今後深刻化することが懸念される食料問題に対処する方法として「海の上で食料を作る」という斬新なアイデアを提案する建築事務所がある。
スペインのバルセロナを本拠とする「フォワード・シンキング・アーキテクチャー」だ。「スマート・フローティング・ファーム」と呼ばれる海に浮かぶ農場で、農産物を栽培し、魚の養殖をすることを提案している。
デザインした建築家たちによると、海上ファームの大きさは200m × 350mで、年間8152トン以上の野菜と、1703トン以上の魚を生産できると見積もっている。また、消費地である大都市の近くに停泊して食料を生産するので、食品の長距離輸送をしなくてもすむ。
フォワード・シンキング・アーキテクチャーを立ち上げた建築家のハビエル・ポンス氏は「スマート・フローティング・ファームは、従来型の食料生産方法に代わり、海沿いの都市に持続可能な形で食料を供給できる」とハフポスト・カナダ版に話す。
「スマート・フローティング・ファーム」外観の完成予想図(提供:フォワード・シンキング・アーキテクチャー)
完成予想図全景(提供:フォワード・シンキング・アーキテクチャー)
計画では、スマート・フローティング・ファームの一階部分は魚の養殖場になる予定だ。海水を真水にする装置や、波を防ぐための防壁などが備えられ、魚を加工・包装するエリアも設けられている。
養殖場の完成予想図(提供:フォワード・シンキング・アーキテクチャー)
二階部分は、オートメーション化された水耕栽培の温室で、葉物野菜などを栽培する。電源は、屋上のソーラーパネルから供給され、農薬や殺虫剤を使わずに育てるという。
野菜は「垂直農法」で育てられる。垂直農法とは、土を使わず、栄養分を含んだ水を満たしたプランターを垂直に積み上げる新しい農法だ。農地が少ない都市部などで使われており、倉庫や駐車場、ビルの屋上などでの農産物の生産を可能にする。アグリビジネスの中でも前途有望な分野のひとつで、シンガポールなどで既に導入されている。
水耕栽培をする階(提供:フォワード・シンキング・アーキテクチャー)
スマート・フローティング・ファームの強みのひとつは「干ばつや洪水、害虫、その他の自然災害の影響を受けず、有害な農業排水を出さない」ことだ、とこのプロジェクトの概要は説明する。
またもうひとつの強みとして「移動が可能」という点を挙げる。スマート・フローティング・ファームは水でつながっているところであればどこへでも行くことができるので、たとえばニューヨークや、シアトル、ロサンゼルス、ムンバイ、モントリオールなどの大都市間を移動して食料を生産することができる。
国連によると、地球の人口は増え続けており、2030年までに83億人、2050年には91億人に達する見通しだ。これにともなって2050年までに食料の需要は70%も増えると予想されており、今後食糧問題が難しい課題になってくることは間違いない。
現在、カナダでは食料の70%以上を国内産でまかなっているが、それでも将来食糧問題を抱える懸念材料はある。引退した一部の農家が農地を土地開発業者に売って、農地が住宅地に変わっているのだ。実際、人口が増えて住宅ブームに沸くオンタリオ州南部では、2000年から2011年までの間に19%の肥沃な農地が住宅地になったという。
人口が増える中で農地が減る傾向にあるのはカナダだけではなく、世界中で見られることだ。移動して食料を生産できる海上ファームは、建築家たちが言うように「ゲームチェンジャー」になって大きな変革をもたらすかもしれない。
この記事はハフポスト・カナダ版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:水書健司/ガリレオ]
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