命だ。波がよい方向に振れたのがWiiだった。Wiiが1億台以上売れたのは狙ったわけではなく、われわれ自身が驚いた。逆にWiiUは我々が想定したどんな状況より悪い。なんとか立て直したい」

「だが、娯楽ビジネスの波をなくすことは無理だ。波をなくぜば大ヒットもなくなる。ただ、波が悪い方向に振れた時、すぐに営業赤字になることはよくない。その波に強くなるために、キャラクタービジネス、健康事業、新興国に取り組んで事業構造を安定化させる」

――「マリオ」や「ゼルダ」のキャラクタービジネスはどう展開するか。

「今期に出てくるものもあるし、今期に発表して来期以降に届くものもある。マリオの絵がついているお菓子やおもちゃ、学習机などは今までもあったが、どちらかといえば受動的。今では積極的に他社の扉を叩いて、任天堂のキャラクターを生かす取り組みをしている。任天堂のゲームキャラクターが活躍する場はこれから何年かで広がるし、そこからゲームを楽しんでみようかという人がでるかもしれない」

「キャラクタービジネスは他社へのライセンスだけではない。この年末商戦で、ゲームと連動するNFC(近距離無線通信)機能を埋め込んだフィギュアを販売する。マリオのフィギュアが、ゲームの世界で育成されて、カスタマイズされて、パーソナライズされる」

「ゲームソフトは30-90ドルの値段だが、フィギュアはそれより安くするので、子どもたちはもっと頻繁に買ってもらえるかもしれない。買い集めて楽しくなるように、複数のフィギュアと複数のソフトを提案する。この事業は、今期の業績予想に入れていないが、反響をみてアップサイドを考えていきたい」

――新興国への取り組みはどうするか。

「新興国はゲーム事業の延長だが、これまでのように150―300ドルのハードに、30-60ドルのソフトを売るという構造をそのまま現地化しても、新興国のポテンシャルは引き出せない。ミドルクラスのマジョリティに手が届くものになるために、新興国に向けて出すプラットフォームを準備中だ」

――WiiUや3DSの販売地域を広げる発想ではないのか。

「当然、任天堂の資産はうまく生かしたいが、今のゲーム機の廉価版にはならない。(WiiUや3DSとは)名前も違うだろう。ただ、ハードとソフトを一体展開することにはこだわりを持っている」

「新興国でも、ねらうのはマスマーケットで、ゲーム人口の拡大。年齢、性別、ゲーム経験の有無を問わずにゲーム人口拡大を進めてきたが、新興国では、ゲームの敷居をさらに下げなければいけない。その意味で、(コアゲーマーの存在する)先進国とはアプローチが当然違うものになる」

――新興国向けゲームの展開はいつごろになるか。

「来期にサービスインして再来年に収益化を目指す健康事業と同じような時間のレンジで考えているが、新興国向けゲームは国ごとに考えて、領域を広げていく。ファミコンも1983年に日本で発売したが、米国では1985年で、欧州はもっと遅かった。市場を徐々に作っていくが、第一弾は早ければ来年のイメージだ」

――中国市場の取り組みはどうするか。

「まさにミドルクラスが猛烈に増えている意味で新興市場。中国だけを特別に考えているわけではないが、中国にも受け入れてもらえるものにしたい」

――中国の上海特区でゲームが解禁され、マイクロソフト

「中国はとてもポテンシャルがある市場。だが、経済特区ができただけで、今の中国でビジネスする難しさがすべて解決したとは思っていないので、もっと勉強しなければいけない」

「われわれは新興国をマスマーケットで考えているので、(先進国のゲームをそのまま投入する)マイクロソフトとは同じアプローチにはならない」

(村井令二 ソフィー・ナイト 編集:宮崎大)

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