政府は10月14日、「過労死等防止対策推進法(過労死防止法)」を11月1日に施行すると閣議決定した。
同法は過労死・過労自殺の対策を国の責任で進めることを明記した初めての法律で、国の取るべき対策として(1)過労死の実態の調査研究、(2)国民への啓発、(3)相談体制の整備、(4)民間団体の活動に対する支援などの内容を盛り込んでおり、自治体や事業主には、国や自治体が実施する対策に協力するよう求めている。
労災問題に取り組んできた弁護士からは、この法律について「防止策の実施を国の責務としたことの意義は大きいうえ、遺族の声も聴きながら過労死防止対策を具体的に進めていく仕組みが作られることは、大変評価できる」との声があがっている。
過労死防止法はもともと「過労死防止“基本法”」として、国だけでなく地方自治体や事業主も、過労死をなくすための責務を明記すべきとされていた。しかし、自民党の作業チームによって、自治体や事業主の責務部分が努力規定と変更され、“対策推進法”となった。そのため、「事業主自身が積極的に過労死等を防止するための安全配慮の措置を取るべき義務が明記されないなど、内容に不十分な点もある」として、「法施行後3年の検討時期までに更なる法制上又は財政上の措置を講じなければならない」との指摘も出ている。
■安倍政権が進める新制度に「過労死促進法」との指摘も
一方で、弁護士らで作られる過労死弁護団全国連絡会議は9月26日、「現在、安倍政権のもとで、本法の理念とは完全に逆行する動きが進行している」とする決議を採択した。安倍政権が進める、高度な専門職に付く人などは、1日原則8時間を上限とするなどの労働時間規制を撤廃する新制度について「ますます長時間労働が広がり、過労死・過労自殺が増加することは火を見るよりも明らか」と指摘し、「過労死を広げる『過労死促進法』というべきもの」と批判している。
政府が導入を目指している新制度は、わが国で働く労働者の命と健康を脅かす極めて危険な内容であり、過労死を広げる「過労死促進法」というべきものである。
新制度のいう適用対象労働者の範囲についても、職務が明確で高い能力を有する労働者という要件はあまりにも抽象的であり、およそ対象が限定されていない。これでは使用者の一方的解釈によってあらゆる種類の労働者が対象となるおそれが高い。また、年収1000万円以上という要件に関しても(中略)、ひとたび新制度が立法化されてしまえば、なし崩し的に年収要件が引き下げられていくことは必至であり、現に日本経団連は2005年6月21日の「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」で、対象労働者の年収を400万円と想定している。
加えて、新制度は法定労働時間の規制をなくするものであるから、どんなに長時間労働を課したとしても労基法違反ではないということになるため、労働基準監督官が長時間の残業を取り締まるための法的根拠がなくなってしまう。労働基準監督官による長時間労働の取り締まりが困難という事態になれば、ますます過労死・過労自殺が増えることは必至である。
(過労死弁護団全国連絡会議第27回全国総会:残業規制を撤廃し過労死を促進する法案に反対する決議より 2014/09/26)
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