「名もなく貧しく美しく」「典子は、今」などの作品で知られる映画監督で脚本家の松山善三さんが8月27日、老衰のため死去した。91歳。葬儀は近親者で営んだ。喪主は養女の明美さん。NHKなどが報じた。
社会的弱者をヒューマニズムの視点から描いた作品を数多く発表した。神戸市生まれ。岩手医学専門学校中退後の1948年、松竹入社。木下恵介監督の助監督としてシナリオづくりなどを学んだ後、54年に脚本家としてデビュー。小林正樹監督の「人間の條件(じょうけん)」シリーズや、成瀬巳喜男監督の「乱れる」、豊田四郎監督の「恍惚の人」などを手がけた。脚本が一般公募された77年の「人間の証明」(佐藤純弥監督)では松山さんの脚本が選ばれた。他の監督作品に「母」「虹の橋」などがある。
「二十四の瞳」の撮影時に親しくなった女優の高峰秀子さんと55年に結婚。61年には、高峰さんを主演に聴覚障害者の夫婦を描いた「名もなく貧しく美しく」で監督業に進出。81年には、サリドマイド薬害の女性被害者本人が主演した「典子は、今」が話題になるなど、数多くの作品を手がけた。
「典子は、今」に主演した白井のりこさんはブログで、「ほんとうに、ほんとうにお疲れさまでした」などと以下のようにコメントした。
突然、自宅へやってこられ、「あなたの映画をつくりたい」、
ほんとうに驚きました。
あれから、もう35年になります。
松山監督には
楽しい思い出をたくさん作っていただきました。(中略)
そこには、いつも高峰秀子さんがいてくださいました。
「のりすけーっ」て呼ばれ、演技指導などいろんなことを教わりました。
監督は、今、デコさん(高峰さん)と再会していらっしゃるでしょう。
映画が大好きな監督さん。
また、きっと映画つくるんでしょう?
(最新ブログ | スマイルビー白井のり子事務所 映画「典子は、今」より 2016/09/02)
「高峰秀子さんを偲ぶ会」であいさつする夫で映画監督の松山善三さん(左)と養女の松山明美さん 2012年03月27日(時事通信社)
87年に紫綬褒章、95年に勲四等旭日小綬章を受章した。
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